「ダム建設功績者表彰」を頂いた。建設会社の場合はダム経験20年以上という筋金入りのダム屋が受けることになっている表彰である。来し方をふりかえって感慨を披露させて頂く、一ダム屋の生態がみえれば幸いである。
寒河江ダム(山形県 西川町)
32才で寒河江ダムへ赴任、以後ダムで28年間今日に至る。月山、朝日連峰を頂く豪雪地帯で10年、竣工式で顔を見合わせて「互いに年とったなあ」と大笑い、顔の年輪に現場の苦労が刻まれていた。建設省初の本格的なロックフィルダムということでまさに「月山の自然に挑む」(記録映画)であった。地元発展を担う希望のダムであり、町民所得も県内下位から上位に躍進、町長は「早く完成して欲しいが工事は続けて…」、またカップルの多数誕生に「地元の女性が減ってしまう」とも。 今、月山湖はダム湖百選にもなり観光客が絶えない。
宮床ダム(宮城県 大和町)
歴史の村宮床(伊達の城下町)を骨材運搬ダンプが通る。平成元年、社会がダムを見る目は厳しく、自然破壊、建設公害と肩身の狭い思いをした。県初のRCD工法について侃々諤々の議論が続く一方で、地元知識人や県の所長と「地元とダム」について話し合った。地元と共にダムを考え、流域の歴史を探訪、地元に埋もれていた治水に関わる民話を発掘、主人公をダムのアイドルにしてダム広報を始めた。暖かい地元の方々に現場の仲間も元気が出てきた。現場が終わってもアイドルは残った、教科書、道路標識、JA(農協)名称に、学校名に、ダム湖百選になった貯水地名に、彼の名はアサヒナサブロー。
「ダムどこでもドア」と「ダムなんでも相談室」
「ダムどこでもドア」(ダムどこ)はダム工事総括管理技術者会15周年記念として製作、紙芝居のつもりがパワーポイントに。各社の全面的な協力もあり半年で「ダムどこ」(初版)を完成。ダム批判のなかでダム技術者が市民に語りかける画期的なツールとなった。改訂版を重ねてダム工学会著作賞を頂くとともに、大ダム会議で世界に配布された。 水の週間行事で「ダムなんでも相談室」を出展、皇太子殿下ご高覧をはじめ多くの参加者があった。殿下や参加者の笑顔、そして「ダムものしり博士」として頑張るダム技術者の底力が印象的であった。
ふりかえればクリスタル
暗中模索と試行錯誤のなかで多くの人との恵まれた出会いと感動があった。地図がないところへの探検のように磁石と歩度計で地図を書きながら仲間とワイワイやりながら目的地を目指す、これが醍醐味かもしれない。 今、ふりかえればクリスタルである。 この賞は「私の卒業証書」、次の探検へのメルクマールとしたい。
(参考)関連テーマページ ダムの鉄人、それがCMED 宮床ダムのこころ〜民話「七つ森」を未来に伝えたい〜 ダム工学会15周年記念「ダムなんでも相談室」〜子供たちでにぎわう 「ダムなんでも相談室」−おんだん化とダムのやくわり− ダムの話〜宇宙船地球号と日本--ダムのやくわり〜 日本初のアンカー、ここにあり−藤原ダム 副ダム−
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