平成30年12月の下旬、冷たい雨がパラパラと降る中、三重県立 熊野古道センターに到着しました。
11月に三重県のダム管理所でこのチラシを見つけ、どうしても行きたいとわくわくしていたのです。
平成30年12月22日から平成31年2月17日まで開催される「知られざる熊野のダム展」。
展覧会初日には「土木遺産は語る 〜小水力発電所の今〜」という講演会もあるという事で、初日に駆けつけると、現場にはwith Dam Nightやダム友と語る会、森と湖に親しむ旬間のダムイベントなどでいつも顔を合わせるダム友が何人もいて、みんなこの展覧会をとても楽しみにしていたのだなという事を確認できました。
熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」は平成16年に世界遺産リストに登録されました。
三重県・奈良県・和歌山県に広がっている世界遺産です。紀伊山地の霊場とは「熊野三山」「吉野・大峯」「高野山」です。熊野古道は、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)に参るための道で平安時代から維持されてきた非常に歴史のある参詣道です。
この熊野古道センターは世界各地から訪れる観光客の方がゆっくりと過ごせるようにというコンセプトで地元の尾鷲ヒノキで作られた美しい大空間で、くつろぎ、熊野古道について知識を深められるように交流ロビーや展示棟が設けられています。
今回の企画展とかかわりの深い、熊野、尾鷲の気候に付いても展示があるので、まずは常設展で熊野古道について知ると、企画展がさらに面白く感じられるのではないかと思います。
企画展の展示室に入るとまずお出迎えしてくれるのは、紀伊半島を代表する、国内のアーチダムで最大の貯水池を持つ池原ダムに隣接する電源開発 池原発電所の1/20水車模型です。とても大きいので細部までじっくり見ることができます。
日本ダム協会のフォトコンテストで入賞した素敵な写真も展示されています。どちらも電源開発様の坂本ダムの写真です。
下のケースにはクチスボダムや坂本ダムの図面も展示されていて、貴重な資料に足は止まるばかり。なかなか進めません。
コーナーの案内パネルにも建設中のダム写真が豊富に使われていて、このパネル自体に見惚れてしまうほどでした。坂本ダムの工事中の出水写真、七色ダムのゲートピアが立ち並んだばかりの写真など貴重な記録写真がふんだんに使われています。電源開発様に絵ハガキにして販売してほしいくらいです。
そして展示室の端にこれらの貴重な写真をスライドショーで見られるようにしてくださっているモニターが設置してあるのですが、ここに腰掛けてしまうともう見入ってしまう貴重な写真の数々に、気がつくと30分以上経過していたりしますので、展示を全部見終わってからゆっくり見るのがよいかもしれません。
池原ダムの洪水吐工事や堤体の立ち上がっていく様は感動的です。
電源開発様の巨大ダムの数々のパネルをたっぷり見た後に、ひょっこり現れるとても瀟洒な作りの可愛い水車がありました。何とこれは自家用発電機だそうです。ししおどし発電水車と名前が付いています。イノシシなどの害獣対策の電気柵に電気を送るために各家々で自作の水車で発電機を回していたのだそうです。パネルにはいろいろな自家製の水車と発電機の写真がありました。豊富な水があるこの地だから発達した技術であるのかもしれません。
この企画展では現役で頑張る水力発電所とダムのほかに、廃止になった発電所の詳細な調査報告がありました。調査に当たられたのは本日の講演会でお話をくださる、熊野古道センターのコーディネーター橋本様です。戦前から発電していた小水力発電所の位置を割り出し、山の中を探し回って遺構を発見された貴重な記録と写真がいくつも展示されているのです。
建物の基礎しか残っていない発電所もあれば美しい石積の堰堤が現存しているところもあり、暖かくなったらぜひとも安全に十分気を配って現地にその姿を愛でに行きたいと思った産業遺構の数々でした。
講演会では廃止された小水力発電所について詳しいお話を聞く事が出来ました。写真はコーディネーターの橋本様です。過酷な調査、お疲れ様でした。
隅々までじっくり見て回ったら半日かかるかもというくらい中身の濃い企画展でした。
中々、他では見聞きできない貴重な資料が盛りだくさんの素晴らしい展覧会です。高速道路も延伸してアクセスが良くなりましたので、たくさんの方に来てほしいです。ぜひこの展覧会で熊野のダム、廃止された発電所の歴史、そして今も変わらず電源地帯であることを感じてほしいと思います。