◇ 3. 矢作川のダム開発史
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矢作川のダム建設(堤高15m以上)は明治以降、平成11年までに17基に及んだ。 新行紀一監修「定本矢作川」(郷土出版社・平成15年)、愛知県豊田土木事務所編・発行「矢作川」(平成3年)、日本ダム協会編・発行「ダム年鑑2007」(平成19年)、各ダムのパンフレット等により、次のように追ってみた。
【なお、各ダムの表記は河川名、起業者、型式、目的、堤高、総貯水容量の順で、A:アーチダム、E:アースダム、G:重力式コンクリートダム、R:ロックフィルダム、F:洪水調節、農地防災、N:不特定用水、河川維持用水、A:灌漑用水、W:水道用水、I:工業用水、P:発電用水を表す。】
(1) 明治期
明治13年 明治用水の竣工 碧南台地の開拓始まる 官営愛知紡績所(岡崎市)の設置 明治17年 寺島用水、吉良用水、将監用水の開削 明治22年 大雨、矢作川の堤防決壊死者876名 明治23年 枝下用水の竣工 明治30年 岩津発電所(郡界川)の竣工 明治33年 川下発電所の竣工 明治34年 明治用水頭首工の竣工 明治35年 矢作川漁業保護組合の設立 明治40年 水車による磨砂、石粉業(藤岡村)で盛える 明治41年 盛岡発電所の竣工 明治44年 東大見発電所の竣工
(2) 大正期
大正3年 賀茂発電所の竣工 大正4年 明治用水、根羽造林地の植林開始 大正5年 明治用水、魚道設置 巴川発電所の竣工 大正8年 足助発電所の竣工 大正9年 白瀬発電所の竣工 大正10年 飯田洞発電所の竣工 大正11年 押山洞発電所の竣工 大正12年 豊田紡織の設立 時瀬発電所の竣工 真弓発電所の竣工 大正14年 上村発電所の竣工 大正15年 豊田自動織機製作所の設立 明治用水、枝下用水の合併 発電用百月ダム(堤高14.41m)の完成 岩倉用水の取水を兼ねる
(3) 昭和初期(昭和元年〜昭和20年)
昭和2年 島発電所の竣工 昭和4年 越戸ダム(矢作川)の完成(中部電力) G P 22.8m 287.6万m3 越戸ダム、枝下用水頭首工を兼ねる ダムの完成によって、矢作川の舟運終わる 山の神池(飯野川)の竣工(藤岡町) E A 15m 0.6万m3 昭和7年 昭和池(飯野川)の竣工(藤岡町) E A 17m 9.6万m3 大雨洪水、死者県下25名 昭和8年 力ヶ入池(広田川)の竣工(野場地区) E A 19.0m 3.5万m3 岡崎市上水道通水 矢作川国直轄河川となり、改修工事開始 昭和9年 柳沢池(飯野川)の竣工(藤岡町) E A 36m 0.3万m3 黒田発電所の竣工 昭和10年 明智川発電所の竣工 発電用の阿摺ダム(堤高14.99m)笹戸ダム(堤高6.5m)の竣工 ダム完成によって材木の筏流し終わる 昭和12年 ユニチカ工業用水の取水口完成 昭和13年 トヨタ本社工場の完成 昭和18年 大井池(広田川)の竣工(大井池土地改良区) E A 31m 80.6万m3 昭和19年 東海大地震 昭和20年 三河地震
(4) 昭和中期(昭和21年〜昭和40年)
昭和21年 新池(飯野川)の竣工(藤岡町) E A 15m 1万m3 昭和22年 矢作川農業水利事業着手(〜昭和38年) 昭和24年 山の神中池(飯野川)の竣工(藤岡町) E A 18m 0.2万m3 昭和25年 矢作川漁業協同組合の設立 昭和26年 平板新田干拓の完成 昭和28年 台風13号の高潮、前浜新田等の堤防決壊 昭和32年 国営碧南干拓事業の完成 昭和33年 明治用水新頭首工の完成 碧南市(矢作川水源)上水道の完成 昭和34年 伊勢湾台風県下の死者3 168名 矢作川の白濁化進む 挙母市から豊田市へ変更 豊田市(矢作川伏流水)上水道の完成。 一色町(矢作古川水源)上水道の完成。 昭和36年 西尾市(矢作川伏流水)上水道の完成 集中豪雨、岡崎市など浸水 昭和37年 吉良町(矢作川伏流水)上水道の完成 羽布ダム(巴川)の完成(農林水産省) G A 62.5m 1 936.3万m3 矢作川第二農業水利事業着手(〜昭和54年) 昭和40年 美矢井橋(8代目)の完成
(5) 昭和後期(昭和41年〜昭和63年)
昭和42年 干ばつおこる 昭和43年 明治用水を枝下用水に分離 細川頭首工の竣工 昭和44年 矢作川沿岸水質保全対策協議会(矢水協)の設立 矢作川淡水魚種苗センターの設立 昭和45年 矢作川総合農業水利事業着手(〜昭和57年) 矢作川、越戸ダム上流にヘドロ化 昭和46年 矢作ダム(矢作川)の完成(国土交通省) A FNAWIP 100m 8 000万m3 矢作第二ダム(矢作川)の完成(中部電力) G P 38m 435.4万m3 台風23号襲う(死者1名) 矢作川流域開発研究会(矢流研)の発足 幸田浄水場(水道)の完成 昭和47年 47豪雨災害死者63名 岩倉取水工(水道、工業用水、農業用水)の完成 豊田浄水場(水道)の完成 昭和48年 一色町で矢作川をきれいにする会発足 明治用水、水路をパイプライン化工事着手 豊田市の12社、公害防止協定の締結 昭和50年 安城浄水場(工業用水)の完成 明治用水から工業用水も送水 昭和51年 豊田市で矢作川をきれいにする会の発足 西広瀬小学校矢作川の水質測定開始。 昭和53年 天神橋(3代目)の完成 矢作川水源基金の創設 昭和54年 矢作ダム選択取水設備の完成 昭和56年 富永ダム(富永川)の完成(中部電力) G P 32.5m 105.1万m3 黒田ダム(黒田川)の完成(中部電力) G P 45.2m 1 105万m3 琴沢調整池(矢作川)の竣工(農林水産省) R A 20.5m 7.4万m3 昭和57年 台風20号、矢作川堤防決壊51ケ所。 昭和61年 八幡調整池(八幡川)の竣工(農林水産省) R A 22.7m 6.6万m3 昭和62年 豊田市に初の下水処理場の完成 昭和63年 愛知環状線の発足 新幹線三河安城駅開業 米津橋(7代目)完成
(6) 平成期(平成元年〜平成15年)
平成元年 建設省、矢作川下流部の砂利採取全面禁止 平成3年 豊田市矢作川環境整備計画検討委員会発足 郡界橋(4代目)の完成 平成4年 近自然工法による古猟水辺公園完成。 平成5年 久澄橋(6代目)の完成 平成6年 豊田市矢作川研究所設立 大渇水、矢作ダム水系節水期間113日間 豊田市水道水源保全基金の創設 平成8年 矢作川漁協、天然鮎生活史の調査(3年計画) 平成9年 雨山ダム(雨山川)の完成(愛知県) G FNW 21.5m 25.1万m3 平成10年 矢作川河口堰建設休止 平成11年 木瀬ダム(木瀬川)の完成(愛知県) G FNW 33m 64.4万m3 笹戸ダム下流の夏季5ケ月間河川維持流量が従来の3.5倍の2.9m3/sとなる 平成12年 東海豪雨、矢作川観測史上最大の洪水 平成14年 矢作川学校開校 国土交通省「矢作川水系矢作川浸水想定区域図」を公表 平成15年 国土交通省、第1回矢作川流域委員会開催 矢作川漁協「環境漁業宣言」採択
以上、矢作川におけるダムは17基みられるが、続いて、矢作ダム、雨山ダム、木瀬ダムの建設について、具体的にみてみたい。
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