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特別インタビュー:庄嶋 與志秀氏
〜 誰も見たことのないダムを撮る 〜

 プロカメラマンの庄嶋さんが製作された新作ダムDVD「誰も見たことのないダム−絶景ダム−空撮」が7月1日に発売されました。
 そこで、このDVDについて庄嶋さんに伺うためにインタビューをさせていただきました。実は庄嶋さんのインタビューは今回が2回目です。前回のインタビュー(1/16)では、この作品の製作過程を伺っており、アマチュアでも簡単に飛ばせるリモコンヘリの「マルチコプター」にビデオを搭載して撮影するのですが、様々な空撮機材を揃えていくところからお話を伺いました。今回はもう少し突っ込んだお話を伺えそうです。


 
 
ダムナイト6で先行発売

中野: DVDの一般発売のすぐ後に開催されたダムイベント「ダムナイト6」の会場でも販売されたようですが、ダムマニアさんの反響はいかがでしたか?彼らはダムを見ることにこだわっているので、写真集などのビジュアル作品については辛口のコメントが多いのですが、どのような生の声が聞けましたか?

庄嶋: 今回、特に厳しい事は言われませんでした。新発売の記念で、購入頂いた方にはオリジナルポスターをプレゼントさせていただいたのですが、会場では20本ほど売れました。最初の反応としては、DVDではなくブルーレイディスクで販売して欲しいという要望でした。動画はハイビジョンで製作しているので、ブルーレイにも対応でき、画質はきれいなのですが、コストが上がってしまうのでこれはかなり厳しいですね。動画自体は最新式の機器で編集をしているのでDVDにしてもクオリティが高いと思いますが…。

3ダムを選んだ理由

中野: 今回、被写体となっているのは、3つのダムで、矢木沢ダム(コンクリートアーチダム)、奈良俣ダム(ロックフィルダム)、二瀬ダム(重力式アーチダム)ですが、この3つを選ばれた理由は何ですか?
 監修のダムライター萩原さんとは、企画を進めるに当たってどのようなお話をされたのでしょうか?

庄嶋: 萩原さんとは、撮影ダムの選定からアドバイスを頂きました。
 こちらとしては絵的に良いと感じたものをチョイスしており、実は他のダムもすでに撮影済みですが第一弾としては、矢木沢ダム、奈良俣ダム、二瀬ダムの3基にしました。ダムの形式としてはコンクリートアーチダム、ロックフィルダム、重力式アーチダムとなりましたが、萩原さんの意見も聞きつつ、この3基になりました。萩原さんには、ナレーション録りの時に事務所に来て頂き、ダムの説明する時、話し方を指導頂きました。


DVD「誰も見たことのないダム−絶景ダム−空撮」
出演した女優さんがダム好きに

中野: 女優さんが、ビデオに出ておられるようですが。

庄嶋: 2人に出演をお願いして制作しました。DVDが発売されると、「ダムアイドル」になりたい子が出てきたり、ネットでもAKBの子を出演させて欲しいとか書かれていました。

中野: ダムドルの女性がヘルメット姿で登場し、ダムの内部を歩いていく構成にされたのは、やはり萩原さんと相談されたからなのでしょうか。

庄嶋: 実は、ダムを空撮するアイデアは後から出たもので、始めは女性がダムの内部を歩く構成だったのです。ダムの管理事務所の方も、やはり男性が行くより女性の方が、親切に説明もしてくれますし優しいですよ。

中野: 土木学会は2014年11月24日に創立100周年を迎えます。その広報活動の一環としてFBで100周年までのカウントダウンをしているのですが、そこに登場いただいてカウントボードを持って写真撮影していただける方を募集しています。女性が出るとアクセス数が上がるのです。そこにも出てもらいたいですね。

庄嶋: 面白いですね。事務所の許可をもらえれば大丈夫です。

中野: 今回、登場しているモデルの方も、ダムのことが少し分かるようになってくれましたか?

庄嶋: また連れて行って欲しいと言っていました。

ダム君登場

中野: DVDのジャケットにあったキャラクターの「ダム君」の話をお聞きします。DVDの裏面にアシスタントの足立さんが書かれたイラストがありましたが、初めから使おうという計画があったのですか。

庄嶋: ジャケットのデザインをする時に撮りためた写真がたくさんあるのでそれらを使おうということになって、その素材の一つにダム君も遊びで入れてみたのです。ダムのキャラクターがあれば、バッジ、タオル、ポスターなどのグッも作れるかなと思って期待しています。(笑)


中野: ダム君も売れてメジャーになって欲しいですし、足立さんも土木学会のFBでカウントダウンにご登場頂きたいです。

庄嶋: 彼女には「レイナ」というペンネームがあり、イラストもデザインもやりモデルもやっているマルチな人ですから、ご要望が多ければ登場するでしょう。


足立さん
DVDジャケットに秘密が



中野: DVDのジャケットは裏面にもデザインが施されていますね。

庄嶋: よく気づきましたね。今回、ちょっと変わったことをしたかったのでやってみました。実は萩原さんの写真も入れてあるのですが、本人は気づいてないでしょうね。DVDを2枚購入してくださった方はジャケットを表裏差し替えることもできるようになっています。

中野: ジャケットもいい写真ばかりで遊び心もあって面白しいですね。

庄嶋: DVDのジャケットにある「ZD」ってわかりますか。これは、Zekkei Dam「絶景のダム」という意味なんです。また第2作を作るかもしれませんので、その時も引き続き使っていこうと思っています。
放流シーンで綺麗な画像が撮れた

中野: 今回、ダムの空撮にチャレンジしてみて、被写体としての特徴はどうお感じになりましたか?前にお話を伺った際に、二瀬ダムで放流シーンを撮られたとお聞きしましたが、矢木沢ダムと奈良俣ダムの放流も撮られたのでしょうか。

庄嶋: 矢木沢ダムの放流の時は、実はあまりに見物人が多くてマルチコプターを上空に飛ばすにはちょっと危ないので別の日に撮影に行きました。マルチコプターはビデオカメラを1000m上空まで飛ばすことできるので、ダムだけでなく放水路の上も全部撮影できました。奈良俣ダムでも、放流の時は人が多くて危ないので、1週間後に撮りに行きました。今は、画面を編集していてもマルチコプターの技術の進歩を感じますね。動画ですが、じっと見ているとまるで揺れていない静止画です。画面が揺れないので放流の水だけが流れている綺麗な画像が撮れる訳です。

中野: 放流の時はどのくらい見物客がいたのでしょうか。

庄嶋: 放流は午前11時からでしたが、8時頃に着いた時には、すでに沢山の見物人が来ていました。全部で1200人くらいが来ていてお祭り状態でした。ダムへの道路は400mくらい車がつながっていましたしTV局も取材に来ていました。
 放流時は周囲の声がすごくて、編集で全部カットしました。すでに撮り溜めている宮ヶ瀬ダムでは放流の音だけを撮ってきて編集で合成しようと考えています。最近は、空撮用のPCアプリも出ていて、画面のゆがみも自動修正してくれますから、とても助かります。

中野: 今回の作品でここが満足だったということはありますか。

庄嶋: 矢木沢と奈良俣の放流がDVDの完成に間に合ったということと、どこも天気が良くて飛ばせたことですね。運が良かったです。DVDは、先週のamazonのランキングで6位までいきました。矢木沢ダムの放流があった時にはTV局に私の撮った動画をお貸しました。あと出演したモデルの関係で、アイドル関係にも放流のビデオをお貸しました。

進化するマルチコプター

中野: マルチコプターが出てきたことで、どんどん空撮の技術が進化して、作品のクオリティがどんどん高まっていく訳ですね。

庄嶋: 空撮というと、昔はカメラマン自身がヘリに乗っていって撮る。膨大なコストがかかるということしか想像できなかったので、まず空撮するという発想がありませんでしたが、マルチコプターの登場で空撮がとても身近になりました。しかし、実際にやるにはものすごく操縦を練習しないとモノになりませんよ。(笑)

中野: 操縦はそんなに難しいのですか?少しの風でも流され落ちたりするのですか?

庄嶋: 慣れさえすればそんなに難しくないですよ。GPSがついているので、狙った場所で止まっていてくれるのでそれは便利です。また自分からは見えないところに機体があるという場合でも、手元のモニターに出る表示で、被写体との距離もつかめます。


撮影時に苦労したダムは

中野: 実際の撮影で、いちばん苦労されたダムはどこですか?撮影時に一度マルチコプターが落ちたそうですが…。

庄嶋: 落ちたのは矢木沢ダムです。一秒間に30tの水が流れ落ちているという場所での撮影経験はありませんから、高い場所から多量の水が落ちることで風が起こり、ダムの壁面に沿って上昇気流になって舞っていて、マルチコプターが持って行かれました。こちらもしぶきで全身ずぶ濡れになりました。マルチコプターは飛ばして6〜7分で落ちましたが、木にひっかかっていたので機体を回収でき本当にラッキーでした。この時は、2機目を飛ばしてようやく撮影できました。ダムに沿って舞う上昇気流はいい経験になりました。

空撮すると見られるダムの魅力

中野: ダムの空撮で、魅力を感じるところはどういうところでしょうか?おそらくそれが作品の最大の売りの映像になるかと思いますが、どういうところが誰も見たことがないというアピールポイントになるのでしょうか?

庄嶋: 土木系の被写体には事欠きませんね。高速道路のジャンクション、橋梁、それに化学コンビナート。今まで見ようと思っても、ヘリでの空撮だと大掛かり過ぎて実現しそうになかった場所がマルチコプターのおかげでどんどん見られるようになります。それを見越して今は千葉大学が業務用に技術開発を始めています。今後、その市場は8兆円規模と…。計測やレスキューなどの専門分野から、いろんなところで使われるようになると思います。
 矢木沢ダムでは管理事務所の人に、ダムを点検するのに飛ばせますか?と聞かれましたがもちろんだし、動画だけでなくスチル写真も撮れるので実用的だと思います。

中野: ダムの改修など、管理事務所でも役立ちそうですね。

庄嶋: マルチコプターは土木分野では維持管理への利用が注目されているようです。

撮影以外は事務所で編集作業

中野: 普段は、ここの事務所で動画の編集も自分でされているのでしょうか?

庄嶋: 最近は、ロケに行かない時は、一日中ここの事務所で動画やグラフィックの作業をしています。編集のソフトもどんどん新しいものが出てくるし、機材についても常に勉強してマスターしていかないといけないと思っています。それにこのところDVDの制作依頼も増えていますから、撮影が追いつかないですよ。


 
ダムを魅力的に撮っていきたい

中野: 最近、行かれたダムは他にもありますか?

庄嶋: 先日行ったのは城山ダムです。ここは、天端が国道になっていて普通に車が走っているので、通過してもダムとはわからないです。いろんな方のダムブログを参考にして行きました。ここは、下から見たら工場みたいにも、廃墟みたいにも見えるので面白いから少し撮ってきました。自分なりには、次回作にはもっと工場っぽいダムを提案してみたいと考えています。

中野: ダムはひとつ一つ違いますからね。今後、作品を通じてプロの写真家の見たダムの魅力をご紹介頂けるといいですね。変わったところでは、夜のダムの撮影はどうですか。

庄嶋: 別の仕事で、夜の空撮をしましたが、カメラの性能も良くなっているので、暗くてもちゃんと映ります。マルチコプターは、以前よりも倍くらい長く、だいたい15分くらいは飛ばせます。どんどん進化していますから、今後は単に個人の趣味でやるのは難しいかも知れません。夜、撮ると、ダムは動かないから星の方が回るのです。被写体としての魅力は、四国の豊稔池とかいいですね。ダムがお城みたいで幻想的に感じますね。

ダムを知ってもらうためにできること

中野: そうですね、土木遺産になるようなすてきなダムも是非撮り溜めていただきたいですね。

庄嶋: まずは、ダムマニアさんにDVDを買って頂いていますが、やはり多くの一般の人が買ってくれるにはどうしたらいいのかを考えていますね。僕のルートですとカメラマニアが多いので、ダムを撮るには、こうすれば上手に撮れますよと、教える企画をいま提案しています。

中野: ダムは私たちの暮らしからは遠くにありますし、近寄っても大きくて全体が見えないということもありますから、きれいな画像があれば興味をもっていただけるのではないでしょうか。

庄嶋: 実は、黒部ダムも空撮で撮りたいですが、きちんと企画をたてていかないと観光化されているので許可をもらうのが難しいと思います。こういうことも順次やっていきたいです。
 巨大構造物は、画像修正まで出来る無人飛行機(ドローン)を使えば特殊なアングルからの撮影ができますから、相当にカッコイイ写真を撮影することが可能となります。空撮だけではなく画像を組み合わせて編集をすればよりいいものができます。台風の時も行きますが、何回も足を運びたくなりますね。

中野: そういうところは、まるでダムマニアさんみたいですね。


庄嶋: だいたい朝は、4時半には起きていますから、ダムマニアさんのように朝早く出かけるのは平気です。大体、ダムの放流シーンはカッコイイですからね。

空撮はルールを守れないと事故に

中野: 空撮という新しい視野、視点が一般化していくことで、この先ダムにどんなことが起こるか想像できますか?



庄嶋: 私には、現在、ネットで1000人くらいの仲間がいますが、空撮の時は、まず「人の上には絶対に上げてはいけない」「ダム事務所の人の、許可をもらう」などは当然ですが、マルチコプターはLipoバッテリーを搭載しているので軽いし、よく飛ぶのです。この電池を使う事で、今まで電動では飛ばなかったものが飛ぶようになり、新たな可能性ができました。
しかし一方で間違った使用方法による火災や事故なども起こっています。操作も難しいですし安全を確認して飛ばさないといけない。人混みで飛ばして墜落した画像をYou Tube にあげて書類送検された例もありました。航空法の規制で今は250mが限度なのですが、その人は電波塔の上まで上げていたから捕まったようです。電波法、航空法などいろんな法律があるので守って欲しいです。またダムの撮影も許可をもらわないといけません。そういうルールを守れないと事故につながるのです。
中野: ルールを守れれば、面白い画像も撮れるのですからね。一方、守らないと技術も発展していかなくなりますね。それを踏まえて、新しい作品の構想はあるのでしょうか。
先日、湯田ダムで50年ぶりの放流がありましたが、そういうところも撮りにいけるといいですね。

庄嶋: そういった情報を予め教えて頂ければ撮影に行きますよ。

中野: 改めてダムに行きたくなるようなDVDになりそうですね。

庄嶋: これからは一般の人にどうアピールしていったらいいかを考えていますね。いままでにダムに興味がなかった人が振り向くようにするには、芸術的なものを創造するというのも手です。ひとつの提案としては写真集にDVDをつければ、動画の放流シーンも見られるし、紅葉もみられるので面白いと思います。結構安くできるのでお勧めです。ダムの専門家の方のインタビューも入れられたら本当にいい。写真も動画も見たいですからね。ダムによってそれぞれ役割が違いますから、自分なりにアレンジして撮っていくのも面白いかなと考えています。

中野: 本日は、面白いアイデアを一杯伺うことが出来て良かったです、楽しいお話をありがとうございました。



(参考) 庄嶋與志秀さんプロフィール

アメリカUCD留学中に4人の有名カメラマンに師事
1985年 原宿に庄嶋写真事務所を設立。
音楽関連:B’zや川中美幸のCDジャケット撮影。MUSIC PVなどの映像製作。
雑誌関連:女性誌(WITH VIVI VOCE MORE nonno)音楽誌、企業雑誌等。
広告写真撮影。
撮影した方
作家(志茂田景樹、田辺聖子、故池田満寿夫、林真理子、水上洋子)      
撮影した人物
(シンディーロパー、徳永英明、鷲尾いさこ、仲村トオル、石井竜也、西田ひかる、本田美奈子、大黒マキ、SMAP、松田聖子、など多数)
2005年 マツケン写真集
2006年 DVD制作(君島十和子から海外向けの医療関係機器の紹介まで幅広い制作をする)
2012年 武田久美子DVD
2012〜2014年 美木良介 ロングブレスDVD、本 5冊全て制作

[関連ダム]  矢木沢ダム  奈良俣ダム(元)  二瀬ダム
(2014年9月作成)
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