ダム事典[用語・解説](ページ:20)

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用地補償 (ようちほしょう)
 公共事業を進める上で土地が必要になった場合、土地を買収し、建物や施設があればそれを移転・除却するなどの必要が生じますが、これに伴って土地などの権利者に補償することを用地補償といいます。また、補償のために必要な測量・調査、補償金額の算定、説明と交渉、契約の締結、補償金の支払などの一連の手続きを含めて用地補償ということもあります。
 用地補償は、個人や企業の土地建物などを対象としたものと、公共的施設を対象としたものとに分けることができ、前者は一般補償、後者は公共補償と呼ばれます。

■一般補償
 個人や企業の土地建物などを対象とした用地補償です。土地の補償、借地権の補償、建物の補償、建物移転に伴う経費の補償、立木の補償などがあります。また、特殊なものとして少数残存者補償などもあります。
 一般補償の基準としては、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年閣議決定)があり、補償の対象、補償の仕方、額の算定などの基本的な基準が示されています。国、地方自治体などは、公共事業を実施する際には、これによっていることになっています。

■公共補償
 例えばダムを建設するために道路が水没するといったときのように、公共的施設を対象とした補償です。
 公共補償については、「公共用地の取得に伴う公共補償基準要綱」(昭和42年閣議決定)があり、基本的な基準が示されています。一般補償との大きな違いとしては、一般補償が財産的な価値を補償するという考え方を基本としているのに対して、公共補償については、対象が公共的な施設であるために、その機能が失われると利用者に支障を生じさせることになるので、機能の維持ができるようなレベルの補償を行うという考えを取り入れている点です。例えば、ダム建設の際に水没する道路に替わってつけ替え道路が建設されるのは、財産価値の補償ではなく、道路機能の維持の観点からの公共補償です。

■大規模ダムの用地補償
 大規模ダムの場合、権利者が多数に及ぶこと、広い地域が水没すること、地域社会自体が失われることが多いことなどから、通常の公共事業の用地補償の進め方とは異なって、いわば集団交渉方式ともいうべき方式で行われることが一般的です。
 ダムの建設計画が知られるようになると、建設予定地の住民、土地所有者などが「○○ダム対策協議会」といったような住民団体を組織することが多く、ダム建設主体とこの団体との間で、計画などの話し合いが行われることがよく見られます。用地補償も、この枠組みの中で、ダム建設主体が団体との間で説明・交渉、調査、測量などを行い、最終的には、「補償基準」と呼ばれる文書がまとめられ、内容が合意されれば調印が行われます。これを補償基準の妥結と呼ぶことがあります。補償基準の内容は、土地の区分とそれに応じた単価、建物の補償金の計算方法など、どのような補償が行われるかについての具体的な基準です。補償基準の調印後に、ダム建設主体と各権利者との間で個別具体の補償交渉が行われ、契約、補償金の支払いなどが行われることになります。
 また、生活再建措置が広範に実施されること、しばしば集団移転地の造成が行われることなども大規模ダムの特徴的な点です。

横継目 (よこつぎめ)
打継目

余水吐 (よすいばき)
 洪水吐と同義で使われることもあるようですが、特に発電用施設については、施設の停止時や使用水量以上の流入時に取水を河川に戻すための施設をこう呼びます。

予備放流 (よびほうりゅう)
 洪水が予想される場合に、制限水位又は常時満水位に水位を保持していた場合でも、必要な洪水調節容量を確保するために貯留水を事前に放流し、一時的に一定の水位(これを予備放流水位といいます)まで下げることをいいます。予備放流により確保することができる容量を予備放流容量といいます。

予備放流水位 (よびほうりゅうすいい)
予備放流

予備放流容量 (よびほうりゅうようりょう)
予備放流

余盛 (よもり)
 土や岩石を盛り立てして構築するロックフィルダムアースダムは、施工中と完成後に徐々に沈下が進みます。それを見越して設計断面を確保できるように、盛り立て高さを高くすることを余盛といいます。

ラジアルゲート (らじあるげーと)
ゲート

ラニーニャ現象 (らにーにゃげんしょう)
 太平洋東部赤道域のペルー沖から日付変更線にかけての広い海域で、海面水温が平年に比べて低い状態が半年〜1年半程度継続する現象をこう呼びます。世界各地の異常気象の原因の一つといわれます。逆に、高いときは、エルニーニョ現象といいます。

ラビリンス型自由越流頂 (らびりんすがたじゆうえつりゅうちょう)
 コンクリートダム非常用洪水吐越流部頂部やフィルダム洪水吐越流部頂部が、通常の直線構造ではなく、ラビリンス型(ジグザグ型)となっている構造の自由越流頂をいいます。通常の直線型越流頂に比べて、越流頂の形状を複雑化してその長さを長くすることで越流量を増やす方式です。苫田ダムで採用されました。

ラフテレーンクレーン (らふてれーんくれーん)
ホイルクレーン

利水容量 (りすいようりょう)
ダム計画上の水位と容量

リッパ (りっぱ)
 トラクタなどの後部アタッチメントとして、軟岩の掘削、抜根などの作業に使用する大型の爪(シャンク)状の装置。3本程度を並列させたマルチシャンク形が多い。(→知識を深める:建設機械コレクション(5)〜土工作業に

リップラップ (りっぷらっぷ)
 フィルダム堤体を保護するために、堤体の一番外側を覆うように施工するロック材。上流部側では貯水池からの波から堤体を守り、下流側では堤体保護の他に、景観的な意味合いもあります。
 500mm〜1000mmの岩を丁寧に並べ、さらにその隙間を小さい石で間詰めします。


徳山ダム(撮影:Dam master)


リフト (りふと)
@エレベータなど、人や物を上下に運搬する装置の総称。
A一度に連続して打設するコンクリートの高さ。コンクリートダムの場合、1.5m程度の高さを1リフトとして、下から1リフト毎にコンクリートを打設していきます。

リフトスケジュール (りふとすけじゅーる)
 コンクリートダムの本体打設の際のコンクリート打設工程計画のことです。コンクリートダムを建設する際、堤体をいくつかのブロックに分割し、それぞれのブロックを一定の高さのリフトで打設していきますが、その工程計画です。(→知識を深める:ダム建設定点観測(四川ダム)

リムグラウチング (りむぐらうちんぐ)
グラウチング

リムトンネル (りむとんねる)
 リムグラウチングの作業のため、堤体上面横の山に掘った小型トンネルをリムトンネルと呼びます。幅 2メートル、高さ 2.5メートル程度の断面積で、奥行きは一般に数十メートルほどです。

流域面積 (りゅういきめんせき)
 分水界によって囲まれる区域の面積。集水面積と同じ意味に使われることもあります。

流下断面 (りゅうかだんめん)
河積

流木止め (りゅうぼくどめ)
 貯水池内に入り込んできた流木などをせき止めるネットのことです。流木などからゲートなどダムの設備を守ります。網場(あば)ともいいます。
 ふつう約 2mごとに浮力をもった樹脂製フロートが配置され、これに渡された高強度のメインロープの下に 2m丈程度の網がぶら下がり、その下には重りとして太い鎖などが取り付けられています。

量水板 (りょうすいばん)
 河川の護岸や橋、あるいはダムに取り付けられた水位を目視で測るための目盛り板のことです。最近では、水位は自動測定器で計測伝送しますが、量水板は誰でも見れば分かるという長所があります。

ルジオン値 (るじおんち)
 地盤が高い水圧の作用下にあるときの水の通しやすさを評価する指標です。通常、土木工学では水の通しやすさを透水係数(cm/sec)という指標で評価しますが、ダムは高い水圧の下で使用されるので、ルジオン値(Lu)という特殊な指標を使用します。
 ルジオン値はルジオンテストという方法で求められ、ボーリングで作られた穴に1Mpaの水圧をかけて、その際に穴1mあたり、一分間に地盤に浸透する水の量(リットル)をルジオン値といいます。通常コンクリートダムの地盤は2ルジオン、ロックフィルダムの地盤は2から5ルジオン程度になるまでセメント注入などで改良します。

冷水・温水現象 (れいすいおんすいげんしょう)
 貯水池内の表層水は、春から秋にかけて、太陽輻射などにより暖められ、温かい水の層が形成されることがあります。そして、水温成層と呼ばれる垂直方向の層が形成され、暖かい流入水は表層に流れ込み、下層は冷たいままで維持されます。このような現象を冷水・温水現象と呼びます。
 このような現象が起きると、ダムの放流口が中・低層にあると放流水の水温が低くなり、下流河川の生物や農業などに悪影響が生じることがあり、逆に、表層水を取水している場合には、放流水が流入水よりも高温となることがあります。

冷水現象 (れいすいげんしょう)
冷水・温水現象

レーキング (れーきんぐ)
 フィルダムの盛立ての際に、土砂などの材料を撒出した後に締固めますが、その締固め面が平滑になると、そのままではその上の層との間で不連続面ができるなどの不都合が生じることがあります。このため、上の層とのなじみをよくするよう、締固め面をレーキ(熊手状の用具)で表面をかき起こしますが、これをレーキングといいます。人力による場合も、ブルドーザーに大きな熊手状の装置を装着した機械(レーキドーザーと呼ばれます)によることもあります。(→知識を深める:建設機械コレクション(5)〜土工作業に

レディーミクストコンクリート (れでぃーみくすとこんくりーと)
 コンクリート製造設備を持つ工場で、一定の品質管理の下で製造され、打設現場まで運搬されるフレッシュコンクリート。生コンクリート、生コン、レミコンなどと呼ばれることもあります。

レミコン (れみこん)
レディーミクストコンクリート

レヤ工法 (れやこうほう)
 ブロック工法縦継目横継目によっていくつかのブロックに分割してコンクリート打設するのに対し、縦継目を設けずに横継目のみによってブロックに分割してコンクリートを打設する工法です。ブロック工法がブロック間の高低差を2リフト〜8リフト(3m〜12m)設けながら打設しているのに対し、高低差を設けずに1リフト差のまま打ち継いでいきます。拡張レヤ工法と区別するため、柱状レヤ工法、あるいはブロックレヤ工法と呼ばれることもあります。
 ブロック工法とともに、従来工法に分類されます。(→日本のダム:コンクリートダムの工法

連続地中壁 (れんぞくちちゅうへき)
地中連続壁

ローダ (ろーだ)
トラクタショベル

ローダム (ろーだむ)
ハイダム、ローダム

ロードヘッダ (ろーどへっだ)
 自由断面トンネル掘進機のことですが、最初に導入された商品名がロードヘッダだったために、こうも呼ばれます。
 断面の形が任意の岩石トンネルを掘るための機械です。先端に掘削ヘッドがついていて、これを回転することによって岩石を掘り進みます。(→知識を深める:建設機械コレクション(8)〜孔をあける

ローラゲート (ろーらげーと)
ゲート

ロック (ろっく)
 岩石のこと。ロックフィルダムでは堤体の材料に使われます。

ロックフィルダム (ろっくふぃるだむ)
ダムの種類

ロックボルト (ろっくぼると)
 岩盤に構造物を固定したり、岩盤の崩れを防ぐためなどに使われている岩に打ち込むボルトです。

ロッドミル (ろっどみる)
 骨材を細かく砕いて砂を造る機械。円筒形のドラムの中に回転軸方向に多数の鋼棒と水を入れ、ドラムを回転させて骨材を砕きます。
 棒の本数、一度に投入する砂の量により粒度を調整できます。

脇ダム (わきだむ)
 ダムは通常河川を締め切って建設されますが、その貯水池の機能の維持などのために、そのダムとは別に貯水池周辺に比較的小さなダムを建設する場合があり、それを脇ダムと呼ぶことがあります。

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