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3. 重信川の自然再生に向けて

 重信川は流域の開発の進展と歩調を合わせるように、河畔林が減少し、堤防をコンクリートで覆ったことにより、多様な生態系が失われてきています。外来種の侵入も著しく、早急の対応が必要とされています。重信川を美しく彩るオオキンケイギクも外来種であり、その旺盛な生命力により、在来種が追いやられていることは案外知られていません。重信川の自然再生に向けて以下の取り組みが必要です。

@ 水と緑のネットワーク形成

 重信川は豊かな水に溢れた川ではなく、また、日本最後の清流として全国に名高い四万十川のような名のある川でもなく、一見何の取り柄もない川です。しかし、流域のあちらこちら、実に130箇所にも上る泉が湧き出ています。その中で、日本の名水百選にも選ばれている杖之淵は代表的な泉です。また、河口に広がる砂州は野鳥の楽園となっています。このような重信川の宝を活用しながら生態系を回復するためには、水と緑の回廊を作ることが必要です。

 水域は多様な生態系の命の源です。河口から源流までの骨のように延びた本川・支川の川面を線として、流域の至る所に点在する泉を点として、水のネットワークが形成されます。その際、重信川に残る全国でも珍しい霞堤の水辺空間の活用は重要です。水のネットワークが構築されれば、緑のネットワークの構築も必要です。失われた河畔林の再現が、まず求められます。川辺の連続した樹林帯は人の散策の場であり、生物多様性のシンボルでもあり、それとともに地震時の避難場所にもなります。水と緑のネットワークの形成が60万人の流域住民に潤いと安らぎを与えることは間違いありません。

A 自然と人、人と人のネットワーク形成

 自然再生の主役は自然そのものです。人間が余分な手を加えることは好ましくありません。しかし、環境作りと最低限の維持管理は人の手を必要とします。自然再生型の公共事業では里親的な人的ネットワークが効果的です。自然の再生に関して調査し、観察し、適度な管理を加えて、それを個人のボランティアとして行うのではなく、地域コミュニティが、もしくはNPOなどが責任を持って関与していくことが望ましい。高齢化の時代、シルバーボランティアの活用も意味があると思われます。

 しかし、個人のボランティア精神のみに頼る方法は好ましくありません。ボランティアの輪が広がらない時、個人の息が切れることもあるし、ボランティアの中心人物が健康を害することもあります。その場合は責任を持つ所在がありません。永続するためには、自然再生を核として地域コミュニティが活性化し、NPOが活性化し、それらが有機的に連携しながら人の輪を大きくすることが重要です。川を舞台として大きな人の交流の輪が形成される、そのような自然再生が理想的です。それは太陽の周りを惑星が取り囲み、永遠の球形運動をしながら、太陽系を維持している様と同じです。重信川を舞台として、日本に、世界に情報発信し、人が交流していく、そのような絵を描くことが大切です。

重信川の自然再生を通して、人と人のネットワークが形成される.川を舞台に主役の子供達の心や豊かな生態系がはぐくまれていく.
B 子供の心の成長の場としての環境学習 
 また、自然再生は環境学習の場として活用できます。文科省により鳴り物入りで導入された「ゆとりの教育」は日本の若者の学力を低下させ、国際競争力を失わせる最大の要因の一つとなったことは明白です。しかし、導入されている以上、文句だけを言っていても始まりません。現時点では、ゆとりの教育を、総合的学習の時間を、如何に活用するかも熱心に検討しなければなりません。その中で環境学習は選択肢の一つです。


 詰め込み教育では得られない発見の連続が自然にはあります。また、環境教育は情操教育でもあり、協調性を育てる教育でもあります。自然の観察、自然の保護・育成など、太陽の下でチームを組んで全員で取り組み学んだ記憶は、一生心に残るであろう。子供達が自然と関わり合う場を奪ってしまったものの責任として子供向けの環境学習には熱心に取り組む必要があります。

 川の自然再生は舞台、主役は若者と子供達

 環境学習のリーダーとしては大学生に活躍して欲しい。明治維新をみるまでもなく、若者は国の宝です。新しいものを生み出し、改革する力に満ちあふれています。しかし、今は時代のなせる技か、飽食の時代にあって自己主張の場を失っています。若者達の目が輝かないと国の将来はありません。70歳や80歳を超えた政治家や実業家が活躍する国に光り輝く将来はありません。今のままでは、日本は近い将来、押し寄せる高齢化の波の中で国際競争力を失い、昔、東洋に光り輝いたジパングという国があったそうなという語り草になる可能性が高いと思います。今一度、若者の目が輝かなければなりません。そのための方策の一つが自然再生のリーダーとは、急にみみっちい話に聞こえるかもしれませんが、そう認識するとすれば、その認識自体に問題があると思います。

 活動の原点は公的精神の復活

 社会を変えていくほどの膨大なエネルギーは自然を愛し、人を愛するところから出てきます。間違っても自分のために生きる個人主義から出てくるわけではありません。宗教改革者の一人であるカルビンの思想に今日の資本主義の原点があると言われています。しかし、富を自分のものとする経済主義・資本主義は根底が個人主義であり、人間の本質とは反しています。近い将来、今日の経済至上主義は転換する日を迎えるであろう。そうしなければ、人類は地球環境問題に勝利することができません。国際社会は温暖化ガス排出抑制のための京都議定書の発効さえできずにいます。国際連合は国家エゴを乗り越えることができません。戦後60年、世界は国際連合に変わる国家エゴを超えた機関を必要とする時期にさしかかっています。
 大学生が自然を育み、子供達にボランティアとして環境学習を指導する。自然を大事にし、個人のためと言うよりも子供達のために生きる。その生き様はエネルギーの源となります。公のために生きる、尽くすことを喜びと知った大学生が一人二人と増えてくれば、社会改革の原動力となるであろう。若者には、自然を愛し、人のために尽くす価値観の大切さを学んで欲しいと思います。それは間違いなく、人類の将来の財産となります。


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