《このごろ》
究極のダムを作った男

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ダム便覧の「このごろ」にこんな記事が掲載されていた。

《このごろ》マルティプルアーチでバットレス - ダム便覧 

 世界のダムの写真を探していたら、珍しいダムの写真を見つけた。世界は広いもので、何と、マルティプルアーチでバットレスという構造。その名は、マウンテンデルダム(Mountain Dell Dam)。

リンク先の写真を是非ご覧頂きたいのだが、小径のアーチをバットレスで支える構造。上流からみても下流からみてもかっこいい。ああ、実物見たいダムがまた一つ…。

で、このページにプレートの写真があるのだが、「DESIGNED BY JOHN S. EASTWOOD」と書いてある。設計者の名前なんか書いてあるのか。へー、誰だろうと検索してみたらWikipediaに記事が有った。

John S. Eastwood - Wikipedia, the free encyclopedia 

John S. Eastwood (1857, Minnesota - 1924, California) was an American engineer who built the world's first reinforced concrete multiple arch dam on bedrock foundation at Hume Lake, California, in 1908.

なんと、世界初の鉄筋コンクリート製マルチプルアーチダムを設計した人らしい(Hume Lake dam)。しかも1908年って戦前。まだ、近代的なダムが作られ始めて間もない時期、設計方法とかもきちんと確立されたとはいい難い時期みたい。

この名前で検索するとこんな本が出てくる。

Building the Ultimate Dam: John S. Eastwood And the Control of Water in the West 

作者: Donald C. Jackson
出版社/メーカー: Univ of Oklahoma Pr
発売日: 2005/09/30
メディア: ペーパーバック

Building the Ultimate Dam-究極のダムかー。ああ、どんな内容なんだろう。この本、日本で出版されないかな。

で、前述のWikipediaの記事を読んでいくと最後にこんな記述がある

He was not an armchair engineer, and he spent much of his life in the field working on practical problems of water control.

生涯、現場に身を投じたエンジニア。しびれるなー。

ちなみに、日本に2基あるマルチプルアーチダムの一つ、豊稔池ダムは1926年、マウンテンデルダム竣工の翌年に着工している。

豊稔池ダム - Wikipedia 

多連式アーチダムとしては、宮城県仙台市の大倉ダム(二連式)を含め、全国に二つしかなく、当時米国で最新技術あったマルチプルアーチが適用されるなど土木史、ダム技術史を語る上においても貴重な建造物である。

豊稔池ダムの影にマウンテンデルダムが有って、John S. Eastwood が居るということでしょうか。

[関連ダム] Mountain Dell
(2008.11.6、takane)
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