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1.香川県の水環境


 香川県は、四国の東北にあって、半月形に突き出た半島と大小 100余りの島からなる。徳島県との境である讃岐山脈(最高峰竜王山標高1060m)が東西に走り、北に向かって緩やかに傾斜して平野が開けた地形である。河川は、そのほとんどがこの讃岐山脈に源を発し、山間部では急勾配で流れだし、平野では急変して扇状地を形成し、天井川となって瀬戸内海に流れ込んでいる。この讃岐平野は、東から、鴨部川と湊川系の大川平野、香東川と新川系の高松平野、土器川と金倉川系の丸亀平野、高瀬川と財田川系の三豊平野からなる。

 気候は瀬戸内式気候に属し、年間気温16℃前後で温暖といえるが、降水量は瀬戸内でも特に少ない地帯である。高松気象台の最近30年(昭和46年〜平成12年)の状況をみると年間平均降水量1124mmであって、全国平均降水量1613mmの約3分の2程度であり、しかも降雨は梅雨期と台風期に集中している。平成16年現在の人口は 102万人、面積1875km2で、可住地面積52%、林地48%の割合で、このことから人口密度は 544人/km2で非常に高い。

 このことから、香川県の水環境キ−ワ−ドとして、少雨、干ばつ、雨乞、小河川、ため池、水利慣行が挙げられるが、すべて水不足の状況を現している。いかに水開発によって、水不足の解消に努めてきたか、讃岐の人たちの水との緊張関係の歴史であったといえるだろう。そのため、古代から利水を重視し、ため池の築造、水ブニによる水利慣行(田んぼ一枚一枚に水の持ち分)の発達、さらに現代では、香川用水の通水につながってくる水との闘いだった。香川用水は早明浦ダム(高知県)で開発された吉野川の水が、池田ダム(徳島県)の直上流(吉野川左岸)に設けた取水口から取水し、阿讃山脈を貫く導水トンネルにより幹線水路約 106kmをもって、年間2億4000万m3の水が香川県内のほぼ全域に農業用水、水道用水、工業用水として供給されている。吉野川からの導水という香川県民の長い夢が昭和50年4月に叶った。

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 香川県はよくため池が多いと言われるが、全国的にはその数は第3位である。平成元年度におけるため池の数は 213,893ケ所で、第1位は兵庫県53,100ケ所、第2位は広島県20,998ケ所、次いで香川県16,158ケ所となっている。だが、ため池数の密度は1 km2当たり 8.6ケ所で全国一である。(内田和子著『日本のため池』 (海青社・平成15年) )

 讃岐のため池の発達について、長町博香川土地改良区事務局長は、日本水環境学会編『日本の水環境6』(技報堂・平成12年)の書で、「農業生産にとって欠くことのできない水、それを求めて発達してきた讃岐のため池は、当然のことに農地の開拓と密接にかかわり合っている。3つの大きな開拓の時代があった。第1期は古代条里制開拓であり、この時代讃岐平野の約39%にあたる2万2000haが開発されている。第2期は藩政時代の新田開発によって、ため池数4183ケ所増えている。第3期は明治以降の急傾斜地の開拓を中心とした現代の開拓が池が築造されてきた」と指摘する。
 なお、ため池の規模割合は貯水量1000m3未満が61%(中山間のため池)、1000〜5000m3が25%、5000m3以上が14%となっている。
 このように、多数のため池の必要性は、雨が少なく、大きな豊かな流れをもつ河川がなく、流域即ち山の面積に比べて水田の面積が広い(よく開発されている)ことに起因するからである。

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