[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]


■テネシ−渓谷開発公社(TVA)のダム建設

 松浦茂樹著『戦前の国土整備政策』(日本経済評論社・平成12年)なかの「河川総合開発と国土総合開発法の成立 TVA思想の普及」の項目で、日本の河川総合開発の手法はアメリカのTVAの考え方を、バックボ−ンとしていると論じており、さらに「米国雑誌の『タイム』の報ずるところに拠るとして、原子爆弾の製造工場がテネシ−州オ−クリッヂにあり、その製造にTVAの発電が使用された」と述べていることには、驚嘆した。
 秦正流著『さばくを緑に/TVA物語』(あかね書房・昭和52年)は、1933年(昭和 8年)に始まった、アメリカのテネシ−渓谷開発公社(TVA)事業について、その歴史、経過、目的、ダム建設等の事業内容、成果について著している。

 フランクリン・ル−ズベルト大統領は1929年に起こった世界の大恐慌を乗り切るためにニュ−ディ−ル政策として、全国産業復興法、TVA法、失業救済植林法などを制定した。TVA法における事業目的は、テネシ−河の開発によって・舟運をはかる・水害の防止・電力の生産と農村の電化を図る・流域の植林とその利用・流域の農業、鉱業、工業の振興を図る・電力による肥料の製造・国防上の主要目的を達すること、と規定されている。12年がかりの大工事であったが、テネシ−渓谷開発公社は、テネシ−河本流 1,050キロにノリス・ダム、ホイ−ラ−・ダムなどの26基のダムと発電所を造り、あらゆる産業を興し、国民の生活を便利に豊かにした。


 さらに、この書で「TVA法には国防上の重要目的を達成することが規定されているように、第二次世界大戦がおこるとTVAで生産された電力の大半が爆撃機用のアルミニュウムや原子爆弾、爆薬、その他さまざまな軍需品の製造に奪われ、国民の生活をゆたかにする平和産業にはわずかに25パ−セントしか利用できなくなった」と記している。昭和20年8月、広島市と長崎市に投下された原子爆弾は、その時に製造されたものである。戦慄を覚えた。恥ずかしながら、30数年、ダム、河川に係わってきて、初めて「TVAと原子爆弾」の関係について知った。スウェ−デンの化学者ノ−ベルは、平和産業の利用のために「ダイナマイト」を発明したわけであって、ダムもまた平和産業に利用されてもらいたい。その他に、TVAについてはジョンR・チコニス著『TVAの少年』(東京堂・昭和24年)の書がある。


[前ページ] [次ページ] [目次に戻る]
[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]