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日本で人口密度が最も低い市町村は、岐阜県揖斐郡藤橋村(1.43人/平方キロ、2004年5月現在)である。(統計上は東京都三宅村が人口ゼロで人口密度最低であるが、同村は火山噴火により全住民が避難したことにより一時的に無住状態となっているからである。)二位の福島県檜枝岐村は1.89人だから、当分その地位は継続するであろう。 藤橋村が人口密度最低の市町村となったのは、1987年(昭和62年)4月で、このとき隣村の徳山村を編入したからである。現面積は324平方キロであるが、このうち旧徳山村は255平方キロ(約79%)を占める。旧徳山村は、徳山ダムの建設により全村の居住地が水没し、全人口が村外に移転することが予想された。無住村となるのだが、その編入先となったのが揖斐川下流に隣接する藤橋村であった。
では、人口がゼロとなった市町村を隣接する市町村に編入することは、常に合理的なことであろうか。編入先の市町村の規模や財政力が大きく、編入後の負担が小さい場合はあまり問題とならないであろう。だが、1980年の国勢調査では、徳山村の人口が1,306人、藤橋村の人口は640人であり、しかも徳山村に居住していた人々は大部分が藤橋村以外に移転することが想定された。実際、一般補償基準の妥結は1983年11月であったが、その前後の両村の人口推移を見ると次のようになっている。徳山村から藤橋村への人口の流入は無かったのである。
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旧徳山村の住民は、移転後も村内に山林等を所有するから編入先の市町村と無関係になるわけではないが、藤橋村との合併を積極的に推進するインセンティブには欠ける。また、移転先は区々であり、旧徳山村の編入先について強い関心があるわけではない。極めて受動的に町村合併を進めなければならなかったのである。このような事情のもとで、単に隣村であるという理由だけで藤橋村が行政的な負担を負うべきであると考えてよいのであろうか。必ずしも単純な問題ではない。
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ではこのような、公共事業により消滅した市町村の帰属は、どのように考えたらよいのか、徳山ダムの用地補償を検討する過程で議論されたことなどを含めて、紹介してみたい(注1)。
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ありし日の徳山村徳山(本郷)地区 |
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(注1)筆者は、建設省河川局開発課(当時)に勤務し、徳山ダムの用地補償事務を担当した経験がある。ただし、ここで述べる議論は同課の見解ではなく、事実関係、意見等は総て筆者に責任がある。
(参考)筆者紹介 1951年生まれ。近著に、「建設投資の経済学 −投資のメカニズムを探る−」(日刊建設通信新聞社刊、2004年)がある。
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[関連ダム]
徳山ダム
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(2004年10月作成)
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