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水環境への影響とその解決策C:富栄養化問題

 ダム貯水池内には一定期間大量の水がストックされる。このためダム湖上流域から流入する窒素、リン等の栄養塩類(生物の生命維持に必須な塩類の総称)の濃度やダム湖の回転率、貯水池周辺の気象条件等によっては、藻類の異常繁殖による淡水赤潮(浮遊性の藻類がダム湖で増殖して水面に集中し赤色や黄褐色に変色する現象)、アオコ(夏季の富栄養ダム湖でらん藻類が異常増殖した際に見られる現象)の発生等の富栄養化現象が確認される場合が少なくない。この異常現象が発生した場合、ダムからの放流によって下流河川の水質が悪化し水道水のかび臭い異臭といった健康に直結する問題が生じる。また浄水場のろ過池では目詰まりするなどの被害が発生する。

 ダム貯水池が富栄養化問題を抱えた例として、仙台市の水道水源である釜房ダム(国土交通省、45年竣工)の場合をあげることが出来る。45年から58年まで13年間のうち8ヵ年もの高い頻度で異臭水(カビ臭の水)が発生した。仙台市水道局はカビ臭対策として粉末活性炭処理を実施したが、処理期間は平均約130日、処理費用は年間約6000万円に上って財政上大きな負担となった。富栄養化現象に対しては、貯水池内の対策として、曝気(ばっき)循環装置(ダム貯水池内に空気を噴出させて循環流を生じさせる装置)、分画フェンス(河川から流入する栄養塩がダム貯水池に移入拡散するのを防ぐフェンス)を設置する他、流入水の水処理を行う前貯水池の施設を組み合わせて対策を実施している。

 福島県の阿武隈川支川に建設された三春ダム(国土交通省、平成9年竣工)は富栄養化現象対策が幅広く行われていて、貯水池内で取りうる手法の「お手本」ともいえるダムである。貯水池への栄養塩流入を削減するための流入水バイパス、前貯水池(4ヶ所)、藻類発生抑制を目指して浅層曝気(5ヶ所)、底層での貧(無)酸素水塊の発達を防ぐための底層曝気(2ヶ所)が設置されている。富栄養化問題への対応には、ダム設置者と貯水池上下流の自治体が協力して流域全体を視野に入れた対応が欠かせない。


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