ダム事典[用語・解説](ページ:11)

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ダム (だむ)
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【「ダム」という言葉】

 ダムとは、河川などの水を堰き止めて、水を貯めたり、水位を上げたりするために建設される構造物のことです。例えば、広辞苑は、ダムとは「発電・利水・治水・保全などの目的で河海の水をためるために河川・渓谷などを横切って築いた工作物とその付帯構造物の総称」としています。なお、古くは「堰堤」と呼ばれていたようで、広辞苑にも堰堤はダムである旨の記述があります。
 一方、類似の施設として堰があります。ダムは高さが高く、堰はダムほどの高さはなく、横に長いといった感じがしますが、大規模な堰を想定すると両者の区別は必ずしも明確ではないように思われます。
 なお、日本語の「ダム」は、英語の Dam を、その発音をカタカナで日本語表記にしたものですが、英語のDamという言葉は、必ずしも高さの高いものだけを指すのではなく、高さの低い、日本では通常堰と呼ばれているようなものも含んでいるようです。
 また、国際的には、「大ダム」(large dam)という言葉が使われることがあるようで、例えば、国際大ダム会議(International Commission on Large Dams、1928年創立、世界85カ国参加)という国際的な組織があり、そこでは世界のダムをダム台帳に登録していますが、登録対象ダムは高さが15m以上と、高さが5m以上で貯水容量が300万m3以上のものになっています。

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【河川法などにおけるダムの取り扱い】

 河川法は、ダム、堰、水門、堤防などを「河川管理施設」とし、河川管理施設については、安全な構造のものでなければならないなどの規定を置いています。さらに、ダムのうち堤高が15m以上のものについては、これを「ダム」と定義して、水位・流量の観測や操作規定を定めることを義務付けるなど、特別の規定を置いています。また、河川管理施設等のうち主要なものの技術基準を定めている河川管理施設等構造令では、砂防ダム以外の堤高15m以上のダムについて、「第2章 ダム」で詳細な技術基準を定めています。
 このように、河川法の体系では、堤高15m以上のダムについて主要な構造物として特別な扱いがされています。このため、「ダム」を堰とは区別して明確に定義する必要がある場合などに、堤高15m以上のものをダムと呼ぶことがあります。例えば、(財)日本ダム協会発行の「ダム年鑑」では、「原則として堤高15m以上のもの」をダムとしています。
 なお、堤高15m以上のダムをハイダムと呼び、それ未満のものをローダムと呼ぶことがあるようです。また、国際的にも、高さ15m以上のものを「大ダム」(large dam)と呼んで区別することがあるようです。

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【ダムの語源】

 日本語の「ダム」は、英語の Dam を、その発音をカタカナで日本語表記にしたものです。
 中世ヨーロッパでは、ゲルマン、アングロサクソン地方の各地で、Dam という言葉の起源とも思われるさまざまな言葉が用いられていましたが、英語の Dam の直接の起源は、14世紀のオランダ語だといわれます。オランダは、国土の約四分の一が海面下の土地で、延々と続く堤防によって海水を堰き止めています。首都であるアムステルダムや第2の都市ロッテルダムの名前は、「アムステル川の堤防」、「ロッテ川の堤防」という意味です。これらの都市は、13世紀に建設されたものですが、当時オランダで、堤防という意味でダムという言葉が使われていて、やがてそれが英語になったもののようです。
 なお、英語のDamという言葉は、必ずしも高さの高いものだけを指すのではなく、高さの低い、日本では通常堰と呼ばれているようなものも含んでいるようです。

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【ダムの歴史】

(世界のダム)

 古代都市社会が発展するためには、安定的な食料生産が前提であり、灌漑用の水源としてダム建設が必要でした。世界四大文明発祥の地では、強力な権力者が存在し、大規模に労働力を動員することができたため、ダムの建設が可能でした。

 歴史上、文献に現れる世界最古のダムは、ヘロドトス著「歴史」に登場します。紀元前2900年代初期、第一エジプト王朝の創始者メネス王が首都を建設するために、堤高15mのダムを築造してナイルの流れを変えたとされています。しかしこれはダムではなく、堤防ではなかったのかといわれています。ダムと呼べるものとしては、カイロの南方で、エジプト・クフ王朝時代の紀元前2750年頃と推定されるサド・エル・カファラダムの遺跡があります。これを最古のダムとするのが現在の定説だといわています。このダムは、ピラミッド建設用石切場の労働者の飲料水を確保するために造られ、堤高11m、堤頂長106m、底幅84mと大規模なものであったようです。

 古代アラビアでは、シーバの女王で有名なサバ王国で、紀元前750年頃、首都マリブの町の給水のためマリブダムが建設されました。このダムは、世界で初めて洪水吐を備えたダムで、ダム技術史上画期的なものでした。マリブダムは2度の嵩上げが行われたようですが、その際洪水吐も石積み構造で嵩上げされています。

 中国では、紀元前240年頃、山西省のグコー川に堤高20mの当時としては世界最高のダムが建設されました。このダムは、14世紀末にスペインのアルマンサダムが完成するまで、1600年余りに渡って世界一高いダムであり続けました。

 ローマ人は古代の最も偉大な技術者だと言われています。ローマ人が、紀元前193年にスペインのトレドを征服したとき、この町の給水のため、堤高20mのアルカンタリアダムを建設しました。ローマ帝国の遺跡で知られるメリダの近くでは、130年頃に堤高19mのプロセピナダムが、またその後に堤高28mのコルナルボダムが建設され、これらは現在もなお使用されています。ローマ人はまた、北アフリカのチュニスの南西で、2世紀頃カセリンダムを建設しました。このダムは土砂と粗石でできたコアを持ち、表面は水硬性モルタル・漆喰で継ぎ目を固めた切石はめ込み積みでした。

 現存最古のアーチダムは、テヘランの南西で1300年頃に建設された堤高26mのケパールダムだと言われます。下流面が半径38mの円筒形をしているアーチダムで、蒙古人によって造られたようです。その100年ほど後に、スペイン人が建設したアルマンサダムは、下流面曲率半径25mのアーチダムでした。スペイン人はまた、1594年に堤高が41mに及ぶ、世界一の堤高のチリダムを完成させました。この堤高は300年に渡り破られませんでした。これもまた上流面曲率半径107mのアーチ状のダムでした。その後、エルシュダム(堤高23m、1632年着手)、レルダム(堤高28m)がスペイン人によって建設されましたが、これらはより薄肉断面のアーチダムでした。

 1747年に北スペインで建設されたアルブエラ・デ・フェリアダム(堤高23m)は、製粉用水車を回すための設備を備えており、世界初の動力用貯水ダムです。また、近代的バットレス技術が採用された最初の大ダムでもありました。
 1824年にイギリスでポルトランドセメントが発明され、ダムにもセメントが使用されるようになりました。これにより、重力式コンクリートダムやアーチダムが可能となり、イギリス、フランスを中心にダム技術大きな変革がもたらされました。19世紀後半、イギリスでは都市化が進展し、水需要をまかなうために各地にダムが建設されました。

 アメリカでは、1933年より始められたニューディール政策の一環として、各地でダムが建設されました。東部では、TVA(テネシー渓谷開発公社)が設立され、テネシー川総合開発が実施されました。多数のダムを建設し、発電、かんがい、洪水調節により、地域経済の発展を図ろうとするもので、大きな成果が得られました。西部では、コロラド川に大規模なフーバーダムが建設されましたが、このダムはダム技術の集大成ともいうべきダムで、以降の世界のダムモデルとして大きな影響があったといわれています。
 [世界ダムの歴史については、主として竹林征三著「ダムの話」によっています。]

(日本のダム)

 日本では古くから稲作が行われ、そのために洪水の危険の多い低湿地に移り住みました。洪水を防ぐとともに、稲作に必要な水を確保するために、溜池などの水を貯める工夫をしてきました。

 日本で最も古い溜池がどこかは厳密にはわからないようですが、大阪府の史跡・名勝に指定されている狭山池は、我が国最古の潅漑用のため池と言われることがあります。「古事記」や「日本書紀」にも記述がみられ、古くは行基や重源(ちょうげん、1120〜1206)により改修が行われ、江戸時代の初期には豊臣秀頼(1593〜1616) の命を受けた片桐且元(かたぎりかつもと、1556〜1615 )が大規模な改修工事を行うなど、多くの改修の記録が残されています。

 狭山池では、ダム化への改修工事が行われました。この工事に先立ち、大阪狭山市在住の考古学者末永雅雄博士の提唱により、大阪府土木部の協力のもとに、狭山池調査事務所を設立して文化財の調査が進められました。この調査により発掘された東樋(ひがしひ)の木製樋管(コウヤマキ)について、年輪年代測定法により伐採年代を測定したところ、616年との結果が得られました。これによって、狭山池の築造は7世紀前半とする説が、現在有力であるようです。(→日本のダム:狭山池(再)


狭山池ダム(撮影:Dam master)


 満濃池(香川県)も古い溜池として有名です。満濃池は、大宝年間(701〜703)に讃岐の国守道守朝臣が金倉川沿いの谷地の湧き水をせき止めて造ったといわれており、地元満濃町のホームページなど各種の資料にこの趣旨の記述が見られます。満濃町では、2001年は満濃池の築堤から数えて1300年となるとして、2001年の4月からほぼ3年にわたって「満濃池築堤1300年祭」が開催されました。(→日本のダム:満濃池(再)


満濃池(撮影:ふかちゃん)


 以降も日本各地で多数の溜池が作られましたが、近代技術を使った本格的なダムと呼べるものは、明治になって西欧近代技術が導入されるようになってからのことです。まず衛生面の要請から水道用のダムが建設され、次いで産業振興の要請から発電用のダムが建設されるようになりました。


 日本初の水道用のダムは、長崎市の本河内高部ダムです。明治24年に完成した堤高18.6mのゾーン型アースダムでした。水道の計画・設計には、当時のイギリスの水道計画・ダム貯水池計画の技術が導入されており、その後の多くの年の水道計画の礎となりました。このダムは現在再開発が進められていますが、今後も引き続き水道用として使われる計画です。(→日本のダム:本河内高部(再)


本河内高部ダム


 日本最初のコンクリートダムも水道用のダムで、神戸市の布引五本松ダムです。布引五本松ダムは水道用の重力式コンクリートダムで、明治33年に完成しました。英国人ウィリアム・バルトンの指導、設計は大阪市から招へいされた技師・佐野藤次郎です。阪神・淡路大震災にも耐え、改修を経て現在でも神戸市の水源として使用されています。(→日本のダム:布引五本松(元)


布引五本松ダム(撮影:池ちゃん)


 日本最初の発電用コンクリートダムは、栃木県の黒部ダムだと言われています。大正元年竣工の石張りのコンクリートダムで、その後改修されていますが、現在も発電に使われています。(→日本のダム:黒部
 大野ダム(山梨県)は、大調整池を形成する発電用アースダムで、大正3年竣工、堤高37.3mは当時日本一高いアースダムでした。(→日本のダム:大野


黒部ダム(栃木県)(撮影:Dam master)


大野ダム(山梨県)(撮影:Dam master)



 大正の後期には、長距離送電ができるようになり、中部山岳地帯で大規模に水力開発を行って、それを大都市地域に送電することが可能となりました。このため、大正末期から大容量水力発電が活発となりました。代表は、大井ダムを有した大井発電所でした。大井ダムは木曽川本川を締め切る堤高53.4mの重力式コンクリートダムで、「日本初の高さ50mを超えるダム」ともいわれます。(→日本のダム:大井

 昭和5年に完成した小牧ダム(富山県)は、当時東洋一のダムと言われた堤高79mの重力式コンクリートダムで、今日のような機械化施工技術で建設された最初の重力式コンクリートダムとも言われます。(→日本のダム:小牧


大井ダム(撮影:ToNo)


小牧ダム(撮影:夜雀)


 戦後の復興期には、電力需要の増大に答えることが重要課題でした。また技術的に見れば、アーチ構造を利用して堤体積を大幅に少なくすることができるアーチダムが建設されるようになりました。

 日本で初めてのアーチダムは、三成ダム(島根県)です。三成ダムは、昭和29年3月竣工の発電用ダムです。堤高が36m、堤頂長109.7mと小規模ですが、アーチダムの先駆けとなりました。(→日本のダム:三成
 本格的なアーチダムとしては、上椎葉ダム(宮崎県)があげられます。難工事を克服して昭和31年に竣工した堤高110mの大規模アーチダムです。(→日本のダム:上椎葉


三成ダム(撮影:安河内孝)


上椎葉ダム(撮影:灰エース)


 戦後復興期に建設された大規模な発電用ダムとしては、黒部ダム(富山県、堤高日本一、アーチダム)、佐久間ダム(重力式コンクリートダム)、田子倉ダム(重力式コンクリートダム)、奥只見ダム(重力式コンクリートダム)などがあります。(→日本のダム:黒部)(→日本のダム:佐久間(元))(→日本のダム:田子倉)(→日本のダム:奥只見


黒部ダム(撮影:安河内孝)


佐久間ダム(撮影:さんちゃん)


田子倉ダム(撮影:Kei)


奥只見ダム(撮影:安河内孝)


 一方、戦後のセメント不足の時期に、ロックフィルダムが建設されるようになりました。
 日本で最初のロックフィルダムは着手時期で見れば石淵ダムで、竣工時期で見れば小渕防災溜池です。(→日本のダム:石淵(元))(→日本のダム:小渕防災溜池


石淵ダム(撮影:安河内孝)


小渕防災溜池(撮影:艦長!)



その後、経済性の観点から、投入労働力が少なく機械化の度合いの高い施工方法が求められるようになり、大規模ロックフィルダムが建設されるようになりました。初期の頃の代表的な大規模ロックフィルダムとしては、御母衣ダム(岐阜県)があります。堤高131mの発電用大規模ロックフィルダムで、機械化施工を駆使して建設されました。(→日本のダム:御母衣


御母衣ダム(撮影:Dam master)


 1950年に国土総合開発法が、さらに1957年に特定多目的ダム法が制定され、戦後復興期から高度成長期にかけて、治水対策、電力増強、食糧増産を目指して、田瀬ダム、五十里ダム、永瀬ダム、横山ダム、天ヶ瀬ダム(京都府)、矢木沢ダム、下筌ダム、松原ダムなど、多くの多目的ダムが建設されました。(→日本のダム:田瀬)(→日本のダム:五十里)(→日本のダム:永瀬)(→日本のダム:横山(元))(→日本のダム:天ヶ瀬(元))(→日本のダム:矢木沢)(→日本のダム:下筌(元))(→日本のダム:松原(元)


田瀬ダム(撮影:Kei)


五十里ダム(撮影:Dam master)


永瀬ダム(撮影:さんちゃん)


横山ダム(撮影:さんちゃん)



天ヶ瀬ダム(撮影:安部塁)


矢木沢ダム(撮影:安河内孝)


下筌ダム


松原ダム


 高度経済成長期にも、大規模電力ダムは引き続き建設されました。高瀬ダム、手取川ダムなどです。(→日本のダム:高瀬)(→日本のダム:手取川


高瀬ダム(撮影:安河内孝)


手取川ダム(撮影:加藤敦)


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【ダムの種類】

 いろいろな観点から、ダムの種類分けをすることが可能です。ダムの目的による分類については、こちら(→ダムの目的)を参照してください。
 ダムは、堤体材料、構造などにより分類されますが、よく使われる種類としては、次のようなものがあります。

アーチダム
 コンクリートで作られたダムで、上から見た形がアーチ型なのでこう呼ばれます。また、アーチ式コンクリートダムとも呼ばれます。
 アーチの持つ力学的特性によって、水圧の大部分を両岸の岩盤に伝えることにより、水圧を支える構造のダムです。重力式コンクリートダムと比べ堤体を薄くすることができ、経済的ですが、ダムの両岸の岩盤に伝わる力が大きくなりますので、両岸に良好な岩盤が必要です。
 黒部ダム(→日本のダム:黒部)、温井ダム(→日本のダム:温井)、奈川渡ダム(→日本のダム:奈川渡)などが代表的なアーチダムです。



黒部ダム(撮影:安河内孝)


温井ダム(撮影:さんちゃん)


奈川渡ダム(撮影:安河内孝)


川治ダム(撮影:犹泱)


重力式コンクリートダム
 コンクリートで作られたダムで、貯水池からの水圧をダムの重量で支える形式のダム。コンクリートダムとしては最も一般的なものです。ダムの重量を支えるのに十分な基礎岩盤上に建設することが原則です。
 奥只見ダム(→日本のダム:奥只見)、浦山ダム(→日本のダム:浦山)、宮ヶ瀬ダム(→日本のダム:宮ヶ瀬)、佐久間ダム(→日本のダム:佐久間(元))などがこのタイプです。



奥只見ダム(撮影:安河内孝)


浦山ダム(撮影:安河内孝)


宮ヶ瀬ダム(撮影:安河内孝)


佐久間ダム(撮影:ToNo)


中空重力式ダム
 コンクリートで作られたダムで、重力式コンクリートダムの一種ですが、その内部が空洞になっているダム。コンクリートの量は節約できますが、構造が複雑なので、畑薙第1ダム(→日本のダム:畑薙第1)、井川ダム(→日本のダム:井川)など昭和30年代から40年代にかけて造られたものが数例あるのみです。



畑薙第1ダム(撮影:古川美鈴)


井川ダム(撮影:ToNo)


内の倉ダム(撮影:上條政明)


横山ダム(撮影:Dam master)


重力式アーチダム
 コンクリートで作られたダムで、重力式コンクリートダムとアーチダムの両方の特性を備え、それによって水圧を支えようとするダムです。新成羽川ダム(→日本のダム:新成羽川)、阿武川ダム(→日本のダム:阿武川)など、国内に10ダム程度あります。



新成羽川ダム(撮影:灰エース)


阿武川ダム(撮影:加藤敦)


二瀬ダム(撮影:ワージャ)


湯田ダム(撮影:Kei)


バットレスダム
 水圧を受ける鉄筋コンクリート版を扶壁(バットレス)で支える構造のダム。扶壁式ダムとも言われます。構造と施工が複雑で、国内で最近建設されたものはなく、丸沼ダム(→日本のダム:丸沼)、笹流ダム(→日本のダム:笹流)など大正から昭和初期にかけて造られたものが数例あるのみです。



丸沼ダム(撮影:kanayama)


笹流ダム(撮影:保坂かつら)


恩原ダム(撮影:さんちゃん)


三滝ダム(撮影:cantam)


アースダム
 主に土を材料にして作られたダム。土堰堤とも言い、古くからあるかんがい用溜池などはこれに該当し、最近でも作られていますので、最も数の多いタイプのダムです。ロックフィルダムとともにフィルダムの一つです。堤高の高いものとしては、清願寺ダム(→日本のダム:清願寺)、長柄ダム(→日本のダム:長柄)、中里ダム(→日本のダム:中里)などがあります。



長柄ダム(撮影:sio)


中里ダム(撮影:灰エース)


川西ダム(撮影:加藤敦)


不破北部防災ダム(撮影:ToNo)


ロックフィルダム
 岩石を多く使ったダムです。中央部に遮水を受け持つ遮水性ゾーン(コア)を持つタイプのロックフィルダムが多いですが、上流側の堤体表面をコンクリートアスファルトなどで遮水するタイプもあります。高瀬ダム(→日本のダム:高瀬)、奈良俣ダム(→日本のダム:奈良俣)、手取川ダム(→日本のダム:手取川)などがロックフィルダムです。



高瀬ダム(撮影:Dam master)


徳山ダム


奈良俣ダム(撮影:安部塁)


手取川ダム(撮影:Dam master)


重力式コンクリート・フィル複合ダム
 重力式コンクリートダムとフィルダムとの二つの型式のダムが連続して一つのダムを形成している構造のダムです。竜門ダム(→日本のダム:竜門)、大川ダム(→日本のダム:大川)、忠別ダム(→日本のダム:忠別)などがこれに当たります。



忠別ダム


永源寺ダム(撮影:Dam master)


御所ダム(撮影:灰エース)


月光川ダム(撮影:北国のNAGO)


台形CSGダム
 日本で開発された新しい技術に基づくもので、堤体の断面が台形で、材料にCSGを使用したダムです。条件さえ合えば、コスト縮減、環境の保全などに有効です。まだできあがったダムはありませんが、建設中のものがいくつかあります。


 種類分けの基礎となっている考え方は以下の通りです。
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(機能により)
■貯水ダム
■取水ダム
■砂防ダム
貯砂ダム

これから下の種類分けは、貯水・取水用のダムを念頭に置いたものです。

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(目的の数により)
■専用ダム
■多目的ダム

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(構造により)
■可動ダム
 一連のゲートが主体となっているダム。
■固定ダム
 本体の主要部分が固定されているダム。通常のダムはこれに該当します。

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(固定ダムについて水理機能により)
越流式ダム
 堤頂から洪水を越流させる方式のダム。
■非越流式ダム
 堤体外に洪水吐を持つダム。

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(堤体材料により)
■フィルダム
 土や岩石を材料とするダム。通常、ダムサイト周辺で採取される土や岩石を材料として使用します。
 ■アースダム
  土を主体にしたダム。
  土堰堤とも言い、古くからあるかんがい用溜池などはこれに該当します。
 ■ロックフィルダム
  岩石を多く使ったダム。
■コンクリートダム
 コンクリートを材料とするダム。

■台形CSGダム
 CSGを材料とするダム。

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(フィルダムについて遮水方法により)
■均一型
 堤体を均一な細粒材料で構築したダム。
■ゾーン型
 堤体内部を、遮水を受け持つ遮水性ゾーン(コア)、堤体の安定を受け持つ透水性ゾーンなどにゾーン区分をしたダム。
■表面遮水型
 上流(貯水池側)の堤体表面をコンクリート、アスファルトなどで遮水するダム。
 ■アスファルト遮水
 ■コンクリート遮水

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(コンクリートダムについて水圧の支え方などにより)
■重力式コンクリートダム
 貯水池からの水圧をダムの重量で支える形式のダム。コンクリートダムとしては最も一般的なものです。ダムの重量を支えるのに十分な基礎岩盤上に建設することが原則です。
■アーチダム
 アーチの持つ力学的特性によって、水圧の大部分を両岸の岩盤に伝えることで、水圧を支える構造のダム。上から見た形がアーチ型なのでこう呼ばれます。重力式ダムと比べ堤体を薄くすることができ、経済的ですが、ダムの両岸の岩盤に伝わる力が大きくなりますので、両岸に良好な岩盤が必要です。
 数は少ないですが、複数のアーチダムが連なっているマルティプルアーチダムというものもあります。国内では、大倉ダム(宮城県)と豊稔池(香川県)がこれに該当します。
■バットレスダム
 水圧を受ける鉄筋コンクリート版を扶壁(バットレス)で支える構造のダム。扶壁式ダムとも言われます。構造と施工が複雑で、国内で最近建設されたものはなく、大正から昭和初期にかけて造られたものが数例あるのみです。
■中空重力式ダム
 重力式コンクリートダムの一種で、その内部を空洞にしたダム。コンクリート量は節約できますが、構造が複雑なので昭和30年代から40年代にかけて造られたものが数例あるのみです。
■重力式アーチダム
 重力式コンクリートダムとアーチダムの両方の特性を備え、それらによって水圧を支える構造のダム。

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(単一構造か、複合構造かにより)
■単一ダム
 大多数のダムはこれに該当します。ロックフィルダム、重力式コンクリートダムといった一形式の構造のダムです。
■複合ダム
 二つの型式のダムが連続して一つのダムを形成しているような場合です。重力式コンクリートダムとフィルダムの混合が多いようです。

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【ダムの型式】

 ダムはいろいろな観点から分類されますが(→ダムの種類)、重力式コンクリートダム、ロックフィルダムといったダムの区分をダムの「型式」と呼ぶことがあります。
 例えば、(財)日本ダム協会発行の「ダム年鑑」では次のような型式分類を行って、それぞれ略号で表示しています。〔 〕内が「ダム年鑑」の型式です。(→日本のダム:まとめ


■単一ダム
 (堤体材料により)
 ■フィルダム
  ■アースダム
   ■均一型        〔E  :アースダム〕
   ■ゾーン型       〔E  :アースダム〕
   ■表面遮水型
    ■アスファルト遮水  〔FA :アスファルトフェイシングフィルダム〕
    ■コンクリート遮水   (国内にない)
  ■ロックフィルダム
   ■均一型         (国内にない)
   ■ゾーン型       〔R  :ロックフィルダム〕
    ■コアがアスファルト 〔FC :アスファルトコアフィルダム〕
    ■その他       〔R  :ロックフィルダム〕
   ■表面遮水型
    ■アスファルト遮水  〔FA :アスファルトフェイシングフィルダム〕
    ■コンクリート遮水  〔R  :ロックフィルダム〕
 ■コンクリートダム
  ■重力式コンクリートダム 〔G  :重力式コンクリートダム〕
  ■アーチダム
    ■単一アーチ     〔A  :アーチダム〕
    ■複数アーチ     〔MA :マルティプルアーチダム〕
  ■バットレスダム     〔B  :バットレスダム〕
  ■中空重力式ダム     〔HG :中空重力式コンクリートダム〕
  ■重力式アーチダム    〔GA :重力式アーチダム〕
 ■台形CSGダム      〔CSG:台形CSGダム〕
■複合ダム          〔GF :重力式コンクリート・フィル複合ダム〕
■通常のダム以外
 ■堰など          〔FG :堰〕
 ■地下ダム         〔未記入〕


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【ダム計画上の水位と容量】

 ダム計画上、貯水池の水位として次のようなものがあり、一般に、最低水位、常時満水位、サーチャージ水位、設計洪水位の順に水位は高くなります。

■最低水位(LWL)
 貯水池の運用計画上の最低の水位。ダムの堆砂容量が水平に堆砂したときの堆砂上面とするのが一般的で、この場合堆砂位ともいいます。発電用のダムなどでは、堆砂容量のほかに死水容量をもつものがあり、このような場合は両方を貯めた場合の上面。通常これよりも下には取水口がなく、貯留水は利用できません。

■常時満水位(平常時最高貯水位)(NWL)
 ダムの目的の一つである利水目的(水道、かんがい、工業用水など)に使用するために、貯水池に貯めることが出来る最高水位。貯水池の水位は、渇水と洪水の時期以外は常時この水位に保たれます。

■サーチャージ水位(洪水時最高水位)(SWL)
 洪水時、一時的に貯水池に貯めることが出来る最高の水位。

■設計洪水位(DWL)
 想定される最大の洪水(200年に一回程度)が発生した時の流量を設計洪水流量といい、そのときの貯水池の水位を設計洪水位といいます。この時、ゲートは全開されています。自然現象として予想される最高の水位と考えられます。

 これらの水位と連動して次のような貯水池の容量が定められます。

■総貯水容量
 堆砂容量、死水容量、利水容量、洪水調節容量を全部合計したもの。

■有効貯水容量
 ダムの総貯水容量から堆砂容量と死水容量を除いた容量。

■洪水調節容量
 常時満水位からサーチャージ水位までの容量。

■利水容量
 最低水位から常時満水位までの容量。利水容量は利水目的に応じて利水目的毎の容量に分割されます。

■死水容量
 通常設定されることは少ないですが、一定の水位の確保を目的として、発電計画上の必要性がある場合、取水・放流施設設置上必要がある場合などに設定されます。その場合の堆砂容量上面と最低水位との間の容量。

■堆砂容量
 一定期間(一般には100年間)にダム貯水池に堆積すると予想される流入土砂を貯える容量。100年たてばこの堆砂容量は土砂で埋まるものと想定されますが、洪水調節容量や利水容量はそのとき埋まってはいません。

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【ダムの造り方】

 ダムはとても大きな構造物で、建設による地域社会や周辺環境への影響も大きなものがあります。そのためダムを造るときは、安全性や経済性はもちろんのこと、地域社会や環境への影響にも最大限の配慮をしなければなりません。コンクリートダムの本体の一般的な建設手順(工事段階の手順)です。

■工事の準備
 資材を運搬する道路をつくったり、川を工事に影響のない場所に切り替える工事(仮排水路の建設)などを行い、ダム工事の準備をします。

■仮設備の設置
 ダム工事から発生する汚れた水をきれいにする濁水処理施設を設置したり、コンクリートをつくるための設備を整備します。これらは工事が終了したら撤去されるので「仮設備」とよばれます。

■基礎掘削
 ダムの基礎地盤を露出するため、河床や堤体側面を掘削し、弱い岩盤やゴミ・泥などを取りのぞきます。

基礎処理
 基礎岩盤の軟質部分や割れ目を補強し、ダムと基礎地盤を密着させるためにボーリングした穴にセメントミルクを流し込みます。専門用語で『グラウチング』といいます。

■コンクリートの打設
 コンクリートをクレーンやダンプなどにより運び、あらかじめ設置した型枠の中に打設します。

■管理設備の設置
 ダムを使用する際に必要な管理設備(取水設備、警報設備など)を設置します。

試験湛水
 工事が完了したら、水をため、異常がないことを確認します。

【建設事例】
重力式コンクリートダム(→知識を深める:ダム建設工事(福智山ダム)
ロックフィルダム(→知識を深める:ダム建設工事(金峰ダム)

ダムカード (だむかーど)
 国土交通省や水資源機構の管理中ダムで2007年7月より発行が開始された、写真とそのダム固有の情報を紹介したカード。
 大きさは63×88ミリ、紙製でオモテ面はダムの写真とダム型式記号・ダム目的記号など、裏面は所在地・河川名・ダム型式・ゲート種類・堤高堤頂長総貯水容量・管理者名・本体着工年完成年・その他ランダム情報とこだわり技術情報が記載されています。
 そのダムに行かなければもらうことができず、当初は物珍しさや希少性もあって、ダムカードを積極的に収集する人もいて、人気になりました。その後、2種類以上のカードを配布しているダムがでてきたり、建設中のダムでも発行するものが出てきたりと、広がりを見せているようです。

ダム群連携事業 (だむぐんれんけいじぎょう)
 既設の複数のダムを水路で連結して一体的に運用することにより水の有効活用を図り、効率的なダムの運用を行おうとする事業で、国土交通省が進めています。ダム上流の流域面積が小さくダムへの流入量が小さいが、貯水容量が大きいダムと、逆に、ダム上流の流域面積が大きくダムへの流入量が大きいが、貯水容量が小さいダムがあった場合、双方を水路で連結して水を融通することによって、従来貯水容量の小さいダムから無効に放流されていた水を貯水容量の大きいダムに貯留することによって、水の有効活用ができます。
 平成15年2月現在、鬼怒川上流ダム群連携、筑後川ダム群連携、綾川ダム群連携の3事業が実施されています。

ダム計画上の水位と容量 (だむけいかくじょうのすいいとようりょう)
 ダム計画上、貯水池の水位として次のようなものがあり、一般に、最低水位、常時満水位、サーチャージ水位、設計洪水位の順に水位は高くなります。

■最低水位(LWL)
 貯水池の運用計画上の最低の水位。ダムの堆砂容量が水平に堆砂したときの堆砂上面とするのが一般的で、この場合堆砂位ともいいます。発電用のダムなどでは、堆砂容量のほかに死水容量をもつものがあり、このような場合は両方を貯めた場合の上面。通常これよりも下には取水口がなく、貯留水は利用できません。

■常時満水位(平常時最高貯水位)(NWL)
 ダムの目的の一つである利水目的(水道、かんがい、工業用水など)に使用するために、貯水池に貯めることが出来る最高水位。貯水池の水位は、渇水と洪水の時期以外は常時この水位に保たれます。

■サーチャージ水位(洪水時最高水位)(SWL)
 洪水時、一時的に貯水池に貯めることが出来る最高の水位。

■設計洪水位(DWL)
 想定される最大の洪水(200年に一回程度)が発生した時の流量を設計洪水流量といい、そのときの貯水池の水位を設計洪水位といいます。この時、ゲートは全開されています。自然現象として予想される最高の水位と考えられます。

 これらの水位と連動して次のような貯水池の容量が定められます。

■総貯水容量
 堆砂容量、死水容量、利水容量、洪水調節容量を全部合計したもの。

■有効貯水容量
 ダムの総貯水容量から堆砂容量と死水容量を除いた容量。

■洪水調節容量
 常時満水位からサーチャージ水位までの容量。

■利水容量
 最低水位から常時満水位までの容量。利水容量は利水目的に応じて利水目的毎の容量に分割されます。

■死水容量
 通常設定されることは少ないですが、一定の水位の確保を目的として、発電計画上の必要性がある場合、取水・放流施設設置上必要がある場合などに設定されます。その場合の堆砂容量上面と最低水位との間の容量。

■堆砂容量
 一定期間(一般には100年間)にダム貯水池に堆積すると予想される流入土砂を貯える容量。100年たてばこの堆砂容量は土砂で埋まるものと想定されますが、洪水調節容量や利水容量はそのとき埋まってはいません。

ダム建設調整費制度 (だむけんせつちょうせいひせいど)
 水資源機構の制度の一つで、ダム建設の円滑な進捗を確保するため、本体工事の施工中に事業資金に充てるため水資源機構が民間借入金を調達する制度です。昭和60年度に創設されました。

ダム工学会 (だむこうがくかい)
 より良い、ダムの設計・施工・管理のあり方を探るために活動している団体です。ダム工学は、多くの学問から成り立っている総合工学ですので、学・官・民などの各分野から多くのダム技術者が参加しています。

ダム工事の儀式 (だむこうじのぎしき)
 大規模なダムの建設は、工事期間が長期に渡り、また関係者の数も多く、地域にとっても大きな出来事なので、工事中節目節目に様々な儀式が行われることがあります。工事関係者はもちろん、地元自治体関係者、地元の人々、小中学生なども参加して、地域ぐるみの行事として行われることもあります。代表的なものは次の通りです。

・起工式


起工式−大長見ダム


起工式−苫田ダム


転流


転流式−福富ダム


・初打設式または初盛立式


初打設式−こまちダム


初打設式(打設開始)−深城ダム


初打設式−苫田ダム


初打設式−益田川ダム


・定礎式


定礎式(4.5tバケットによるコンクリート投入)−石河内ダム


定礎式−大長見ダム


定礎式(メモリアルストーン)−小倉ダム


定礎式−小里川ダム



定礎式−上津浦ダム


定礎式(メモリアルストーン埋納)−こまちダム


定礎式−新宮川ダム


定礎式−摺上川ダム



定礎式−深城ダム


定礎式−南相木ダム


・打設または盛立完了式


打設完了式(最終打設)−輝北ダム


打設完了式−苫田ダム


打設完了式−中野方ダム


打設完了式−余地ダム



盛立完了式−摺上川ダム


盛立完了式−南相木ダム


・湛水式


湛水式−上野ダム


湛水式−大志田ダム


湛水式−摺上川ダム


・竣工式


竣工式−上津浦ダム


(→知識を深める:大志田ダムの定礎式)(→知識を深める:竣工式ってどんなもの〜宮ヶ瀬ダム

ダムコンクリート (だむこんくりーと)
 コンクリートダムの本体に用いられるコンクリート。普通の工事現場で使うコンクリートとは骨材の大きさ、セメントの種類などが違います。ダム用コンクリートとも言うようです。

ダムサイト (だむさいと)
 ダムが造られる場所(サイト)です。

ダム軸 (だむじく)
 河川を横断する構造物であるダムの位置を示すダム構造設計上の基本線。重力式コンクリートダムではダム天端上流端を連ねた線です。アーチダムフィルダムでは、堤頂の中心を連ねた線です。

「ダム」という言葉 (だむということば)
 ダムとは、河川などの水を堰き止めて、水を貯めたり、水位を上げたりするために建設される構造物のことです。例えば、広辞苑は、ダムとは「発電・利水・治水・保全などの目的で河海の水をためるために河川・渓谷などを横切って築いた工作物とその付帯構造物の総称」としています。なお、古くは「堰堤」と呼ばれていたようで、広辞苑にも堰堤はダムである旨の記述があります。
 一方、類似の施設として堰があります。ダムは高さが高く、堰はダムほどの高さはなく、横に長いといった感じがしますが、大規模な堰を想定すると両者の区別は必ずしも明確ではないように思われます。
 なお、日本語の「ダム」は、英語の Dam を、その発音をカタカナで日本語表記にしたものですが、英語のDamという言葉は、必ずしも高さの高いものだけを指すのではなく、高さの低い、日本では通常堰と呼ばれているようなものも含んでいるようです。
 また、国際的には、「大ダム」(large dam)という言葉が使われることがあるようで、例えば、国際大ダム会議(International Commission on Large Dams、1928年創立、世界85カ国参加)という国際的な組織があり、そこでは世界のダムをダム台帳に登録していますが、登録対象ダムは高さが15m以上と、高さが5m以上で貯水容量が300万m3以上のものになっています。

ダム日本 (だむにっぽん)
月刊ダム日本

ダム年鑑 (だむねんかん)
 (財)日本ダム協会が刊行しているダムに関する年鑑。建設・計画中を含め全国の約2800のダムについて、協会が独自に調査を実施して諸元、建設参加業者などの詳細な情報を掲載しており、この分野では唯一のものとなっています。「ダム便覧」にあるダムの諸元は、ダム年鑑の元になっているデータによっています。

ダムのグランドデザイン (だむのぐらんどでざいん)
 ダムをある統一的な考え方の下に調和のとれた景観を持つものとするための手法。近年このような考えが出てきて、事例も少なく、言葉の使われ方も一定していないように思われます。ダム堤体のみならず、ダム湖とその周辺を含めたダム空間を考え、そこを対象にすることも多い。
 地域社会、歴史文化、周辺環境などを考慮して、一定の基本コンセプトを設定し、その下で、ダム、諸設備、構造物、公共施設などを統一的にデザインし、全体として調和のとれた、特色ある景観を創出しようとするといった傾向が見られます。その考え方の基礎には、従来の個別施設ごとの景観設計への反省や、ダム事業が広範にわたり物的環境を改変することへの配慮などとともに、将来に渡って地域社会の活性化や文化の創造に貢献したいという発想があるようにも思われます。

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