《このごろ》
WEBサイト『うおぬまダム周遊マップ』が公開されました
〜ダム趣味とダム観光の橋渡しを目指して〜

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◆はじめに

新潟県魚沼市ではこのたび、WEBサイト『うおぬまダム周遊マップ』(http://uonuma-dam.com/)を公開しました。
本稿ではこのWEBサイトを監修した立場から、サイトの内容と構成、今後の課題について述べてみたいと思います。


◆WEBサイト『うおぬまダム周遊マップ』について

新潟県魚沼地域振興局では、2015年に『うおぬまダム周遊MAP』の作成とモニターツアーを実施、2016年に同地域振興局が「うおぬまダムスタンプラリー2016」を実施しました。2017年には雪のある時期の見学ツアーと、地域振興局の事業を引き継ぐ形で魚沼市がスタンプラリー事業を行いました。(ツアー等については、「魚沼市内ダム施設周遊モニターツアー」を実施しました〜地域資源としてのダム〜及び、魚沼「雪ダム。」ツアーを実施しました〜ダムを通じて地域を知る〜をご参照ください)

このWEBサイトは上記の経過を踏まえ、2015年に新潟県魚沼地域振興局が発行した『うおぬまダム周遊MAP』を基にして、新潟県魚沼市内にあるダム施設等の魅力を発信するとともに、ダム等を来訪する観光客の周遊性を高め、自然・食を通じた地域経済の活性化を目的として作成したものです。(「うおぬまダム周遊MAP」については、「うおぬまダム周遊MAP」が完成しましたをご参照ください)

サイトには、「魚沼市内のダム」、「おすすめルート」、「食べる」、「ダムカード」、「ダムの知識」の5つの項目があります。以下でトップページと各項目について紹介します。


【トップページ】
トップページ

サイトのデザインは子供でも楽しめるようなポップなものにしました。トップページには歩いている3人の親子連れが配置されています。これは、テレビドラマ「勇者ヨシヒコシリーズ」のエンディングをイメージし、冒険に向かう様を表現したものです。


【うおぬまダム】
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この項目では、魚沼市にある奥只見ダム、広神ダム、薮神ダム、黒又ダム、黒又川第一ダム、破間川ダム、道路が閉鎖されて行けない黒又川第二ダムの7基のダムについて、それぞれのダムの見どころ解説と堤高などのデータ、ダムカードの情報、ダム現地での撮影ポイント、ダムの位置などが掲載されています。

 ダムカードについては、上記7基のダムでこれまでに発行されたカードを、イベント限定等で制作されたものも含めてすべての表面画像を掲載しています。各管理者の協力により、ダムカード裏面の「こだわり技術」と「ランダム情報」も掲載しました。また、それぞれのダムについて1分程度の紹介動画もあります。


【おすすめルート】
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この項目では、ダム巡りをする際のモデルルートを3種類掲載しています。
魚沼市の場合は大きく分けて東に向かう道路と、北へ向かう道路がありますので、それに合わせて2種類のルートを紹介しています。また、ダムカードを集める人のためのルートも合わせて載せています。


【食べる】
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「食べる」の項目では、主にダムカレーが食べられる店舗を紹介しています。
このうち奥只見ダムにある店舗では、店舗の窓から奥只見ダムを望むことができるのが特徴です。ダムを見ながらダムカレーを食べることができます。


【ダムカード】
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ダムカードの項目では、ダムカードがなぜできたのか、配布している場所などについて解説しています。
この項目ではダムカードの見方や記載情報を通じて、ダムの目的や色々な型式があること等について理解できるようにしました。カードの表面と裏面に記載されている情報の見方は『ダムカード大全集Ver.2』(スモール出版)より引用させていただいています。


【ダムの知識】
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ダムの知識の項目では、主として南北魚沼地域におけるダム建設のあゆみを簡単に解説しています。
 水力発電事業のはじまりから、発電量を増やすためにダムを建設していく過程、敗戦後の復興のために大規模な発電専用ダムが建設され、その後は多目的ダムの建設に移り変わっていく流れを実例に即して述べています。
ここで主眼としているのは南北魚沼地域を「事例として」、日本の電力事業やダム建設事業の大まかなあゆみを理解することです。

日本の電力事業は明治末期頃から昭和三十年代まで水力発電を主体として推移してきました。そのため、水力発電専用のコンクリートダムが多く建設されました。特に戦後復興期には電力需要の高まりから大規模な発電専用ダムが各地に建設されました。それと並行する形で、利水と治水をバランスよく実現するため多目的ダムの建設が主流となっていき、戦後になるとアースダムや重力式コンクリートダムだけでなく、アーチ式コンクリートダムやロックフィルダムなども多く建設されていきます。
 こうして日本の電力事業やダム建設の大きな流れを南北魚沼地域をモデルとして学ぶことで、他の地域でダムを見学する際にも、その地域のダムがどのような位置づけになるのか理解する助けとなるのではないかと思います。また、それぞれのダムを考えていくことで、ダムが立地する地域の特徴を理解することにもつなげていけると私は思います。


◆WEBサイトの構成

ここまで、WEBサイトの内容について紹介してきました。
 近年のダム趣味とそこから派生するダム観光の動向として、私は「写真」、「ダムカード」、「ダムカレー」、「ツーリズム」の四点に整理できるのではないかと考えています。
 その考えのもと、サイトを作るにあたっては、それぞれのダムについて理解を深めてもらうと共に、上記の四点に対応した構成としました。


【写真】

ダムの写真については、これまでに数冊のダムの写真集が出版されており、日本ダム協会やダム技術センターなどが主催している写真コンテストへの応募、『ダム便覧』や各SNSへの写真の投稿をしている人もいるなど、写真はダム趣味のジャンルの一つとみなすことができると思います。
 魚沼市観光協会でも、毎年開催している「魚沼市フォトコンテスト」(http://www.iine-uonuma.jp/play/eventlist/photocontest.html)に「地域を支える土木の底力部門」を設け、ダムや橋などの土木施設の写真を募集しています。昨年の同部門では「うおぬまダムスタンプラリー2017」の際に撮影された写真が入賞しています。
 そこで、新潟県魚沼地域振興局が発行した『うおぬまダム周遊MAP』及び、WEBサイト『うおぬまダム周遊マップ』では、それぞれのダムの撮影ポイントを記載しました。


【ダムカード】

ダムカードは2007年7月に、国土交通省と水資源機構が管理する111のダムで配布が始まりました。2018年4月には統一デザインのカードは約670種類にまで増えているようです。

 ダムカードの配布が、ダムに行く人が増加する契機となったのは多くの人が認めるところでしょう。統一デザイン以外のダムカードも多く、ダムカードの人気を受け、ダム以外の施設でもダムカードの体裁を模したカードを作成しているところもたくさん出てきています。また、昨年の矢木沢ダム・奈良俣ダムの点検放流の際に、みなかみ町の「ダムガイドの会」が発明した、ダムカード風の枠で記念撮影ができる看板が各地のダムで流行しているのも、ダムカードの普及によるものといえるでしょう。


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奥只見ダム大駐車場にあるダムカード風記念撮影用看板

ダムカードはコレクターも多く、バージョン違いなどにこだわる方もいらっしゃいます。このWEBサイトでは、サイト内で紹介している7基のダムについて、ツアーやイベントの景品として製作したダムカードも含めて、これまでに発行されたすべてのダムカードの画像を掲載しました。また、ダムカードの配布場所も記載し便宜を図ることとしました。

ダムカードは、ダムの役割を理解してもらうためのカード型パンフレットです。私としては、単に観光客を集めるためにダムカードやダムカードに似せたカードを濫発するのはあまり良くないことだと思っています。ダムカードはダムに行くきっかけ作りであり、ダムカードがなくてもダムに興味を持って見学に行く人がいる状態になるのが最もよいと思います。


【ダムカレー】

ダムカレーを提供する店舗は2009年頃から増え始めたといわれています。現在では全国で140種類以上のダムカレーが提供されているようです。
 このWEBサイトでは、ダムカレーを提供している店舗と、それらの店舗で提供されているダムカレーを写真で紹介しました。
 現状ではWEBサイトで扱っている地域でダムカレーを提供している店舗は3店舗しかないため、サイトのダムカレーの項目は物足りない感じが否めません。他のメニューの開発などが課題といえるでしょう。


【ツーリズム】

ツーリズムに関係しては、ダムを見学するとともに、途中で食事やお土産の購入などができるよう「おすすめルート」を設定しました。
 新潟県魚沼地域振興局が発行した『うおぬまダム周遊MAP』では、所要時間の記載はなかったので、WEBサイトの「おすすめルート」では、移動にかかるおおよその時間の目安も示しています。

近年は「インフラツーリズム」の一環としてダム見学ツアーなどが行われることがあり、ダムの点検放流などにも多くの見学者が集まるようになっています。点検放流に合わせて宿泊客を確保するための取組も群馬県等でなされています。
 しかしながら、このWEBサイトで扱っている地域では定期的な見学ツアー等は行われていませんし、点検放流をするダムもありません。ダムに興味がある人たちを対象とした宿泊プラン等もありません。

そこで、上で述べてきたような写真撮影、ダムカード、ダムカレーと周辺の観光施設等を結びつけるようなモデルルートをWEBサイトで示すことで、特別な見学ツアーや放流などがなくても、見学者が域内で周遊できるようにしました。(見学ツアーや放流がなくてもダムを回ってもらう方法として、2016年と2017年に「うおぬまダムスタンプラリー」事業を実施したことがあります。スタンプラリー事業は来訪者の数が具体的に把握できるものの、ダムカードの濫発につながっている面もあり見直しが必要と考えています。)

では、ダムを回ることで何がわかるのでしょうか?私はダムをまとめて見ていくことにより、ダムやダムが立地する地域への理解を深めることができると思います。そのためにWEBサイトに「ダムの知識」の項目を設けているのですが、「ダムの知識」で述べていることを前提として現地を見学することで、より理解が深まることを期待します。

このWEBサイトの意義としては、一定地域にあるダムとダムカレーなどをまとめて紹介した点が挙げられます。これまで、それぞれのダムの管理者ごとにWEB上でのダムの紹介等はありましたが、一定地域に存在する異なる事業者のダムをまとめて紹介するサイトはあまりなかったように思います。もちろん、『ダム便覧』は日本に存在するダムをほぼ網羅するサイトですが、ダムカレーの情報などまではありません。
一定地域に存在する異なる事業者のダムをまとめ、過去に配布されていたダムカードの画像やダムカレー、周遊ルートなどを示した点に本WEBサイトの意義が認められるものと考えています。



◆今後の課題

これまで、WEBサイト『うおぬまダム周遊マップ』の内容、構成について紹介をしてきました。WEBサイトについて一定の意義は認められるものの、課題もあります。

最大の課題は、サイトで扱っている範囲が一自治体の範囲のみとなっている点です。
先に、異なる事業者のダム等をまとめて紹介している点がWEBサイト制作の意義であると述べましたが、その範囲が特定の自治体の範囲だけになっている点は課題といえます。
 自治体の側としては、自らの町に観光客が留まってもらいたいという希望がありますが、観光客の側としては、わざわざ自治体の境界線を意識しながら行き先を決める必要はありません。
 WEBサイト作成は自治体の事業として行ったことですので、他の自治体の情報まで掲載するのは予算等の面からも難しいとは思いますが、観光客の目線に立ち、観光客の便宜を考慮すると、自治体の境界線で区切ってしまうのは聊か不便といわざるを得ません。

新潟県内で考えても、新発田市、三条市、柏崎市など非常に先進的な取組をしている自治体があります。また、「ひとつずつでは埋もれてしまう地域資源を発掘し、つなぎあわせ、磨き上げることで世界に通用する価値を生み出」すことを運営理念としている雪国観光圏には、魚沼市のほか、群馬県みなかみ町も構成自治体となっています。

 狭い範囲ではわからないことでも、広い範囲で考えることで、より立体的に地域の特色が見えてくることがあります。一自治体だけの目線ではなく、広い視野を持ち他の自治体や団体等との協力が不可欠といえるでしょう。


◆おわりに

観光に関わる分野で経済活動が見込める行為としては、大きく分けて「見る(見学)」、「する(体験)」、「食べる(食事)」、「買う(お土産)」、「泊まる(宿泊)」が挙げられます。(この他に、目的地まで行く「動く(交通)」もあります。)。

ダム趣味に即して考えると、「見る」は現地に行き写真を撮る、「する」はダムカードを貰う行為や監査廊見学等の特別な見学ツアーなどへの参加、「食べる」はダムカレーとなるでしょうか。「買う」と「泊まる」は、グッズ開発やイベント等に伴う宿泊プランなどが考えられると思います。
 ダム趣味がダムの観光へとつながっていく橋渡しを、このWEBサイトでできればと思っています。


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奥只見ダム大駐車場にある店舗二階に設けられた常設のダムかるた会場。
ダムかるたを「する」体験がいつでもできる(複数の人がいれば)。窓の外には奥只見ダム。

WEBサイトの「ダムの知識」でも述べましたが、魚沼地域はあくまでも単なる事例の一つにすぎません。どこの地域であってもそこにしかないもの、そこにしかない価値があります。ダムを通じて立地地域への理解を深め、地域の価値を見直す。このWEBサイトがその一助となれば幸いです。


(2018.5.30、ダムマイスター 04-051 目黒公司)
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 (目黒 公司)
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