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2.黒部川のすがた

 建設省北陸地方建設局黒部工事事務所編・発行『黒部川のあゆみ』(昭和52年)によると、黒部川の自然のなかで次のように述べられており、そのまま引用する。

【黒部川は北アルプスの中央部に位置する鷲羽岳( 2,924m)に源を発し、 3,000m級の山岳が連座する立山連峰と後立山連峰の間に壮大な峡谷を刻んで北流する流路延長約85km、流域面積 682km2、山地部平均河床勾配1/5 〜1/80の我国有数の急流河川である。
 流域は、南北方向に弓形を成す典型的な羽状流域を形成し、薬師沢出合より上流の渓谷と、その下流一帯の壮大な峡谷帯、愛本橋より下流の扇状地帯に区分される。
 流域は極めて明るい渓谷であるが、薬師沢出合下流付近からは俄然谷は深くなり、黒四ダムをはさんで上流は上廊下、下流は下廊下と呼ばれる。急峻にして両岸屹立した雄大なV字峡谷を成している。峡谷帯には、その流路の形態と流水及び周辺岩質の色合いから、S字峡、半月峡、白竜峡などと呼ばれる名勝地が多く、また、地質構造に支配されて支谷の合流点付近はほぼ直角となり、十字峡などの名勝地を生み出している。
 宇奈月のやや上流にて、黒部川の支流のうち最大である黒薙川と合流し、この下流付近より徐々に谷も開け、河巾も広くなる。水源より流路延長約71kmの愛本地点に至って峡谷は終わり、黒部川扇状地となる。
 扇状地内の河床勾配は1/80〜1/120 となって西北に流路をとり、黒部市荒俣(左岸)及び入善町飯野(右岸)地先で日本海に流れ込む。この扇状地の平野部の流路延長は約14km、集水面積15km2である。 黒部川流域の年間降水量は、 3,000mm〜 4,000mmと多く、標高 3,000m級の山岳に降った雪は万年雪となって残り、年間を通じて融雪水を流し真夏でも平均水温10℃〜15℃と冷たい。このため扇状地の水田では冷水害がしばしばおこり、その対策として温水溜池を設置し水温をあげる工夫がなされてきた。
 また、降水量が豊富なこと、河川勾配が急なこと等から電源開発がなされている。
 流域の地質は、約70%が火成岩(花崗岩類)であり、変成岩、水成岩はわずかである。風化作用等により岩石の崩壊が目立ち、黒部川流域では約 7,000カ所(昭和44年現在)、 30.57・の崩壊地が分布している。崩壊面積の流域面積に対する割合は4%にも及ぶ。
 流域の植物相は、大部分が自然植生であり、高山帯から山地帯、低地帯と黒部川に沿って植生の典型的な垂直分散がみられ、植物社会学的にも特徴のある地域である。
 黒部川流域の大半は国有林であり、また中部山岳国立公園に指定され、我が国を代表する一大景観地域である。その多くは原始性に富む、我が国有数の原始景観地域ともいえる。源流から宇奈月までは登山と探勝に利用されているが、多くは過酷な自然環境で人をよせつけず、一部の登山者に占有されている。
 宇奈月より下流には集落が形成され、扇状地には農業が営まれており、その主体は米作である。】

 黒部川の流域面積 682km2の内訳は、山地面積 662km2(97.1%)、平地面積6km2( 0.8%)、水路面積14km2( 2.1%)で、一方幹川流路延長85kmの内訳は山地延長71km(83.5%)、平地延長14km(16.5%)となっており、山地の割合が極端に高い。


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