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《筑後川水資源開発史を顧みて》 
 今日、昭和40年以降、筑後川水資源開発史を顧みると、様々なことが交錯してくる。建設にあたっては、建設される側と建設する側との間に、必ずや葛藤、確執が生じてくる。これらの幾多の困難を乗り越えて水資源開発施設は完成を迎える。この完成までに当然、紆余曲折はあるものの、被補償者をはじめ、建設事業に携わってきた多くの方々の協力と尽力には、常に敬服せざるを得ない。

 筑後川は流路延長 143km、流域面積 2,860km3、(山地67%平地33%)、河川係数は480.85と高い。年間降水量2000mmは梅雨期に集中しており、月ごとの降水量も平均せず、河川勾配も急であることから、降水があれば、すぐに有明海に流れ込む。このために水需要の増大により水をダムで貯め、再度堰で貯め、水路で運び、各地域で農業用水、水道用水、工業用水、発電用水として利用されている。このようなダム等の水資源開発施設による水開発供給システムは、相互に水の時間的、空間的、地域的な調整を図って行われ、各地域に公正、平等に配水する役目を担っている。とくに渇水時にはこのシステムが効力を発揮する。

 今年(平成16年)は、筑後川水資源開発事業の嚆矢であった江川ダムの完成から既に、30年を迎えた。この間、筑後川の利水は福岡都市圏等に安定的な水供給システムをつくり出し、大きな変化をとげ、その目的を十分に果してきた、といえる。例えば、筑後川の取水によって平成6年の渇水時には、昭和53年福岡大渇水のような福岡都市圏におけるパニック状況には陥らなかったことで実証できる。現在福岡市水道における年間給水量1億4千万m3のうち約30%は筑後川の水で占められ、この福岡都市圏を含めて筑後川流域内を合わせると、約 300万人の命の水に日々利用されている。

 平成9年河川法の改正により、その目的に「河川環境の整備と保全」が規定され、治水、利水から環境を重視する時代になってきた。当然に治水も利水も大切なことであるが、上流域の森林地帯及び河口の有明海まで、筑後川の水環境、水質環境の施策が望まれる。

 福岡都市圏などを含めると約 300万人は、これまでに、多大な恩恵を筑後川から受けてきた。これからは筑後川の恵みに感謝しつつ、日々その恩を返すことを心掛けるべきである。家庭排水に気を使い、植林を施し、水辺に葦を植栽し、さらに、河川清掃に汗を流すことも、筑後川に恩を返すことにつながってくる。これらの実行こそが健全な水環境システムをつくり出し、水と河川と人間との共生の確立になるからだ。

  < ダムに沈む 小学校の碑 藤の花 > (岡部六弥太)

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