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水素社会と水力

◇水素社会

 現代社会は、エネルギーを大量に使用することで、生活の質的高度化を図ってきた。将来に渡ってエネルギーが安定的に供給されなければ生活の質を維持できないが、そのエネルギー資源の大半は化石エネルギー(石油、石炭、天然ガスなど)に依存している。化石エネルギーは、将来の枯渇が心配されており、また、地球温暖化をはじめとする地球環境問題の原因ともなっている。地球環境問題は、このようなエネルギー供給構造に変革を迫っている。

 そこで、新しいエネルギーとして、水素が注目されている。水素は燃焼させても水を生成するのみであるため、環境に優しいクリーンエネルギーであり、水を原料として、水力、太陽光などのクリーンで再生可能な自然エネルギーによって世界各地で製造することができる。

 化石エネルギーに代わって、水素エネルギーを広く利用する社会、それが水素社会である。

◇水力の活用

 水素を生み出すエネルギー源としては、太陽光、風力などもあるが、我が国の自然条件、国産エネルギー源の確保の重要性などを考えると水力の利用が有望ではないか。

 水力を利用した水素エネルギーシステムは、次のようなものである。
 水力発電によって水力を電気エネルギーに転換し、その電気エネルギーで水を電気分解して水素を取り出し、目的地まで輸送・貯蔵する。その水素を、燃料電池で電気エネルギーに転換して利用したり、また水素を燃焼させて熱エネルギーとして利用する。
 この過程で、地球環境や健康に有害な物質を放出することはなく、水からつくられ結局水に戻るということになる。

 海外から水素を輸入することになれば、国際情勢に左右されたり、海外市況の影響を受けたりなど、不安定なリスクを負うことになる。国内の水力は、純国産のクリーンなエネルギーで、利点が大きい。

 今ある水力発電所に水素製造ステーションを付加したり、あるいは、新たに水素製造に特化した小規模水力の開発をすることもあるだろう。

◇既に実験が

 ホンダは、2004年4月、ホンダ技術研究所、鹿児島大学、屋久島電工と協同で「屋久島ゼロエミッションプロジェクト」を開始したという(2004年6月4日、日本経済新聞第二部)。
 屋久島では、全家庭の電気を島内の水力発電でまかなっている。水力発電による電気を、島内に設けた水素ステーションに送り、そこで電気分解により水素を製造する。この水素で、新開発の燃料電池を搭載した燃料電池車の走行試験を行う。

 水素社会の実現には、まだ多くの技術開発や施設の整備が必要だが、着実に進みつつあるようだ。
(2004年6月作成)
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