土木学会は去る9月11日、理事会で平成27年度土木学会選奨土木遺産を承認した。今年は全国で21の土木構造物が選奨土木遺産となったが、その中に島根県企業局が管理する三成ダムが含まれていた。選定理由は、「わが国における最初期の本格的なアーチダム」。
これを記念して、11月7日(土)に、現地の奥出雲町三成中央公民館で島根県企業局などの主催で「三成ダム土木遺産認定記念式典」が開催された。内容は、土木学会より認定書及び銘板を授与、ダムマイスター夜雀さんによる記念講演、そして三成ダムに行って現地見学会。この一連の行事に参加したので、様子を紹介する。
前日の夜に出雲まで飛行機で行き、一泊して当日車で三成へ。会場に近づくと、あちこちに「記念式典会場」の案内看板。道に迷うことはなかった。
会場に到着。会場は三成中央公民館だが、公民館、体育館、カルチャープラザなどがある立派な複合施設だった。
式典は2階の会議場で。階段を上がると、開始までまだ1時間近くあるにもかかわらず、入場者が列を作って開場を待っていた。多少は人がいるだろうと思ってはいたが、これにはびっくり。
式典に合わせ、多数の写真が展示されていた。中に、三成ダム建設当時の写真があって、興味深かった。
式典開始30程前に会場に入る。既に聴衆でほぼ満席。この後、補助椅子を出して対応したようだ。
会場の準備も全て整い、地元のテレビ局だろうか、入念に撮影の準備をしていた。
この場所で、認定書と銘板を授与、夜雀さんによる記念講演が行われる。式次第が張り出されていた。
そして10時に式典開始。認定書は土木学会中国支部長(国交省中国地方整備局長)から島根県企業局長へ、また銘板は島根県土木部次長へ、それぞれ手渡された。
認定証の授与
銘板の授与
記念撮影
認定証
銘板はすぐに花の下に飾られた
銘板、ダムの現地に早く飾ってほしい 記念講演を前に、しばし休憩。パソコンも準備OK。
記念講演が始まる。講演の実際のタイトルは、「国内アーチダム黎明期の各堤体と三成ダム」というものだった。これまでに土木遺産に認定されたダム・堰は大橋ダム(高知県)、上田池(兵庫県)、南郷洗堰(滋賀県)などたくさんあるが、アーチダムはなかった。そのことを説明するために、写真をふんだんに使ってまずダムの代表的な型式を説明し、アーチダムとはどんなダムかを詳細に説明。さらに、アーチダムの設計の進化から三成ダムの位置づけに及ぶ。 三成ダムは日本で最初に竣工したアーチダムで、鳴子ダムと同様極めて薄い定半径アーチダムに属する。三成ダムと鳴子ダムは越流部の断面構造は似ているが、三成ダムは両岸に土砂吐がどん!と構えていてすごくマッチョな印象。似ているのは越流部だけ。三成ダムは、国内に似たダムがない極めて個性的なダム。
アーチダムの設計の進化
三成ダムは鳴子ダムと同様極めて薄い定半径アーチダム
三成ダムと鳴子ダム
三成ダムは非常に個性的ダム この辺はかなり専門的で、かつよく整理されていて、聞いていて勉強になる。思わず写真を撮るのも忘れてしまった。これからはやわらかく、「三成ダムの萌えポイント」の紹介。ハートのマークが随所にちりばめられていて。萌えポイントはたくさんあったが、写真を撮ったもののみ少し紹介。
と言うことで内容盛りだくさんの講演も終了。あとは午後の三成ダム見学会が待っている。夜雀さんもほっとした表情で、記念撮影に応じていた。
三々五々ダムの現地に移動。ダムに着くと、早々とかなりの人が来ている。地元の人も遠方からの人もいるようだ。見学会は13:00からなので、まだ1時間半近くある。売店が出ていて、ダムバーガーとダムカレーを売っていた。ちょうど昼時で、ダムカレーには列が。両方食べたが、バーガーはおいしかったが、ダムとの関係は? カレーはイノシシ入りと言うが印象に残っていない。たぶん入っていたのでしょう。ともにワンコインだからリーズナブル。 見学者には、限定300枚?の特別なダムカードが配布される。これを目当てに来た人もいたようだ。
皆さん楽しんでます
バーガーとカレーを販売
ダムバーガー
ダムカレー、どっしりとしたアーチ
ダムカードがここで配布される 三成ダムはちょうど紅葉の時期で、天気が曇りがちだったのが残念だが、どっしりとした個性的な姿を見せていた。
関係者は一般より先に見学。取材と言うことで、そこの加えてもらった。天端に入り、発電所の取水口を見て、目玉は、左岸下流を下りて堤体直下から下流面を望む。下流へ下りる通路が急で狭く、ヘルメットをかぶって、数人ずつに分かれて見学。
天端から下流を望む
天端風景
下りる途中、下流面が苔むしている
右下のヘルメットの人がいるところまで行ける
そのうちに一般の見学が始まる。夜雀さんはここでも活躍。萌えポイントなどを解説。建設当時に工事に携わった方がたまたまおられて、夜雀さんが即席インタビュー。発電所への水路トンネルの建設を担当していた。質のいい骨材を調達するのが大変だったとか。
萌えポイントを解説中?
正面が発電所の取水口、右の行列は下流直下に下りる順番待ち
真ん中が建設工事に携わった方、インタビューに答える 何で遠くからこんなにたくさんの人が来るんだ、と地元の人の驚きの声を耳にした。普段は静かな地方の町で、これは不思議な現象に見えたのだろう。皆さん楽しんだし、地域振興にもなるだろうし、今回のイベントは大成功だった。 これからダムが土木遺産に認定されたときには、是非このようなことをやってほしい。三成ダムがモデルケースになるのでは。わざわざ遠路東京から来て良かった。
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