《このごろ》
特別インタビュー:庄嶋與志秀さんに聞く
「ダム空撮のDVDを近く発売します」

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 2013年暮のダムアワードで、萩原雅紀さんが監修する空撮ダムのDVDが販売されていました。その製作者が庄嶋與志秀(しょうじまよしひで)さんです。【絶景の「ダム」〜誰も見たことのないダム〜空撮ダム ダム湖からの撮影】と題したこのDVDには、誰も見たことのないアングルから、ダムの動画が紹介されています。
  さらに、本格的なDVDがこの4月にも発売されると聞きました。ダムアワードで販売されたものは、これまで撮りためた素材を急遽とりまとめたもののようです。

 今回は、製作者の庄嶋さんにDVDがどのようにして撮影されたのか?どういうきっかけで誕生したのか?などについて伺います。



萩原さんと組む

中野: ダムを空撮するというのが新鮮な感じがして、魅力的だと思いますが、ダムを空撮するという企画を考えられたのはいつ頃ですか? またどんな経緯だったんですか?

庄嶋: 実は、このDVDを製作するよりもずっと以前に、ダムに行って動画を撮ったことがありました。でもその時は作品としてはやや不本意なところがありました。それからしばらくして、動画の製作が一般的になり、ぜひもう一度、ダムを撮りたいと思うようになりました。その時頭に浮かんだのが萩原さんで、萩原さんの名前をfacebookで検索して、「ダムを撮りませんか?」と連絡したところ、是非一緒にという話になったのです。

中野: そうなんですか。これまで長年に渡って、音楽畑を中心に数々のアーティスト、俳優さん、著名人の写真やDVDの作品を制作して来られた庄嶋さんが、今度は、萩原さんと一緒に「ダム」を撮ることになったのですね。

庄嶋: 写真集やDVD作品のジャンルとしては、少し前に「廃墟」が来て、次いで「工場」が来ていました。そういうものにも、以前から目をつけていたのですが、なかなか、これというきっかけがありませんでした。ただ十数年前から、自分自身として「ダム」はすごいなって思っていました。しかし、当時、ほぼ確実に2、3万部は売れるだろうという本でないと大手出版社は動かない。それで、僕は持ち出しの製作予算で、DVDのプレスも販売もやるので、自分が見て納得がいくような面白いものを作りたいという企画を考え、萩原さんに投げてみたのです。


コストダウンの鍵は機材の進歩

中野: なるほど、最近はDVDの作品集もだんだんメジャーになってきて、出版社も積極的にDVD作品を出すようなってきていますね。ユーザーもパソコンで手軽に見られますし。

庄嶋: 写真集に代わってDVD作品が広まってくるということの裏には、どれだけ制作費を安くして作るかということが最大の課題だったのです。もともと映像作品は費用がかかりますから、それを安くつくるには、中間に人が介在しない方が良いというのは分かりきっています。だから僕がメインカメラをやって、プラスのスタッフとして、セカンドカメラはフリーの人を雇って、僕から指示を出すということにしました。機材については一切をこちらで用意して、どのアングルで撮って欲しいかを指示して撮影しています。普通は映像監督が指示するのですが、自分で監督兼カメラマンをして一人二役でコストカットをしています。もちろん録音もしてます。

中野: 今回の空撮DVDは、ダムを撮影する場所とか手馴れておられるようで、見ていてとても自然な感じがします。どういうふうに撮影されたのですか?

庄嶋: 本格的なDVDは実はまだ編集の段階ですが…。(笑)萩原さんとはおととしから、ずっと映像はハイビジョンカメラでダムを撮っていたので、そのうちぜひ空撮をやりたいという話になっていましたが、作品にするにはどれだけお金がかかるのか解っていませんでした。それが、去年の4月頃から世界的に空撮ブームが来て、一般の人が買える高性能のマルチコプターが発売されたのが大きなポイントでしょう。(笑)


入手可能なラジコンヘリを全部試す

中野: カメラが搭載できる、画期的なマルチコプターも登場しているようですが、専門の人間を集めてチームを組んで、実際の撮影も大変だったという記事を読んだことがあります。今回のDVDは、いかがでしたか?

庄嶋: 僕の場合は、機材を全部買って自分なりに組み立てて、どう撮影するかを最初から勉強してシステムを組みます。昨年の後半だけでマルチコプターを3機も購入ました。

中野: 独自の撮影スキルを磨くために、ご自身で組み立てるこということですか?

庄嶋: マルチコプターは、完成品を買うのではなく、自分で組み立てます。すぐに飛ばせるものではないので、最初は一ヶ月以上練習しました。ダムの撮影は一回水に落ちたら終わりです。一回失敗すると、それだけで何十万円もパアなりますよ。(笑)だから、今でも緊張感が半端ではないです。
 撮影は、全て自分でテストをして、自ら撮影をして編集までします。ダムについても、だいたいどの角度で撮ればいいかというのは、現場を見れば30年もカメラマンをやっていますから僕自身わかります。マルチコプターの操縦と、カメラ撮影が同時に出来る人は少ないですね。影とかも考えていますし、同時に音も撮らないといけない。
 この間、二瀬ダムが試験放水をした時に萩原さんと行きましたが、管理事務所の方から許可をもらって、「今から放水します」ということだったので、その場ですぐに飛ばし、撮影を始めました。


中野: 試験放水の時は、風とか水とかのことも考えてマルチコプターを飛ばさないといけないので、条件が厳しくて大変ではないですか。

庄嶋: そうですね。矢木沢ダムに行った時は、風速10mくらいあったのですがそれでも撮影は全然大丈夫でした。

中野: いろいろ調べて自分で組み立ても経験されているから、機材については熟知されているということですね。

庄嶋: 撮影当日に、実際に映像が撮れないと困るので、予備機を入れて2機を持っていきます。音は別に録って編集の時に合わせるとより迫力が出てくるので、そういうやり方をしています。
 撮影前の準備を助手だけに任せるようなことはありません。撮影に際して起こりうることの全てに対応しようと考えて準備します。決してミスは許されない仕事です。


体調管理しておかないと良い仕事は出来ない

中野: 厳しい仕事なんですね。普段から体調管理にも気を遣われているんですか。

庄嶋: 原則、僕は午後6時以降の仕事はしません。朝は5時に起床、夜は10時に就寝。そういうスケジュールをもとに体調管理しておかないと、良い仕事は出来ないという考えです。海外ロケに行っても行動は全く同じで実に健康的です。(笑)


ダムドルで一工夫

中野: 庄嶋さんのDVD作品はダム以外にも幅広く、ミュージシャンや女優さんの撮影もされておられますが。

庄嶋: これまでいろいろやりましたが、基本的に自分で面白いと思えるものがいいです。

 ダムも撮っていてすごく面白いのですが、ひとつだけ引っかかるところがあります。それは、映像が「ダム」だけなので、萩原さんのようなダム好きさんは、それで良いかもしれないですが、僕にはどうしても何か物足りないと思っていまして。だから、今回は「ダムドル」というダムのアイドルを仕立ててしまいました。今回の撮影でも、実際にダムの管理事務所の許可も頂いて「ダムドル」を入れて撮影しています。

中野: ダムの映像に、美しい人が入るのも良いですね。モデルさんですか?

庄嶋: いいえ。ちゃんとした女優さんです。作業着を上野まで買いに行って彼女に着てもらい、ヘルメットも被ってもらいました。ナレーションもやってもらっています。女優さんならではの声のトーンもありますし、ダムの説明を萩原さんや僕がやってもしょうがないと…。(笑)

中野: この「ダムドル」の方は、どこのダムに撮影に行かれたのですか。

庄嶋: 矢木沢ダムと奈良俣ダムに行きました。

中野: 主に関東中心ですか。

庄嶋: 予算と日程調整もあるので、萩原さんと相談です。海外もあるかも知れませんが、今のところは未定ですね。

中野: シリーズ化できるといいですね。何かテーマを決めて、例えば古いダムを撮るとか…。

庄嶋: リクエストをいただければ、萩原さんと二人でダムに行って、DVDなら簡単に出来てしまいます。他の人はいりませんが、ダムに行った時に若い女性が一緒だと、管理事務所の方が一所懸命説明してくれて、すごく優しくしてくれます。だから僕らは撮影に専念できて助かります。(笑)


ダムをもっと身近に感じられるように

中野: 彼女もダムのことが解ってもらえて好きになってくれるといいですね。


庄嶋: 今までたくさんタレント事務所を回りましたが、ダムのモデルさんは、綺麗すぎはどうもダメですね。彼女みたいに作業着やヘルメットが似合う娘でないと。予想通り彼女はダムに連れて行ってぴったりでした。見てもらって楽しいダムのDVDを作ることが課題です。

 普通、ダムのような大きな構造物は広角レンズで撮らないとだめなのですが、最近ではいい機材やカメラがたくさん出回っています。コンパクトなカメラでも手振れもしないしダムの内部もきれいに撮れるというものがあります。以前から何度も撮りに行ったダムも、今は明らかに綺麗な画像になっています。

 僕自身が、デジタル系が大好きということもありますし、今はちょっと勉強すればなんでもできてしまう時代です。

 自然の中にある巨大なダムは、撮影対象物としては本当に面白いです。今は技術的に向上していますから、スチールも動画も一緒に撮って、どんどんパソコンに落としていって作品にまとめることができるので、とても楽しい時代になりました。
 カメラマンだけの仕事にこだわっていると可能性がどんどん狭まります。どちらかというと、これからはマルチ映像の時代でしょう。そういう面からもダムにアプローチしていきたいと考えています。

中野: 近く、これまで撮りためたダムの映像を本格的にとりまとめたDVDが出るそうですね。

庄嶋: ええ、ダム空撮のDVDを近く発売します。いいものを作ろうと、現在急ピッチで準備を進めています。今の予定だと4月になると思います。

中野: ダムは、私たちの生活の場からは相当に遠くにあって、なかなか見に行く機会が少ないのですが、「ダムドル」の登場でより身近に感じられると思いますし、空撮で今まで誰も見たことのないアングルからダムが見られと思います。新しいDVDの発売を楽しみしています。
 本日は、楽しいお話有難うございました。



(参考) 庄嶋與志秀さんプロフィール

アメリカUCD留学中に4人の有名カメラマンに師事
1985年 原宿に庄嶋写真事務所を設立。
音楽関連:B’zや川中美幸のCDジャケット撮影。MUSIC PVなどの映像製作。
雑誌関連:女性誌(WITH VIVI VOCE MORE nonno)音楽誌、企業雑誌等。
広告写真撮影。
撮影した方
作家(志茂田景樹、田辺聖子、故池田満寿夫、林真理子、水上洋子)      
撮影した人物
(シンディーロパー、徳永英明、鷲尾いさこ、仲村トオル、石井竜也、西田ひかる、本田美奈子、大黒マキ、SMAP、松田聖子、など多数)
2005年 マツケン写真集
2006年 DVD制作(君島十和子から海外向けの医療関係機器の紹介まで幅広い制作をする)
2012年 武田久美子DVD
2012〜2014年 美木良介 ロングブレスDVD、本 5冊全て制作

(2014.2.25、中野朱美)
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