《このごろ》
川治ダムにもあった三弦橋

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 三弦橋は、大夕張ダムにある旧森林鉄道のものが有名です。断面が三角形を描く三弦橋は、四角錐(ピラミッド型)に組み立てられた鉄骨を並べて、頂点を連ねた独特の構造となっています。


三弦橋(旧森林鉄道)

 現在この三弦橋は、直下で再開発が進められている夕張シューパロダムの試験湛水のため水没しています。また、新ダム完成後は、大規模な渇水でも発生しない限りその姿を見ることはできません。


1.水管橋としての三弦橋

 三弦のトラス橋は、道路橋として使用されることはあまりないようです。素人考えではありますが、断面が三角形となることで斜材が前方視野を遮ることになります。時速50キロ程度で走行することを想定するとやはり不安を感じざるをえません。
 道路用のトラス橋としてはあまり使用されない三弦橋も、水管橋のように路面からの高さを、それほど必要としない場合には採用される例があるようです。滋賀県野洲市にある『野洲川2号水管橋』(滋賀県企業庁)は、中央径間はアーチとなっていますが、左右両岸部分は三弦トラスとなっていました。


野洲川2号水管橋(撮影場所:滋賀県野洲市)


2.川治ダムの三弦橋

 川俣ダムのカードが変更され、新しいカードを頂きに川治ダム上流部を走行中のことでした。八汐湖(川治ダム)に架けられた八汐大橋から右前方を見ると、ピラミッド状に組まれた鉄骨が目に入りました。三弦橋です。大きさから判断して、水管橋ではないようです。


川治ダムの三弦橋(八汐大橋より)

 徒歩で現地に向かうと、やはり道路用の三弦橋でした。確認した限りでは橋の名称のようなプレートは見つかりません。橋から続くトンネルには「小峠トンネル、1982年3月、関東地方建設局」のプレートが設置されていました。付替道路は、ダム本体の竣工以前に完成していなければなりません。この橋は、トンネルの完成とほぼ同時期に、建設省(当時)によって付替道路の橋梁として造られたものであると思われます。


川治ダムの三弦橋

 大夕張ダムの三弦橋は、よく見ると、機関車の進行方向に対してA字型のフレームとなっていました。この横材が将来的な電化を見越して架線を設置するためのものであったのかどうかは、今となっては不明です。川治ダムのものは純粋に二等辺三角形でした。また、大夕張ダムでは、橋の両岸がトンネルとなっていました。川治ダムの三弦橋は左岸側がトンネルで、右岸側は明かり区間です。さらに、橋の長さについては、相当の差異があります。このように条件は異なりますが、何となく北海道夕張の三弦橋を彷彿とさせるものがありました。


大夕張ダムの三弦橋

 川俣ダム管理支所の方の話によると、このあたりの標高は1,000m級で北海道に類似した気候となっているそうです。ダムカードの配布は年間を通じて行っていますが、安全上の理由から、ダムの見学は4月下旬までは難しいようです。この地域では、桜の開花は5月になってから、紅葉は9月下旬から始まるそうです。また、新たに今シーズンから「川俣湖畔わくわくハイキングマップ」の配布が始まるそうです。
 暖かくなるこれからの季節には最適の見学地ではないかと思います。川俣ダムに行かれる方の多くは、川治ダムの八汐大橋を通るはずです。ぜひ、安全な場所からこの三弦橋を愛でてください。


ゲートハウスがリニューアルされた川俣ダム

[関連ダム] 大夕張ダム(元)  川治ダム  川俣ダム
(2014.5.1、安部塁)
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