◇ いざ、出発
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集合は新宿駅西口。7時10分過ぎにはちらほら参加者と思しき人々が現れるが、バスツアーの出発地点としてポピュラーな当地には『ダムツアー』以外のツアーバスも所狭しと並んでおり、参加者かどうか尋ねるのもはばかられる状況であった。中には作業服にヘルメット姿といういかにもそれらしき風体の人物もいた。
主催者である岸利透さん(ハンドルネーム)は集合時間ギリギリで登場。主催者がギリギリに現れるとは先が思いやられると思ったが、これには深い理由があったのである。 参加者の点呼の後、ほぼ予定通りの時刻に出発。
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新宿からダイレクトに首都高に乗ったため、いきなり渋滞に引っかかるが、出発から約1時間、バスは無事関越自動車道新座料金所を通過。その後はほぼ順調に水上へと向かう。 バスの中では主催者挨拶及びレジュメの説明がある。なかなか堂に入ったもので、ダムについての一般的な知識は玄人はだしであった。放流設備についての知識なども豊富で、いわゆる『ダムマニア』の中には『ダムの放水・放流』に深い興味を抱いている『ダム放水マニア』とでも呼ぶべき人種が厳然として存在するらしい。
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岸利さんの説明が終わると、それぞれ隣同士での会話が始まるが、聞こえてくるのはダムについての蘊蓄がほとんどであった。中には、「日本における水利権は云々」などという難しい話も。 途中一度の休憩を挟み、バスは順調に目的地に向かう。水上インターが近づくと、遙か彼方の山脈には未だ消えやらぬ残雪が見えてきた。実はこのことも、今回のツアーに大いに関係があったのであるが、その時はそんなことを想像だにしなかった。
ほぼ予定通りの10:50に水上ICを降りる。水上・道の駅で参加者を1名拾い、バスは渓谷の道を分け入っていく。 今日最初の訪問地である『藤原ダム』が近づくに連れ、バスの中がザワつき始める。右車窓の眼下に渓谷が見え始め、藤原ダムの接近が感じられる。土地勘のある参加者は一眼レフカメラのセットアップを始めた。車窓から上流側を眺めながら、今や遅しとカメラを手に待ちかまえる一行。その時、参加者のひとりが叫んだ。 「放流しているぞ!」 この一声で車内に歓声が湧き上がった。見ると、木立を通してクレストゲートから白く輝きながら水が流れ落ちている。車内にシャッター音が続けさまに響き渡った。 参加者全員の体内のアドレナリン分泌量が一気に増えたのは間違いなかった。
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