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早明浦は泣いていた
〜平成17年度「森と湖に親しむ旬間」全国行事に参加して〜

森湖で早明浦に行って来ました

 毎年暑い時期に全国のダムで「森と湖に親しむ旬間」にあわせて様々なイベントが開催される。
 その中で、「全国行事」というものがあって、毎年持ち回りで全国のどこかのダムで実施されている。内容は、記念式典とシンポジウム、そして各種のイベントといったところだ。今年(平成17年)は、7月30日(土)と31日(日)、四国の水がめ・早明浦ダム(吉野川水系)で、「森と湖に親しむつどい2005・早明浦湖フェスティバル」として開催された。


早明浦ダム
このとき少し雨が降った
 (財)日本ダム協会は全国行事実行委員会のメンバー。それで毎年記念式典に出席することになっていて、ここ数年は、私が出席している。これは蛇足だが、「森と湖に親しむ旬間」は長いので、関係者の間では、「森湖(もりみず)」と呼ばれている。「森湖(もりみず)で早明浦に行って来た」ということになる。

泣くが如くに

 今年の早明浦ダムは渇水だ。行ってみると、ダム湖の水位が下がり、赤茶けた地面が露出している。「ダム湖百選」にも選ばれた満々と水をたたえたダム湖の姿を思うと、眼前の姿は何とも痛ましい。西日本一の貯水容量を誇るダムは、渇水の中で、泣いているが如くであった。自然の前には、人間の力は限界があるということか。本来の能力を発揮できないダムの姿には、たくましさがあればあるほど痛々しさが漂う。
ダム天端からダム湖と管理所を望む

貯水率37%
水位がだいぶ下がり、地肌があらわ
「四国のいのち」は本当だ

 ダムの脇に、「四国のいのち」と書いた碑がある。碑だけを見ると大げさな表現に見えるが、渇水のダム湖を見ると、なぜか実感を持ってその言葉が迫ってくるように思えるから、不思議だ。
 早明浦ダムは吉野川の上流、高知県にあるが、その水は四国4県で使われている。特に、香川県は、香川用水が下流の池田ダムから取水して、大事な水源になっている。「香川のいのち」は決して大げさではないだろう。これは珍しいことだが、高知県にあるダムだが、記念式典には高知県知事の他に香川県知事も出席されていた。


「四国のいのち」の碑
 ダムの利水に関する役割を実感したければ、渇水の早明浦ダムに行ってみることだ。単に話を聞いても分からない。テレビを見ても分からない。それでは、実物をこの目で見て、肌で感じることが出来ないのだから。

名物「旧大川村役場」


水面上に姿を現した旧大川村役場

 テレビといえば、渇水になると必ず、旧大川村役場の水没した建物がダム湖の水面上に現れた姿が映し出される。2階建ての建物だが、訪れたときは2階部分が土にまみれた外観で水面上に現れていた。ダムからはだいぶ上流だが、やはり有名なようで、朝早いにもかかわらず見物人もちらほら。どうも遠方からも来ているようだ。

 特に展望する場所が設けられているわけではないので、道路から適宜見ることになる。せっかくだから、展望広場でも整備すれば、客も増え、地域振興にもなるのではと思ったが、異論もあるのかもしれない。
風景画がすばらしかった

 30日の午前、ダム下流の右岸広場で記念式典があった。内容は例年通りで、これまでの何年かの報告が「ダム便覧」に載っているので、必要ならば見てください。
 ただ、今年特筆されるべきは、「森と湖のある風景画コンクール」の金賞の作品(4点ある)が大変すばらしかったと言うことだ。高校生以下を対象にした風景画コンクールで、記念式典で表彰式が行われ、作品が展示される。審査委員長の先生も、すばらしいと絶賛していた。これら作品は、後日、「ダム便覧」のテーマページに載せる予定。写真だと実物のみずみずしさや質感が失われてしまうのが残念だが、それでもすばらしさは伝わるだろう。


風景画コンクールの表彰をする橋本高知県知事
 それからもう一つ、今年はクールビズの影響か、記念式典はノーネクタイ、ノー上着だった。橋本高知県知事も、真鍋香川県知事も、青山水資源機構理事長も、出席者はほとんどがノーネクタイ、ノー上着。この暑さでネクタイ上着だったら、それはまるで我慢比べになってしまう。これが来年以降も続くことを祈るのみだ。

水源地の森を守れ


シンポジウムの様子

 30日午後には、シンポジウムがあった。聞いていて、これもまたここ数年では一番おもしろかったのではないか。「山を守る、地域を行かす森と水」というテーマで、コーディネーターと5人のパネリストによる討論。内容は、水源地の森を守るにはどうしたらいいかといったことが中心だったが、何人かのパネリストが実践を元にした議論を展開、説得力もあり、主張も明確で、コーディネーターの出る幕がなくなるほど、自立的に進行していた。その一部は、後日、NHK教育テレビで放映される。
観客は・・・

 30日も31日も、各種イベントが数か所の会場で開催された。メイン会場は、記念式典が行われたダム下流右岸広場。
 森湖と言えばいつも気になるのは観客数。今回は残念ながら多かったとはいえないだろう。会場が広いと言うこともあって、にぎわい不足の感は否めなかった。準備や当日の関係者の努力は大変なものだし、運営は良好であった。しかし客は期待したほどに来なかったというのが正直な感想だ。おそらく、大都市から遠いと言うことが大きく影響しているのだろう。場所によって条件は異なるから仕方がないといえば仕方がないが、それを打破する手だてはないものか・・・。


メイン会場入り口
早明浦に雨を!

 両日とも、不安定な天候で、たまに雨がぱらつくことがあった。しかし、泣いていた早明浦ダムの涙程度というべきか、大地を潤すことにはならず、ダムへ流入するには全くの力不足、依然として本格的な降雨が待たれる。被害がない程度の台風が効果的だとの声もあるが。ともかく早期の雨を祈念します。
 そして、暑い中、準備や運営に当たった関係者の皆さん、お疲れ様。
 そして何よりも、イベントなどに来ていただいたお客様に大きな感謝。

[関連ダム]  早明浦ダム(元)
(2005年8月作成)
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