《このごろ》
水を流す養生がなぜ必要か

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湯西川ダム見学時に、打設中のダム堤体下流面が焦げ茶で汚く見えるのは養生のため水を流しているからだとの説明があったと、先日、「このごろ」の「打設中の堤体は汚く見えるが」という記事に書いた。そのときに、水を流す形の養生がなぜ必要かについて、現地でも多少の説明があったとも思ったが、記憶不鮮明で書きたくとも書けなかった。


堤体打設中の湯西川ダム

それで、調べてみると、いい文献を発見。土木学会コンクリート委員会編「2007年制定 コンクリート標準示方書[ダムコンクリート編]」にきちんと書いてあった。以下、その内容を参考に、整理してみた。

ダムコンクリートの打設後、その表面が乾燥して水分が失われると、セメントの水和反応が十分行われなくなる。セメントが固まるのは、水和反応(セメントと水が反応して不溶性の水和物を作り、凝結硬化する化学反応)のためである。したがって、水和反応が十分でないと、コンクリートの品質を確保する上で支障が生じることになる。

また、直射日光や風などによって、ダムコンクリートの表面が急激に乾燥すると、ひび割れ発生の原因となる。これもコンクリートの品質確保上問題となる。

このため、ダムコンクリートの打設後、その表面を乾燥しないよう一定期間湿潤状態に保たなければならない。その方法が、散水養生または湛水養生。ということで、湯西川ダムでは、散水養生が行われていたのだろう。


湛水養生(稗原ダム)

[関連ダム] 湯西川ダム  稗原ダム
(2010.11.5、Jny)
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