《このごろ》
釜房ダム〜クレストゲート試験放流〜

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平成30年6月23日、釜房ダムのクレストゲート試験放流が行われました。これまで釜房ダムでは、クレストゲートの点検は水位の低い時期に放流を伴わない形で行ってきたそうです。そして、平成29年初めて放流を行う点検を実施しました。昨年の試験放流は、一般には告知されず、いわば内々で行ったということです。今年は、ダムの役割を多くの方に知ってもらうために、試験放流が一般に公開されることになりました。



放流の案内

見学場所となった下流の広場は、通常は開放されておりません。この日は、このエリアが一般開放されました。放流開始までにはまだ1時間ほど待つ必要がありますが、午前9時ちょうど発(始発)のシャトルバスはほぼ満員の状態で管理所前を発車しました。
こうして、管理所の臨時バス乗り場に集合した見学者は、シャトルバス(無料)で次々と目的地に向かうことになります。


シャトルバスの車内。

今回の放流は、下流の水位の急激な変化を避けるため、常時10トンの放流となります。すでにバルブからの放流が行われており、その放流量は毎秒10トンということでした。クレストゲートは、左岸側から1号〜4号ゲートです。午前10時、中央左岸寄り2号から、3号→1号→4号の順に最大開度3cmまで開くことになっています。


放流開始

3号ゲートからの放流。

バルブとゲートとの総放流量を毎秒10トン以内に収めるため、クレストゲートからの最大放流時にはバルブからの放流量がゼロとなります。


1号ゲートからの放流。

クレストゲート全開時の状況。


クレストゲートの開度は、最大3cm。

一方、ゲートを閉める試験は、外側4号→1号→2号→3号の順となります。つまり、2号と3号では、開ける順番と閉める順番が逆になります。平常状態のクレストゲートから4門最大10トンの放流を行い30分かけて全閉状態に戻す試験を、今日は4回行います。

釜房ダム
バルブからの放流を開始。
釜房ダム
クレストゲートからの放流を停止する操作中。

バルブからの放流量を増やし、徐々にゲートからの放流量が下げられます。

釜房ダム
ゲートの開度は、2cm。

事前の報道資料で、午前10時から30分間4回試験放流を行うという内容でしたので、30分ごとに1門ずつ試験放流を行うものと勝手に予測していました。それゆえ、当日知った放流パターンは本当に非常に「うれしい誤算」となりました。21世紀になって初めての、また恐らくは平成最後の「うれしい誤算」です。

釜房ダム
クレストゲート全閉中の釜房ダム。

釜房ダムは昭和15年に調査が始まりましたが、太平洋戦争が激化するなか計画が中止(昭和19年)となりました。その後、昭和39年に計画が再開され昭和45年にダムが完成しました。大阪で万国博覧会(EXPO'70)が開催された高度経済成長の絶頂期です。このダムを建設するために、181世帯1,103人が移転を余儀なくされました。仮に、この方々から土地を譲っていただけなかったとしたら、現在の仙台は全く別の姿にとどまっていたことでしょう。


釜房ダム"
防災センターふれあい学習資料館の展示物より。

あらためて言うことではありませんが、多くのダムは毎日毎時、何らかの形で放流を行っています。その放流をダイナミックな別ルートで行うことにより、一般の方にダムに関心を持ってもらえるのは素晴らしいことでしょう。宮城県内の直轄ダムでは鳴子ダムが先駆者であり、その効果はすでに実証済みであると思います。今後、釜房ダムにおいても継続的に試験放流を公開し、土地を提供された方々への感謝へ思いを込める機会を設けてもらえればとても良いのではないかと思いました。

釜房ダム
3号ゲートからの放流。

[関連ダム] 釜房ダム
(2018.7.9、ダムマイスター 01-024 安部塁)
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