ダム便覧には追加・削除されるダムがあり、そのうち追加されるダムは毎年10基前後。新しいダムが建設される事が減った昨今、位置未確認ダムも年々減っています。
「ダムを探す」今までは気になった溜池を見つけては何となく諸元を調べるというスタンスでした。しかしダム探しの楽しみもいつかは無くなってしまうかもしれない。ダムを探す楽しみは今しかないのでは?と思い、まずは県・自治体の水防計画、農村整備、溜池台帳等の資料を基に調査を開始しました。
今回ダム探しの一部を、宮城・山形の未記載ダムとして紹介したいと思います。
宮城県仙南地域
@三沢溜池(みさわためいけ) |
所在地 | 白石市大鷹沢三沢 |
型式 | フィルダム |
堤高 | 13.6m |
竣工 | S33年築造、H10年(改修) |
調査当初、宮城県溜池台帳(昭和期)に記載されていた堤高15m以上の溜池のひとつ。昭和33年築造、堤高17.0mとされていました。
現地調査:今回調査した白石市の溜池の中ではいちばんダムらしい見た目で堤高15mありそうにも思えましたが、調査の結果堤高13.6mとのことで残念ながらダムにはならなさそうです。
三沢溜池
上流より
A物見石下ため池 |
所在地 | 白石市越河字物見石 |
型式 | フィルダム |
竣工 | 明治築造 S1(改修) |
現地調査:台帳には堤高16.0mとされていましたが、現地に行ってみると堤高10m前後に思え、15mには届きそうに感じませんでした。こちらも調査の結果10.5mとのことで残念ながらダムにはならなさそうです。
物見石溜池
B菖蒲沢溜池(しょうぶさわためいけ) |
所在地 | 白石市大鷹沢三沢字菖蒲沢 北緯37度58分1.23秒 東経140度38分35.16秒 |
河川名 | 谷津川 |
型式 | フィルダム |
堤高 | 15.3m |
堤頂長 | 43.5m |
堤体積 | 不明 |
総貯水量 | 39,600m3 |
有効貯水量 | 32,000m3 |
流域面積 | 0.6km2 |
竣工 | 大正(築造) |
管理者 | 白石市 |
調査当初、溜池台帳には記載されていませんでしたが、先に紹介した三沢溜池の所在地が菖蒲沢となっていました。
現地調査:堤高15mはありそうに思えます。林道のために改修されたのか洪水吐兼堤頂道路のコンクリートが真新しいです。こちらは調査の結果堤高15.3mで、ダムになりそうです。
菖蒲沢溜池
堤体上流面と洪水吐
結果として、調査当初宮城県の溜池台帳(昭和期)に記載されていた三沢溜池、物見石溜池は15m未満となり、15m以上となるのは調査の過程で浮上した菖蒲沢溜池の1基だけでした。
山形県置賜地域
@唐沢溜池(からさわためいけ) |
所在地 | 南陽市川樋 北緯38度5分4.46秒 東経140度10分40.47秒 |
河川名 | 最上川水系前川の上流部(河川区間指定なし) |
型式 | 傾斜遮水ゾーン型フィルダム |
堤高 | 16.5m |
堤頂長 | 109.2m |
堤体積 | 不明 |
総貯水量 | 62,000m3 |
流域面積 | 0.81km2 |
竣工 | S46年 |
管理者 | 川樋土地改良区 |
現地調査:こちらは南陽市川樋地区、国道13号線からほど近く、天端から国道が見えます。昨年度ため池整備事業により金物類の交換等の一部改修されましたが、堤体そのものは完成当時のままです。
唐沢溜池
他に南陽市宮内地区に羽山堂溜池があり。調査当初は改修計画の図面や諸元表に堤高17.0mと記述されていて期待しましたが、調査の結果堤高13.0mとのことで残念ながらダムにはならないようです。
この結果から置賜地域からは唐沢溜池1基となりました。
山形県村山地域
@滝の沢溜池(たきのさわためいけ) |
所在地 | 西村山郡大江町大字本郷乙字沢田 北緯38度22分44.64秒 東経140度9分57.60秒付近 |
河川名 | 最上川水系月布川(北堰幹線用水路) |
型式 | 中央コア型フィルダム |
堤高 | 15m〜17.5m |
こちらの滝の沢溜池についても細かい諸元まで調べたのですが、山形県農村整備課と大江町、所有・管理者である大江町土地改良区それぞれ異なる数値となってしまいました。しかしいずれも堤高は15m以上、最近の県の溜池整備事業による調査でも15m以上との事でした。
現地調査:右岸堤体脇に石碑があり、地元の方にもお聞きしましたのでここで間違いないようです。堤体直下には、今から約200年前に開削された月布川の北側を流れる北堰幹線用水路が流れています。ただこちらの滝の沢溜池は現在、県営地震ため池整備事業(H27からH32予定)のため今後諸元が変わる可能性もあります。
滝の沢溜池
滝の沢溜池貯水池
A大和沼溜池(やまとぬまためいけ) |
所在地 | 寒河江市大字中郷 北緯38度21分59.96秒 東経140度13分32.27秒付近 |
河川名 | 最上川水系最上川(河道外) |
型式 | フィルダム |
堤高 | 15.1m |
堤頂長 | 68.0m |
堤体積 | 44,000m3 |
総貯水量 | 42,000m3 |
有効貯水量 | 42,000m3 |
流域面積 | 0.36km2 |
湛水面積 | 0.73km2 |
着工・竣工年 | H2年・H8年 |
管理者 | 寒河江川土地改良区(旧・寒河江土地改良区) |
現地調査:記念碑には「中郷の水田は最上川より高い段丘上にあるため、昔の技術では目前の豊かな流れを利用することができず、大和沼はまさに恵みの水を貯える重要な水瓶でした。明治二十一年と昭和十八年に大改修が行われて地域の人々の手で大切に守り継がれてきましたが水源としての主役の座を揚水機に譲ってからは災害を防いだり環境を守る役目がより重要になってきました。先人の苦労と農業への熱意を後々まで伝えたいという願いを込めてこの工事が実施されたのです。」と記されている。
また、隣の筋には堤高15m未満ですが稲沢沼溜池があり、こちらも古くより溜池灌漑として利用されてきました。この地域は目の前に大河(最上川)が流れているのに利水に不便を強いられてきた歴史があるようです。
大和沼溜池
B引竜第一溜池(ひきりゅうだいいちためいけ) |
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所在地 | 西村山郡河北町大字岩木字引竜 北緯38度28分18.15秒 東経140度16分23.29秒付近 |
河川名 | 最上川水系法師川 |
型式 | フィルダム |
堤高 | 15.7m(16.3m) |
堤頂長 | 88.0m |
堤体積 | 44,300m3 |
総貯水量 | 93,400m3 |
有効貯水量 | 93,400m3 |
流域面積 | 1.25km2 |
湛水面積 | 1.64km2 |
着工・竣工年 | S58年・S59年 |
管理者 | 寒河江川土地改良区(旧・引竜土地改良区) |
ダム便覧には引竜第二ダムが登録されています。かねてより第二があるのに第一はどうなっているのだろうと思っていましたが、今回の調査をきっかけに調べてみたところ、15m以上とのことでした。
現地調査:4月中旬、雪解けを待って現地に。引竜第二溜池の上流、直線距離にして約2km程の場所にあります。また直上流には引竜小溜池が。
引竜第一溜池他に村山市の院内溜池が改修計画当初は堤高15m以上でしたが、過去に他のダム好きさん達が調査された結果堤高が14mだったためダム便覧から削除されています。桐の木沢溜池も改修計画当初は18mとされていましたが、改修の結果15m未満となってしまいました。
結果、村山地域からは、滝の沢溜池、大和沼溜池、引竜第一溜池の3基となりました。
最後に
今回の溜池調査では、ダム便覧に記載されている新庄市の堤沢溜池が近年の改修により15m未満となった事がわかりました。こちらはいずれダム便覧から削除されてしまう事でしょう。堤高15m以上を探したにも関わらず結果として15m未満と判明することになってしまいました。
調査では、正確な諸元や15m以上であることの裏付けを取る為、県の農村整備課・農村計画課を始め、所在自治体、管理されています各土地改良区様に調査取材・確認のご協力をいただきました。誠にありがとうございました。
溜池の中には立入禁止であったり危険な場所も多く、周辺にクマの目撃情報が出ていたり、近隣の住民の方におかれましては過去に外来魚の釣り等によるフェンス破損被害等がでている溜池があります。ダムと認知されていなく地元以外の人がいると不審に思われたりと、訪問の際は十分注意の程お願いします。
今回なるべく正確な調査を行ったつもりではいますが、調査先でそれぞれデータが異なっていたものもありましたので、日本ダム協会さんに確認をしていただき、ダム便覧に追加されるか見守りたいと思います。