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ダム番号:1730
 
三成ダム [島根県](みなり)



ダム写真

(撮影:安河内孝)
111789 安河内孝
111787 安河内孝
111798 安河内孝
107028 島根県企業局東部事務所
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どんなダム
 
日本で初めてのアーチダム
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堤高42mで小規模だが、日本で初めての本格的アーチダム。昭和27年4月着工、昭和29年3月完成。着工は上椎葉ダムが先だが、竣工は三成ダムが早かった。
両側の排砂ゲートは重力式
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中央に8門の洪水吐ゲートがあり、そのあたりはアーチダムだが、両側に排砂ゲート右岸1門、左岸2門)があって、その部分は重力式ダム。このため、見たところアーチダムの軽快さが感じられず、むしろ重厚な印象を受ける。
[写真](撮影:安河内孝)
テーマページ Let's visit a historical dam  file.01  三成ダム 「国内初アーチ式ダム」
このダムどんな人? ・・・ダムの擬人化イラスト集・・・
ダムツーリング -史上最大の作戦・第二次九州/中国地方-
このごろ 三成ダムで夜雀さんが逆取材を受ける
三成ダム土木遺産認定記念式典は盛会だった
左岸所在 島根県仁多郡奥出雲町三成1393の3  [Yahoo地図] [DamMaps] [お好みダムサーチ]
位置
北緯35度11分24秒,東経133度02分30秒   (→位置データの変遷
[近くのダム]  阿井川(7km)  尾原(9km)

河川 斐伊川水系斐伊川
目的/型式 P/アーチ
堤高/堤頂長/堤体積 42m/109.7m/22千m3
流域面積/湛水面積 117.5km2 ( 全て直接流域 ) /32ha
総貯水容量/有効貯水容量 3438千m3/1138千m3
ダム事業者 島根県
本体施工者 森本組
着手/竣工 1950/1953
ランダム情報 【ダムカード配布情報】2021.8.1現在 (国交省資料を基本とし作成、情報が古いなどの場合がありますので、事前に現地管理所などに問い合わせるのが確実です) Ver3.0
○三成ダム操作所 9:00〜17:00(土・日・祝日を含む)
ダムカード画像コレクション
三成ダム Ver.1.0 (2014.05)
[協力:X-DAM]
三成ダム Ver.1.1 (2015.11)
[協力:タマ&ピーター]
三成ダム [平成27年度 土木遺産認定記念] Ver2.0 (2015.11)
内部リンク ダムギャラリー・第2展示室
リンク DamDrive・三成ダム
DamDrive・三成ダム(2回目)
Dam's room・三成ダム
Damstyle・三成ダム
dashelo の 『さて、見にいこ。』・「三成ダム」見てきた。
THE SIDE WAY・三成ダム
ウィキペディア・三成ダム
ダムマニア・三成ダム
ダム好きさん【三成ダム】
ひろしのダム発電所見学記・三成ダムと島根県企業局 三成発電所
吉備の国 風景撮物帳・三成ダム
三成ダム わが国最初のアーチ・ダム (社団法人日本土木工業協会)
水力ドットコム・三成発電所
雀の社会科見学帖・三成ダム 再び その1
雀の社会科見学帖・三成ダム見学 その1
雀の社会科見学帖・土木学会選奨土木遺産認定記念式典 三成ダム 2015 その1
諸元等データの変遷 【05最終→06当初】左岸所在地[仁多郡仁多町大字三成村中原→仁多郡奥出雲町三成村中原]
【06最終→07当初】左岸所在地[仁多郡奥出雲町三成村中原→仁多郡奥出雲町三成1393の3] 河川名[斐伊川→山田川] 堤高[36→42] 総貯水容量[3869→3438] 有効貯水容量[1427→1138]
【07当初→07最終】河川名[山田川→斐伊川]

■ このごろ → このごろ目次
三成ダムで夜雀さんが逆取材を受ける

 
前々から、夜雀さんに、土木遺産的ダムを取材して、テーマページに特集してくれないかとお願いをしていた。
それで、夜雀さんは、日本で初めての本格的アーチダムといわれる島根県企業局の三成ダムに取材に行ったようです。

そうしたら、これは珍しいことだと、県の方から逆取材を受け、取材の様子が島根県のホームページに載ることになってしまった。(島根県のホームページの記事はこちら

こんなことはおそらく始めてではないか。
そこで、島根県企業局東部事務所の塩田哲也様にメールで聞いてみました。逆逆取材です。


Q.なぜ、逆取材して、ホームページに載せようとしたのですか。

A.電力会社だけでなく島根県も水力発電事業をやっているんですよ、ということをもっと住民の方に知っていただきたく、企業局のダム及び水力発電所のPRに励んでおります。
その一環として、昨年度より企業局ホームページの中に三成ダムのページを作成し、ダム周辺の四季折々の風景やダム設備の点検の様子などダムにまつわるトピックスを紹介しています。
今回、ダム便覧の取材を受けるという話が来て、ダム管理担当者から折角の機会なので取材風景をホームページの記事にしてはどうかいう話になり、取材の様子を掲載させていただきました。


Q.夜雀さんの取材の様子はどうでしたか。

A.たいへん熱心に取材をされていました。まるで憧れのアイドルを見るかのようにダムを隅々まで見ていただきました。ダム直下へ行く通路は、足元が悪いにも関わらず、左岸・右岸両方へ降りて写真を撮っていらっしゃいました。


Q.夜雀さんはいわゆる「ダムマニア」ですが、ダムマニアについてどう思われますか。

A.ただ単にダムの風景がお好きなのかなと思っておりましたが、ダムの構造のことや管理・運用のことまで、熟知していらっしゃったので正直驚いております。


Q.三成ダムの管理で、大変なこととか気を使っていることとかがありますか。

A.三成ダムは設置から50年以上経過していますが、設置当初からの設備が現在も多くあります。
その設備が屋外に露出しているため、点検等には十分に注意を払っています。
ダムの規模に対してゲート数が11門(洪水吐ゲート8門・土砂吐ゲート3門)と多いのですが、放流時のゲート操作は職員が開度を計算して操作を行っております。
また、集水面積に対して貯水容量が小さいダムであるため、昨今のゲリラ豪雨等による急な出水に対しても放流対応の遅れがないよう素早い判断が求められています。   


インタビューは以上ですが、夜雀さんによる三成ダムの記事はいずれダム便覧に掲載されるでしょうから、期待しています。
全国の土木遺産ダムの管理をされている皆様、ある日突然夜雀さんの取材があるかもしれません。
そのときはよろしくお願いします。

(2009.5.21、Jny)


■ このごろ (抄) → このごろ目次
三成ダム土木遺産認定記念式典は盛会だった

 
 土木学会は去る9月11日、理事会で平成27年度土木学会選奨土木遺産を承認した。今年は全国で21の土木構造物が選奨土木遺産となったが、その中に島根県企業局が管理する三成ダムが含まれていた。選定理由は、「わが国における最初期の本格的なアーチダム」。

 これを記念して、11月7日(土)に、現地の奥出雲町三成中央公民館で島根県企業局などの主催で「三成ダム土木遺産認定記念式典」が開催された。内容は、土木学会より認定書及び銘板を授与、ダムマイスター夜雀さんによる記念講演、そして三成ダムに行って現地見学会。この一連の行事に参加したので、様子を紹介する。

 前日の夜に出雲まで飛行機で行き、一泊して当日車で三成へ。会場に近づくと、あちこちに「記念式典会場」の案内看板。道に迷うことはなかった。



==== ( 中 略 ) ====


 そして10時に式典開始。認定書は土木学会中国支部長(国交省中国地方整備局長)から島根県企業局長へ、また銘板は島根県土木部次長へ、それぞれ手渡された。


認定証の授与


銘板の授与


記念撮影


認定証


銘板はすぐに花の下に飾られた


==== ( 中 略 ) ====


 記念講演が始まる。講演の実際のタイトルは、「国内アーチダム黎明期の各堤体と三成ダム」というものだった。これまでに土木遺産に認定されたダム・堰は大橋ダム(高知県)、上田池(兵庫県)、南郷洗堰(滋賀県)などたくさんあるが、アーチダムはなかった。そのことを説明するために、写真をふんだんに使ってまずダムの代表的な型式を説明し、アーチダムとはどんなダムかを詳細に説明。さらに、アーチダムの設計の進化から三成ダムの位置づけに及ぶ。
 三成ダムは日本で最初に竣工したアーチダムで、鳴子ダムと同様極めて薄い定半径アーチダムに属する。三成ダムと鳴子ダムは越流部の断面構造は似ているが、三成ダムは両岸に土砂吐がどん!と構えていてすごくマッチョな印象。似ているのは越流部だけ。三成ダムは、国内に似たダムがない極めて個性的なダム。



==== ( 中 略 ) ====


 三々五々ダムの現地に移動。ダムに着くと、早々とかなりの人が来ている。地元の人も遠方からの人もいるようだ。見学会は13:00からなので、まだ1時間半近くある。売店が出ていて、ダムバーガーとダムカレーを売っていた。ちょうど昼時で、ダムカレーには列が。両方食べたが、バーガーはおいしかったが、ダムとの関係は? カレーはイノシシ入りと言うが印象に残っていない。たぶん入っていたのでしょう。ともにワンコインだからリーズナブル。
 見学者には、限定300枚?の特別なダムカードが配布される。これを目当てに来た人もいたようだ。



皆さん楽しんでます


==== ( 中 略 ) ====



右下のヘルメットの人がいるところまで行ける


==== ( 中 略 ) ====



真ん中が建設工事に携わった方、インタビューに答える

 何で遠くからこんなにたくさんの人が来るんだ、と地元の人の驚きの声を耳にした。普段は静かな地方の町で、これは不思議な現象に見えたのだろう。皆さん楽しんだし、地域振興にもなるだろうし、今回のイベントは大成功だった。
 これからダムが土木遺産に認定されたときには、是非このようなことをやってほしい。三成ダムがモデルケースになるのでは。わざわざ遠路東京から来て良かった。
 ・・・→ 全文はこちら
(2015.11.10、Jny)


■ テーマページ → テーマページ目次

Let's visit a historical dam 
file.01 
三成ダム 「国内初アーチ式ダム」

by  『雀の社会科見学帖』 夜雀

所在地: 島根県仁多郡奥出雲町三成
竣工年: 1953年
目的: 発電・砂防


島根県の東南部を流れる斐伊川に造られた国内初のアーチ式ダム・三成ダムは島根県企業局が管理しているダムです。

3km下流にある三成発電所に水を送っています。

発電専用ダムであるとずっと思っていたのですが三成ダムは砂防の役割も持っていました。

斐伊川は日本刀を造る材料となる玉鋼の原料の砂鉄を採取できる河川です。
現在、玉鋼は島根県のこのエリアでしか造ることができません。
その砂鉄採取「かんな流し」が上流で行われることから砂防が目的に入ったという経緯があります。

しかし、『かんな流し』は徐々に行われなくなり、三成ダムは建設当初の計画よりも堆砂が進んでいないのだそうです。





三成ダムは堤高42.0mのアーチダムです。
しかし、岩盤に恵まれず両岸に重力式の土砂吐を備えています。

現地の説明板には『中央アーチ両岸重力式ダム』という非常に正確な記載が有ります。

中央のアーチは上流面が鉛直、下流面が1:025の勾配で、吃驚するほど切り立っています。

管理所や取水設備などは左岸に造られています。

国道に近い右岸に管理所を作っていないのは取水口が山側(左岸)にある為です。




堤体右岸のすぐ上流にはこのように扇形の取水口が有ります。

このスクリーンを通った水は圧力隧道を経由して下流の発電所まで到達します。




天端に向かうこの右岸の橋までは解放されているので誰でも見学の為に近づくことができます。

平日で職員の方がお越しになっている時は点検や洪水時などの対応困難な場合を除き、天端からの見学も受け付けてくださっています。
事前に電話等で申し込みをしていただければ有難いとのお話でした。




天端からダム湖を見たところです。

丁度写真の中央くらいまで堆砂が進んで来ているようですが、計画より進行は遅いという事でまだまだ余裕のある三成ダム・ダム湖です。




天端から直下を見たところです。

非常にアーチがきついです。
半径45.0m、69.4°の弧を描いています。




扇形の取水口のスクリーン裏側から見たところです。

補修は必要に応じて行われていますが、この取水口も原形をそのまま残しており大きな改修はありません。
当時の姿をとどめており、コンクリートの肌目に年月を感じます。




余水吐ゲートと土砂吐ゲートです。

土砂吐ゲートは昭和61年に新しいものに付け替えられました。
竣工当時のままの余水吐ゲートの扉体と比べると、新しいゲートは剛性がものすごく上がっている造りであることがよくわかります。

余水吐ゲートの扉体はリベット打ちで華奢な印象です。

新旧のローラーゲートを並べてこの距離で見る事ができるというのは凄いと思います。




左岸の管理道路から見たところです。

土砂吐の横に堤体に内蔵された部屋がある事がわかります。
これは予備発電機室として使われている部屋だそうです。




予備発電機室の窓から堤体下流を見たところです。

眼下に迫力満点の導流壁がありました。




左岸管理道路を通って堤体下流から見た三成ダムです。

余水吐ゲートから真っ直ぐにそして滑らかに切り立ったコンクリートには苔がところどころに生えていて、建設時の型枠の名残も目にすることができます。

実に美しい、50年物の働き続けてきたコンクリート“感”は、間近で見ると圧巻としか言えません。




右岸管理道路から見た左岸の土砂吐です。

導流壁に挟まれた越流部に小さな穴が開いていますが
これは発電の取水口の堆砂を除去するための排砂ゲートの吐口です。




左岸管理道路から見た右岸の土砂吐です。

どっしりとしたこの重力式部分が際立つのは、左右の土砂吐に挟まれた余水吐のアーチ部分が切り立っていて、堤体の厚さの違いが明瞭だからです。

この土砂吐を見ていると重力式アーチの断面を見ているような不思議な感じにとらわれます。
1953年に電力確保の為に竣工した三成ダム。元々、斐伊川水系砂防計画で建設された砂防ダム5基のうちの1基でした。砂防堰堤としての機能に発電の為の容量を持たせたハイブリッドのダムです。

竣工時に作成されたパンフレットには「白い石炭 島根の宝」という文字が有りました。水力発電の素晴らしさを表した素敵なキャッチコピーです。

島根県にお越しになった際には是非、機能美と無骨さを兼ね備えたこの重厚な姿を愛でていただきたいと思います。
(2009年9月作成)


→ ダム便覧の説明
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