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◇ 1. 矢作川の水利用

 水問題を考えるとき、治水、利水、環境から捉えることはもちろんであるが、水と食糧とエネルギーの三位一体としてみることも大切であろう。とくに矢作川を歩くと、そのことが実態として理解できるようだ。

 国土開発調査会編・発行「河川便覧2006」(平成18年)によると、矢作川における水利用使用許可の現況(平成17年4月30日現在)は、次のように記されている。

 発電25件で、最大使用水量829.398m3/s、上水道10件で取水量5.895m3/s、給水人口169万人、鉱工業用水25件で9.248m3/s、灌漑用水266件で取水量80.085m3/s、灌漑面積18 127ha、その他1件で取水量が0.508m3/sとなっている。

 明治以降、矢作川の水利用は明治用水、枝下用水における灌漑用水を始め、その後、電力エネルギー源として、水路式による岩津発電所、大正期には賀茂発電所、巴川発電所、足助発電所など次々と稼動を開始し、西三河地域の農業、工業の発展の基礎を築いた。戦後のトヨタの自動車生産など西三河工業地帯の発展につながり、その発展には矢作川のダムによる都市用水がその一翼をになった。昭和46年に矢作ダムの完成によって矢作川流域の治水と利水の役割を果たしてきた。世界のトヨタと呼ばれる自動車産業とその関連産業の振興は矢作川の水によってもたらされた、と言ってもよいだろう。

 このように見てくると矢作川の水利用は、水と食糧とエネルギーの三位一体で考えることが重要であろう。
 しかし、昭和40年代、経済発展に伴って、矢作川は水質悪化を招くが、矢作川水質保全対策協議会、矢作川をきれいにする会の発足により、次第に水質改善がなされてきた。

◇ 2. 矢作川の流れ

 中部建設協会豊橋支所編「川と人矢作川−矢作川改修六十周年記念誌」(建設省豊橋工事事務所、平成5年)より、次のように引用する。
 「矢作川は、その源を中央アルプス南端長野県下伊那郡大川入山に発し、根羽川、名倉川を扇状に集め、愛知、岐阜県の山岳地帯を段戸川、明智川等の諸支川を左右に集め巴川を合流するところより、西三河平野に出て、乙川を合わせて南下し、慶長年間に開削された矢作新川と矢作古川を分流して三河湾に注ぐ。その流域は長野、岐阜、愛知三県にまたがり、幹線流路延長117q、流域面積1 830km2であり、そのうち山地面積89%、平地面積11%である。
 矢作川はその流域に豊田市、岡崎市、安城市、西尾市、碧南市等を中心とする西三河地域一帯の重要区を包含し、社会、経済、産業、文化の基礎をなしており、これらの地区は内陸工業地帯、臨海工業地帯として発展している」

 平成14年における矢作川の流量(岩津地点)は、最大897.80m3/s、平水11.59m3/s、最小3.82m3/s、平均18.09m3/sとなっている。


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