[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]


■三峡ダムの計画

 三峡ダムは、1919年孫文が提唱して以来、その建設をめぐって長く激しい論争を重ねてきたが、1992年全国人民代表大会(以下「全人代」という。)で建設が採択され、1994年4月に着工された。第1期工事、第2期工事が完了し、現在、2009年の完成に向けて第3期工事が進んでいる。事業者は、中国国務院直属企業の「中国長江三峡工程開発総公司」である。

 科学雑誌Newton臨時増刊『帰らざる三峡』(ニュ−トンプレス・平成15年)によれば、三峡ダムの諸元について次のように記してある。


       三峡ダムプロジェクトの概要
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    ダム
            ダムサイ ト  湖北省宜昌県三斗坪
           建設予定期間  1993年〜2009年
            ダムの形式  重力式コンクリートダム
            堤体の高さ  185 メ−トル(通常水位175 メ−トル)
            堤体の長さ  2309.47 メ−トル
      右岸発電ブロックの長さ  584.2 メ−トル
        放水ブロックの長さ  483.0 メ−トル
      左岸発電ブロックの長さ  643.6 メ−トル
       コンクリ−トの使用量  2700万立方メ−トル
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    ダム湖
             貯水容量  393 億立方メ−トル
       うち洪水をためる容量  221.5 億立方メ−トル
               面積  1084平方キロメ−トル
               長さ  約 570キロメ−トル
             通常水位  標高 175メ−トル
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    発電所
            年間発電量  846.8 億キロワット時
            発電機の数  26基(6基増設計画あり)
          1基の発電能力  70万キロワット
            総発電能力  1820万キロワット
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    事業費
 総事業費(1993年5月時点の価格計算)900.9 億元
            うち工事費  500.9 億元
           うち補 償 費  400 億元
 物価変動や金利を考慮した総事業費  2039億元(1元=15円で、約3兆円)
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    その他
            水没する市  13市
            住民の移転  約113 万人
        水没する歴史的遺産  1208基
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   ◇

 三峡ダムは、長江の本流に建設され、貯水容量 393億m3、堤体の長さ2,309.47m、コンクリ−トの使用量 2,700万m3、年間発電量 846.8億kwhで、巨大な重力式コンク−トダムには驚嘆するばかりである。とくに、住民の移転 113万人は、富山県民 112万人に匹敵し、日本では到底考えられないことだ。

 ダムサイトの三斗坪地点は、硬い花崗岩で覆われた地盤が堅固で、両岸は低い丘陵地帯であるためダム建設に必要な後背地に恵まれ、また中洲の中堡島はダム建設に都合のよい足場となり、川幅が広く工事中の洪水処理がしやすい、という理由で決定された。

 三峡ダムの施工は、長江を片側づつ堰き止めて、川床を掘り返し、基礎固めを行い、3期に分けて実施中である。 

第1期工事(1993年1月〜1997年11月)
 1993年に準備工事、翌年12月14日本工事が始まった。先ず中堡島を利用して、長江を半分しめ切るための堤防を土や岩で建造し、右岸側を取り囲み、将来ダム本体を建造するための基礎工事となる細長いコンクリ−トの堤防を建造した。左岸側ではシップロックなどの航路の建造を開始した。

第2期工事(1997年11月〜2003年)
 土や岩で堤防を築き、左岸側を取り囲み、干上がった川床内で放流ブロックと発電ブロックのダム本体を建造し、14基の発電機が設置された。

第3期工事(2003年〜2009年)
 土や岩で堤防を築き、再び右岸側を取り囲み、ダム湖に水がたまりはじめ、左岸側の発電ブロックでは発電が開始される。左岸側のシップロックの運用も始まる。右岸側の干上がった川床では発電ブロックのダム本体を建造し、12基の発電機が設置される。完成後26基のすべての発電が運転を開始する。

 三峡ダムは、右岸側から順に「発電ブロック」、「放流ブロック」、「発電ブロック」、「シップリフ ト」、「シップロック」に分かれる。発電ブロックは、ダム内部を流れた水が発電機を回し、下部へ流れ出る。シップリフ トはエレベ−タ−方式によって船を上下させる。階段上のシップロックは岩山を掘ってつくられ、段の前後水位を同じにして船を移行させるもので、5段階の2本の水路からなる。2009年に全てが完成、巨大な建造物が誕生する。

[前ページ] [次ページ] [目次に戻る]
[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]