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空芯菜を利用した水質浄化と地域活性化

これは、独立行政法人水資源機構の広報誌「水とともに」2009年12月号に掲載された「空芯菜を利用した水質浄化と地域活性化〜地域と連携した貯水池の水質浄化実験〜」(阿木川ダム管理所)の転載です。
 
1. 空芯菜を利用した水質浄化実験

 岐阜県恵那市にある阿木川ダムでは、平成9年以降、ダム貯水池においてアオコ※の発生が頻発するようになりました。
 アオコは主に気温が上がる夏場に発生し、発生原因となる栄養塩(窒素、リン)は植物の栄養分となります。
 そこで着目したのが空芯菜(くうしんさい)です。
 暑さに強く成長量が大きい空芯菜を栽培して、水中の栄養塩を吸収し減少させることを目的として、平成16 年から空芯菜を利用したダム湖の水質浄化実験をスタートさせました。

 空芯菜の栽培は、ダム湖内に浮かべたフロート(いかだ)で行っており、最初は70 株程度の栽培からスタートし、現在は1,000 株程度を栽培しています。


空芯菜栽培状況(左上は空芯菜の花)

空芯菜フロート全景
※ 植物プランクトンが大量発生し、水面が緑色などになる状態。
  景観の悪化、悪臭の発生などにより水道水に影響が出る場合がある。

空芯菜とは?
 空芯菜とは、中国原産のヒルガオ科サツマイモ属のつる性植物で、茎の中が空洞になっているのが名前の由来とされています。
「エンサイ」や「アサガオナ」とも呼ばれており、ベトナムなどの東南アジアでは広く野菜として流通しています。
 その味は、癖がなく様々な料理の食材にも活用でき、特に茎の部分はシャキシャキとした歯ごたえが特徴です。
 栄養分としては、カルシウム、カリウム、鉄分、βーカロチンを豊富に含んでおり、例えば、ほうれん草との比較では、カルシウムは約4倍、ビタミンAは約5倍、ビタミンCは約2倍となり、栄養面でも商品価値が高い植物であるといえます。


空芯菜炒め物(豚肉とキノコ)
 
2. 地元高校生が中心となって

 水質浄化実験は、地域住民の方々と阿木川ダム管理所が連携して実施しています。
 その活動の中心的な役割を担うのが岐阜県立恵那農業高校の生徒の皆さんです。
 空芯菜の水耕栽培を通じて、栄養塩の吸収を増加させるための効率的な育成方法の検討、調理レシピ集の作成、イベントでのPR、空芯菜を活用した商品開発などにも取り組んでいます。
 また、本実験の実施にあたっては、恵那市をはじめ、地域住民の方々にもご協力をいただき、空芯菜の植え付けや収穫作業への参加など、実験活動を支援していただいています。


空芯菜植え付け状況
 
3. 地域の活性化に向けて

 現在では、栽培した空芯菜を地域で流通させ、地域特産品として展開することにより、地域の活性化につなげようとする取り組みが行われています。
このため、収穫した空芯菜は、地域住民の方々による販売、知名度アップのためにイベントでのPR に使用されています。


えな環境フェア 空芯菜茶試飲状況
 また、更なるPRのために、平成20 年度からは、恵那農業高校が開発した食用に不向きな部分(茎の一部や根)を乾燥させた「空芯菜茶」の試飲会や、地域住民の方々によるマスコミ関係者を対象とした空芯菜料理の試食会なども開催されています。
 このようなPRの効果もあり、新聞に掲載されたほか、排水路等の栄養塩対策として空芯菜を利用してみたいといった他地域からの問い合わせもありました。

5. 水質保全意識の向上を目指して

 本実験の水質浄化効果は、植え付け前、栽培中、撤収時に空芯菜が吸収した富栄養価成分を分析しています。
 実験スペースにおいては一定の効果を出していますが、貯水池全体となると解決すべき課題が多くあります。
 しかし、この取り組みは、地域の活性化とともに、ダム流域住民のダム湖水質に関する意識の向上が期待できるものです。
 阿木川ダム管理所は、今後も空芯菜の水耕栽培の支援に努めてまいります。

[関連ダム]  阿木川ダム
(2010年1月作成)
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