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おわりに

 このように、吉野川総合開発事業に係わる早明浦ダム(高知分水)、池田ダム(香川用水、吉野川北岸用水)、旧吉野川河口堰(今切川河口堰)の建設について概観してきた。

 平成17年4月現在、四国四県の人口は、徳島県81万人、香川県101.5 万人、愛媛県 146.7万人、高知県79.8万人で合わせると 409万人である。吉野川総合開発事業によって新規開発水量年間8.63億m3の配分をみてみると、徳島県 4.1億m3、香川県2.47億m3、愛媛県1.67億m3、高知県0.39億m3であり、平成16年香川用水通水30周年を迎え取水量は50億m3に達している。これまでに、吉野川上流のダム群によって、度重なる出水時や渇水時にはその被害の軽減に努めてきた。

 平成16年は全国的に多雨傾向であり、早明浦ダムでは8月の月間降水量1400mm(平年の3倍以上)を記録し、また年間降水量4800mm(日本の平均年間降水量1718mmの 2.8倍)に及んだ。10月23日台風23号では吉野川下流域 690haの浸水を受けたが、上流ダム群がなければ 980haに拡大したといわれる。(「水登ともに」 '05. 5月号)

 このように吉野川の上流ダム群は治水と利水の安定を図り四国四県における文化、社会、経済の発展に寄与していることは確かだ。
 今後、地球温暖化異常気象に伴う降水量の増減は一層吉野川上流ダム群の重要な役割を増してくるであろう。今日、流域総合治水が叫ばれているが、吉野川流域はダム管理の充実と、上流域では森林、中流域では水害防備林の整備、そして下流域では遊水地(通常は耕作地)の拡大が必要であろう。

 早明浦ダムサイトから吉野川沿いに3キロ程下った帰全山公園に江戸期の治政家・土佐藩家老野中兼山(1615〜1663)の像が建立されている。二本差しに左手に地図を持ちながら吉野川を見下ろしている。まさしく、その姿は、吉野川の安定と四国四県の繁栄を願っているかのようだ。


 最後に、吉野川の水環境に関する書をいくつか挙げる。
・(財) とくしま地域政策研究所編『吉野川辞典』(農山漁村文化協会・平成11年)
・毎日新聞社編・発行『吉野川』(昭和35年)
・芳水康史著『吉野川・利水の構図』(芙蓉書房・昭和45年)
・国土開発調査会編・発行『吉野川−その治水と利水』(昭和62年)
・山内完 写真『四国三郎母なる吉野川』(光村原色版印刷所・平成元年)
・島内英佑 写真『吉野川ふたむかし』(教育出版センタ−・昭和56年)
・吉野川文化研究会編・発行『吉野川今昔』(平成10年)
・同 『吉野川今昔(・)』(平成11年)
・中尾能巳著『吉野川の平田舟と渡舟』(中尾能巳先生遺稿出版会・昭和57年)
・立石一著・発行『吉野川の育てた農業特産物』(平成12年)
・徳島工事事務所編・発行『写真集 吉野川百年史資料編』(平成3年)
・同 『四国三郎物語−吉野川の洪水遺跡を訪ねて』(平成9)
 同 『吉野川の渡し』(平成16年)
・吉野川資料研究会編『工師デ・レ−ケ吉野川検査復命書』(徳島工事事務所・平成
 8年)
・NHK徳島文化センタ− 写真『吉野川第十堰』(山と渓谷社・平成15年)
・吉野川流域ビジョン21委員会編・発行『吉野川可動堰計画に代わる第十堰保全事業案
 と森林整備事業案の研究成果報告書』
(平成16年)
・上田弘一郎著『水害防備林』(産業図書・昭和30年)
・阿波用水土地改良区編・発行『阿波用水史』(昭和37年)
・板名用水土地改良区編・発行『板名用水五十年史』(昭和58年)


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