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ダム番号:1398
 
九鬼ヶ谷池 [京都府](くきがたにいけ)


15/03
ダム写真

(撮影:安部塁)
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左岸所在 京都府南丹市美山町上平屋  [Yahoo地図] [DamMaps] [お好みダムサーチ]
位置
北緯35度16分31秒,東経135度34分36秒   (→位置データの変遷

河川 由良川水系由良川
目的/型式 FA/アース
堤高/堤頂長/堤体積 15.3m/48m/18千m3
流域面積/湛水面積 km2 /1ha
総貯水容量/有効貯水容量 20千m3/20千m3
ダム事業者 上平屋区
本体施工者 ダム事業者直営
着手/竣工 /1949
諸元等データの変遷 【05最終→06当初】左岸所在地[北桑田郡美山町上平屋→南丹市美山町上平屋]
【06最終→07当初】河川名[由良川→巴川]
【07当初→07最終】河川名[巴川→由良川]
【08最終→09当初】堤高[15.3→15]
【09当初→09最終】かな[くきがやいけ→くきがたにいけ] 堤高[15→15.3]
【12最終→13当初】本体施工者[上平屋区直営→ダム事業者直営]

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位置未確認ダムを探して…九鬼ケ谷池

安 部  塁
 
1.はじめに

 京都府の「九鬼ケ谷池」というアースダムは、便覧では位置未確認でありながらも、北緯35度16分31秒,東経135度34分36秒付近に位置するものと推定されていました。地図には、貯水池らしいものが描かれています。この場所は現在、京都府南丹市美山町上平屋という地区に該当します。


 南丹市は、平成の大合併で誕生した新しい市で、旧園部町を中心に旧美山町・旧日吉町などから構成されています。旧美山町には「大野ダム」、旧日吉町には「日吉ダム」という共に京都の代表格のダムがありました。


日吉ダム
 大野ダムは、日本海に河口を持つ由良川に建設されたダムです。一方、日吉ダムは淀川水系桂川に建設されたダムで、その水は大阪湾に流れて行きます。
 つまり、新しく誕生した南丹市には、日本海と太平洋(瀬戸内海)の分水嶺が通過していることが判ります。


 ダム便覧においては、地図上で名称が確認できないもの、または同一地区に候補が複数あって特定が困難なものが「位置未確認ダム」とされているようです。「九鬼ケ谷池」については、前者です。すなわち、各種地図で確認してもこの場所に「九鬼ケ谷池」の記載がないということになります。
 当地には、ほかに想定されるため池が見当たらず上掲経緯度が、「九鬼ケ谷池」の位置である確率が高いと考え、訪れてみることにしました。さらに、付近を通過する国道162号線に「九鬼ケ坂」と称される場所がある事実も、その可能性を裏付けるものとなりました。


 
2.九鬼ケ谷池


 九鬼ケ谷池と思われる堤体は、予想通りの位置に存在していました。
 現地にはダム事業者とされる「上平屋区長」の『この池での事故について、区は責任を負わない。』という旨の警告板と「地元漁協」が設置した『外来魚放流禁止』の看板がまず目に入りました。
 堤頂部は国道より3mほど低い位置にあります。特に立入禁止等の標識はありませんでしたので、自己責任で堤頂に踏み入れてみることにしました。「諸車通行禁止」などの看板はありませんが、国道からは大きな段差がありますので事実上車両が通行することは不可能です。


 堤頂から上流を望むと、湖尻まで一望できる極めて小規模な貯水池でした。取水塔やスピンドルのような設備は見当たりません。地図では流入河川がはっきり描かれておりませんが、他所から導水して貯水している河道外ダムとも思われません。わずかな沢の水、もしくは、湧水を貯水しているのでしょう。
 右岸(国道の対岸)に地山をくり抜いた岩盤剥き出しトンネルがあります。恐らくこれが洪水吐であると思われます。人一人がやっと通れる程度の大きさで、もし流木が呑口を閉塞したらと思うと大変心細いものです。それでも、昭和24年の竣工以来このままの姿で特に問題がなかったので、改修されていないものだと思います。


 トンネルから続く掘割のような部分が、洪水吐からの導水路です。同じく岩盤が剥き出しの状態です。流出先の河川も地図上には明確には描かれていませんが、ここからの越流水は渓流のようになって由良川に流入し大野ダムで一休みしてから(または、休む暇もなく電力を生んだ後)最終的に日本海に注ぐことになるようです。


 九鬼ケ谷池は、便覧では「由良川水系由良川」に設置されたダムとされています。アースダムが1級河川本流に築造されることは非常に考えにくいことです。九鬼ケ谷池は準用河川にも満たないこのような普通河川に実在していることで、便覧の記載内容が正しいことを裏付けます。
 堤体下流部に、ドレーンのようなものが設置されており、少しずつ水が流れています。行き先は農業用の用水路と考えられます。


 建設記念碑や説明板は確認した限りでは見当たりませんでした。しかし、この池の堤体がダム便覧記載の諸元にほぼ一致すると思われること、また「上平屋区長」の警告板が設置されていることからこの場所が目的地であると断定してほぼ間違いありません。あとは、現地の人にこの池が「九鬼ケ谷池」であることを確認すれば良いのです。

3.ウラがとれない

 南丹市は地図では京都市右京区に隣接しています。しかし、市境は山間部にあり、京都市内からは1時間以上要する場所にあります。人口もそう多くはなく、あまり人を見かけないのもまた事実です。
何とか農家の方を見つけ、池の名前を尋ねてみると意外なことに「知りません。」という返事でした。
 その後、何人かの方に同じことを尋ねましたが、
 「あの池には特に名前はないです。」
 「あの池はただの池です。」
 「クキガヤ池?クキガタニ池?そんな池はこの辺りでは聞いたことがないなぁ。」
 「九鬼ケ坂の横に、ため池があるのは知っているが名前までは判らない。」
 「知らないですね。」
という回答ばかりです。
 外来魚放流禁止の看板を設置していた漁協に確認すると、
「その池は、農業用のため池で養魚池ではないから、名前まではわからない。あの池にブラックバスを放流されると由良川水系のアマゴやアユに悪影響を与えて困るので注意的に看板を設置しただけである。」ということでした。
 誰も知らない?
 上平屋区とはどのような団体なのでしょうか、特別区(東京23区)の「区」や横浜・大阪など政令指定都市の「区」とは明らかに異なります。区役所や区議会などがあるのでしょうか。


4.九鬼ケ谷池と判明

 日本ダム協会さんに確認を依頼するのも一つの方法ですが、ここは在野のダムマニア(?)として独力で調べ上げたい。しかしながら、結局、地元の方からは「九鬼ケ谷池」という証言は得られませんでした。最終的な方法として、南丹市役所に確認することにしました。
 結果、「あの池には、『九鬼ケ谷池』という名前がつけられています。」という回答を得ました。こうしてみると最初から、市に確認すればよかったのかもしれません。これで、京都府の位置未確認ダムが1つ減りました。

 それにしても、どうして現地の人は名称を知らないのでしょうか?その謎は未だに解けておりません。

*付近には、由良川が流れており、決して水には不自由しなかったのかもしれません。ただ、由良川の水が導水できない高台のみ、この池から配水されたのかもしれません。
*他に、ため池がなかったので、役所は改めて名称を公布しなかったのかもしれません。

 ため池王国の香川県では、アースダムを含め位置未確認ダムはありません。ため池にはしっかり名称を付け、一滴の水も大切にする。それだけ水利権を意識している証拠だと思います。

5.終わりに

 南丹市美山町はきれいな水が豊かな良い所です。その水が育んだ牧草からできた牛乳はとても美味しいものです。地域住民とダムとの共存共栄を実現した都市です。
 春の桜・秋の紅葉で有名な「大野ダム」、温泉施設もある地域に開かれた「日吉ダム」はともに九鬼ケ谷池に近い場所にあります。
京都府のダムめぐりを計画されている方は、ダム見学だけではなく地元の名産品も愛でて下さい。


大野ダムのダムカード(近畿地方ダム連絡協議会作製)
(2009年11月作成)


→ ダム便覧の説明
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