公共事業を進める上で土地が必要になった場合、土地を買収し、建物や施設があればそれを移転・除却するなどの必要が生じますが、これに伴って土地などの権利者に補償することを用地補償といいます。また、補償のために必要な測量・調査、補償金額の算定、説明と交渉、契約の締結、補償金の支払などの一連の手続きを含めて用地補償ということもあります。 用地補償は、個人や企業の土地建物などを対象としたものと、公共的施設を対象としたものとに分けることができ、前者は一般補償、後者は公共補償と呼ばれます。
■一般補償 個人や企業の土地建物などを対象とした用地補償です。土地の補償、借地権の補償、建物の補償、建物移転に伴う経費の補償、立木の補償などがあります。また、特殊なものとして少数残存者補償などもあります。 一般補償の基準としては、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年閣議決定)があり、補償の対象、補償の仕方、額の算定などの基本的な基準が示されています。国、地方自治体などは、公共事業を実施する際には、これによっていることになっています。
■公共補償 例えばダムを建設するために道路が水没するといったときのように、公共的施設を対象とした補償です。 公共補償については、「公共用地の取得に伴う公共補償基準要綱」(昭和42年閣議決定)があり、基本的な基準が示されています。一般補償との大きな違いとしては、一般補償が財産的な価値を補償するという考え方を基本としているのに対して、公共補償については、対象が公共的な施設であるために、その機能が失われると利用者に支障を生じさせることになるので、機能の維持ができるようなレベルの補償を行うという考えを取り入れている点です。例えば、ダム建設の際に水没する道路に替わってつけ替え道路が建設されるのは、財産価値の補償ではなく、道路機能の維持の観点からの公共補償です。
■大規模ダムの用地補償 大規模ダムの場合、権利者が多数に及ぶこと、広い地域が水没すること、地域社会自体が失われることが多いことなどから、通常の公共事業の用地補償の進め方とは異なって、いわば集団交渉方式ともいうべき方式で行われることが一般的です。 ダムの建設計画が知られるようになると、建設予定地の住民、土地所有者などが「○○ダム対策協議会」といったような住民団体を組織することが多く、ダム建設主体とこの団体との間で、計画などの話し合いが行われることがよく見られます。用地補償も、この枠組みの中で、ダム建設主体が団体との間で説明・交渉、調査、測量などを行い、最終的には、「補償基準」と呼ばれる文書がまとめられ、内容が合意されれば調印が行われます。これを補償基準の妥結と呼ぶことがあります。補償基準の内容は、土地の区分とそれに応じた単価、建物の補償金の計算方法など、どのような補償が行われるかについての具体的な基準です。補償基準の調印後に、ダム建設主体と各権利者との間で個別具体の補償交渉が行われ、契約、補償金の支払いなどが行われることになります。 また、生活再建措置が広範に実施されること、しばしば集団移転地の造成が行われることなども大規模ダムの特徴的な点です。
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