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《ダム建設功績者表彰受賞者からのメッセージ》
ボランティアネットワーク しゃくなげ湖畔を楽しむ会

会長 石坂 浩
 
1.はじめに

 この度、私たちの活動が(財)日本ダム協会の「第29回ダム建設功績者表彰」において、環境保全と美化並びに地域の発展に寄与したということで表彰を賜り心から感謝申し上げます。

 私たち「しゃくなげ湖畔を楽しむ会」は三国川ダム周辺の素晴らしい環境や施設をさらに有効活用し、「地域の活性化」や「人づくり」につないでいく事を目的とした「三国川ダム水源地域ビジョン」(2002年〜2003年策定)を推進する組織として2004年に設立致しました。

2.組織の立ち上げ

 当時、私は(社)雪国青年会議所の理事長として「三国川ダム水源地域ビジョン」の策定に関わらせていただいておりました。そしてビジョンの完成後、「ビジョンは出来たけど、誰がやるの?」という問題が策定委員会において話し合われました。

 ダム完成当時から三国川ダム周辺の環境整備や施設の運営を行っている財団法人しゃくなげ開発公社が推進組織として真っ先に名前が上がったのですが、開発公社の理事長より「このビジョンを推進するには若くて元気な新しい考え方ができる人でなくてはならない」という意見があり、策定委員会の中で一番若かった私が、組織の設立をメンバーより付託されました。

 設立にあたり、まず考えたのが組織の会員をどうするかです。策定委員会のメンバーには市長をはじめ大学教授、三国川ダム管理所長、(財)しゃくなげ開発公社理事長、北陸建設弘済会所長など、私からすると雲の上の方々ばかりであり会員として活動するには多忙で難しいと思われる方が多く、当初は私が有志を募るしかないと考えていました。しかし、私が有志を募り組織を立ち上げたとしても、三国川ダムという国土交通省や南魚沼市などが管理するエリアの特殊性を考えると民間ボランティアだけの活動では様々な規制や制約があり活動に限界があると考え「これは、民だけでなく官も一緒に巻き込む必要がある」と思い、あえて策定委員会のメンバーにも活動する会員として参加をお願いし、また、私が若い有志を募り、二十数名の会員でスタートする事になりました。

3.活動するために組織の方向性を決定

 活動を開始するに当たり、組織の基本方針が話し合われました。その結果、以下のテーマと基本方針に基づいて「三国川ダム水源地域ビジョン」を推進する事に決まりました。

*テーマ:「もっと楽しく、もっと元気に、心のふるさと水源郷」
*活動基本方針
@民間ボランティア主体のまちづくり
Aボランティア団体のサポート
B「まちづくりは人づくり」社会起業家の育成

 このテーマと活動方針に沿った事業であれば、どんな事業でもOKとし自由に事業について話し合いました。


スタッフ会議の様子
4.事業はみんなが楽しく参加する

 設立から7年を迎えた今年は、全部で9つの事業を予定しております。設立当初は事業数も少なく、参加者も少なかったのですが、他のボランティア団体とも協力し、年々事業数と参加者が増えてきました。

 会の名前でもある「楽しむ」という事が全ての事業で体感できる事業です。雪消えの5月から初雪の11月まで9つの事業を行うのですが、どの事業も参加者の笑顔があり、「良い事をした」という達成感と一体感が生まれる事業です。中でも3年前からはじめた「三国川ダム貯蔵酒事業」は地元の酒蔵のご協力やダム管理所のご理解をいただき、日本で初めて、ダムの地下100メートルに地酒を貯蔵することが出来ました。春に「蔵入れ」を行い初冬に「蔵開き」と「お披露目会」を行う事業で、参加人数も年々増えて多くの方々に喜んでいただいております。

<事業紹介>

@ 5月 新緑ウォーク

A 5月 三国川ダム貯蔵酒事業「蔵入れ式」

B 6月 2009国体ロードレース環境整備事業「花の道造り」

C 7月 しゃくなげ湖祭りブース出展「子供広場」

D 8月 イベント「山菜」(500名以上の若者が参加・会ではマナーを指導)

E 8月 野外学習(地元小学生)

F 10月 紅葉ウォーク

G 11月 三国川ダム貯蔵酒事業 「蔵出しお披露目会」

H 11月 花の道造りプランター片付け

5.事業費や運営費は参加者と会員が負担するのが原則

 私たちの会の運営費や事業費は基本的に参加者と会員でまかなう事を原則としています。会員の年会費は1万円、参加者の参加費は基本的に500円くらいを目処にしています。
 もちろん、この予算で全てまかなえるわけではありません。花植えの苗や肥料の費用、貯蔵酒のお酒、ブース出展「子供広場」の費用などは、地元企業をはじめ、各種団体や行政からそれぞれの事業ごとにご支援をいただき行われています。

 中でも先ほどご紹介をした「三国川ダム貯蔵酒事業」では地元の酒蔵より、当会にお酒を寄贈していただき、「お披露目会」にて参加者から飲食代として参加費をいただきます。その一部を参加者のご理解のもと翌年の花植え代に充てる、というように事業を継続するための事業費のサイクルが出来ており、また、そのお披露目会において当会の年間活動報告を行う事で、今後のご理解とご協力をお願いしております。

6.無理をせずに継続する

 会を運営するにあたり、設立当初から「無理をしないで継続をしたい」という事に気をつけて運営を行ってきました。そのため私たちが行う事業は会員や参加者が「手弁当で出来る事業」を基本としています。もちろん先ほど述べたように多くの方々のご支援を頂いてはいますが、無理のない範囲での事業を行う事を基本としているため「やらなければいけない」というようなストレスが無く会員だけでなく参加者からも「良い事業だ」「また参加したい」という評価を頂いています。

 それでも昨年は三国川ダム周辺が「新潟トキめき国体自転車ロードレース会場」として使用された事もあり、行政・団体のご支援をいただき「花の道づくり事業」では1000個のプランターを地域の方々五十数名で植えてロードレースコースに設置することが出来ました。三国川ダムの急勾配の道路に応援の花を設置し、国体選手の皆さんにも喜んでいただきました。

7.三国川ダムは安心して身近に自然を楽しめる場所

 私たちの南魚沼地域は「山あり川あり」の自然環境が豊かな地域ですが、自然を身近に体感するとなると、登山靴や長靴が必要であり、危険な場所などもあることから簡単な話では無くなります。しかし、その点三国川ダム周辺は運動靴をはいてベビーカーの子供連れからお年寄りまで危険なく十分に四季折々の素晴らしい景色を身近に楽しむ事が出来ます。

8.自然環境が豊かな場所だから人材育成に最適

 私たちは三国川ダム周辺を活用した事業を通して社会に貢献できる「人材育成」を行う事を基本方針の一つとして活動を行っています。昨年、地元の住民の方々が独自にダム周辺の環境美化のため雑草地の草刈りと花植えのための土づくりをボランティアではじめられました。

 設立から7年目になる私たちの会ですが、どの事業も地元の住民の方々のご協力のおかげで本当に良い事業をさせていただいています。しかし、昨年、地元の方々が独自に活動をはじめた事を聞いた時、私たちの会の活動の意義と目的を地元の方々に認めていただいたと思い本当に嬉しかったです。
 豊かな自然環境の中で活動することで、参加者が自然を体感しながら本当に気持ち良く活動しており、その効果は大きく地域の和合や人材を育成する場所として最適だと考えます。

9.大きすぎる三国川ダムに投げ出したくなった事も

 会の設立当初、ダム湖を1周すると8qもある巨大施設を地域の観光スポットとして「どうすれば目でわかるような活性化をする事が出来るのか」いろいろ話し合われました。そんな時、2004年10月23日に中越地震が発生し南魚沼地域も甚大な被害に見舞われました。

 その翌年、震災復興祈願「フェニックス花火」が長岡で打ち上げられ、被災にあわれた方々に勇気と感動を与えてくれました。2006年に私たちの会でも三国川ダムに「震災復興祈願でフェニックスの形をした花畑を作ろう」という事業を行う事になり(社)雪国青年会議所と協力して花植え事業を行いました。その後もダム周辺のいろんな場所に花植えを行いました。

 しかし、ダムという巨大施設のため、私たちが行った花植えで、ダムの景色が変わるような事は無く、数百株の花植えをしても、その花を植えた場所は全然目立たなく「どこに植えたの?」と言われるほどでした。他のボランティア団体は街中の公園に素晴らしい花畑を作っているのに、私たちの会はその何倍も花植えをしても全然目立たない結果に、「三国川ダムは大きすぎて、いくら頑張っても無理」と思うようになり、途中で断念したくなりました。花植えに参加していただいた方々には、どこに植えたか分からないほどの結果に申し訳ないと言う思いもあり、花植え事業をどうするか話し合いを行いました。

 そこで今までの反省を踏まえ、地表に直に植えては目立たないから、プランターに植えてダムの周遊道路に設置する方法で花植えを行う事になりました。プランターにした結果、景観が変わりました。プランターのため新たに毎日「水やり」を行う必要が出てきましたが、それは、地元住民、ダム管理所、開発公社がそれぞれ分担して行う事で解決しました。

 現在私たちは三国川ダムを、豊かな自然環境のもとで事業を通じて人材育成を行う事が出来る場所と考えています。

10.最後に

 今までいろんな紆余曲折はありましたが、参加する方々はいつも楽しそうに笑顔で参加していただき、その笑顔が私たちの原動力であったと思います。一時は結果を出す事にこだわり大きすぎる施設に投げ出したくなった事もありましたが、それも話し合いと行動で乗り越えてきました。

 近年、ダム不要論などの報道がなされ、いろんな方々のご意見を聞く機会がありますが、私たちの会では三国川ダム建設のために長年努力された地元の方々や建設に携わった方々に心から感謝し、今後も地域の財産として活用させていただきます。そして多くの皆さんに三国川ダムの素晴らしさを体感していただけるように頑張っていきます。

 終わりに、(財)日本ダム協会をはじめ、(財)ダム水源地環境整備センター並びに関係各位のご理解とご協力に感謝申し上げます。

(これは、「月刊ダム日本」に掲載された記事の転載です。)

[関連ダム]  三国川ダム
(2010年4月作成)
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