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◇ 7. 幻に終わった緒川ダム

 ダム計画は建設されるものとして進められるが、稀に中止されるダムもある。
 緒川ダムは那珂水系緒川の那珂郡緒川村大字上小瀬地先に、洪水調節、流水の正常な機能の維持、さらに水道用水を供給する多目的ダムとして計画され、緒川総合開発事業の一環をなすものであったが中止された。
 緒川ダムにおける補償概要をみてみると、水没面積68ha、水没戸数70戸、道路関係での移転家屋62戸に及び、地権者の組織は5団体であった。

 小林茂著「幻のダムものがたり−緒川ダムの三十三年」(文芸社・平成14年)によれば、緒川ダムの中止理由について、茨城県公共事業再評価委員会は、次のように意見を述べている。
 「県において地元交渉が続けられ、了解が得られた地権者に関わる箇所から測量や設計、家屋補償調査など各種調査が実施されてきた。この間、移転等に関する地権者の意向調査が数度にわたって行われ、その結果を踏まえた代替地造成計画等が提案されたものの一部地権者の同意が得られず、いまだに用地交渉の段階に至っていない。………
 計画発表から既に32年が経過している現在水需要など社会経済情勢等の変化から利水の必要性は依然として認められるものの、その一部に水資源の確保に関する緊急性が薄れるなど現計画の前提条件に大きな変化があることを考慮する必要があると思われる。」


幻のダムものがたり−緒川ダムの三十三年
 このようなことから、現段階の計画を再検討する必要に迫られ、平成12年に緒川ダムの中止が決定された。
 箕川恒男著「水をめぐって−緒川ダムの軌跡」(筑波書林・平成6年)、同著「村は沈まなかった−緒川ダム未完への記録」(那珂書房・平成13年)も発行されている。


水をめぐって−緒川ダムの軌跡

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