長良川河口堰問題
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長良川河口に建設された長良川河口堰は「ダム」ではない。だがこの人工大堰の建設・運用問題が投じた政治的かつ社会的波紋は重大である。長良川河口堰は、@塩水の遡上を防止することにより大規模な浚渫を可能にし、A同時に長良川の洪水を安全に流下させるとともに、B愛知県など周辺県等に水道用水等を供給する目的で建設された。環境保護や公共事業に対する透明性を求める声が高まる中で、河口堰の必要性の是非をめぐって全国的な関心が寄せられた。世界の環境団体も、日本の環境問題の象徴として関心を示した。
建設省(現国土交通省)や水資源開発公団(現水資源機構)では、一大プロジェクトに対する正確な情報を提供するとともに、河口堰に関心の高い市民や団体への説明会や話し合いを持ち、またシンポジウムへの参加を呼びかけた。この間のマスコミ報道は、河口堰運用に批判的な内容が目立った。堰の運用開始前には、河口堰の賛成派と反対派の双方が公開の場で議論を交わす円卓会議が8回も開催された。防災、塩害、環境、水需要の4テーマに絞って議論が交わされた。このような経過を受けて、平成7年(1995)7月本格運用が開始された。開始の決断を下したのは、この大事業に反対して来た社会党(当時)所属の建設大臣だった。
長良川河口堰問題の教訓は各方面に及んだ。政府は、ダムを個々の事業ごとにその目的、内容等を審議する「ダム等事業審議委員会」を設置し、流域の意見を的確に聴取し反映させる新しい評価システムを導入することになった。この制度により14のダム等の事業で審議委員会が設置され意見が交わされたが、事業推進に否定的な見解が少なくなかった。ダム事業者における一連の透明性確保の動きは、その後法定化されることになる公共事業の事後評価を先取りにしたものであった。道路事業、下水道事業でも事業評価システムが導入される。また同河口堰問題は河川法改正の起爆剤になった。
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