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◇ まず帝釈川ダム・新帝釈川発電所等の説明を受けます

当日はとてもよい天気になりました・・そう、今日はダム日和・・
集合場所は広島県庄原市東城町にある、新帝釈川発電所建設所・・

まず、建設所の2階で副所長さんが建設工事や帝釈川ダムの概要を説明してくれました。パソコンのプレゼンテーションソフトを使い、それを見ながらの話はとても分かりやすかったです。


新帝釈川発電所建設所での座学の様子・・副所長様が分かりやすく説明してくれました。
帝釈川ダムの概要

帝釈川ダムは大正9年に関西や岡山方面に送電するために計画着工され・・大正13年に完成、堤高(高さ)は56.4mで、当時国内最高のダムだったそうです。(単行本「ダムのはなし」の中には出てきませんが、温井ダム資料館のダムの歴史の展示には、ちゃんと一時的に国内最高だったことが書いてあります)そして、昭和6年にダムを約5.6m嵩上げし、堤高62.1mとなりました。昭和41年に洪水吐(こうずいばき(大雨等の時にダムの水を安全に放流する設備です))の改良が行われています。

ダムの特徴としては、幅より高さが高いこと、急峻な渓谷にくさび状に設置されていること、洪水吐(こうずいばき)がトンネルであり、ダム本体は非越流型となっていること(ダムの上から水を放流するようになっていない)・・ダムの体積が小さく(横幅が狭いため)、貯水効率が高く(ダムの体積と貯水池の容量の比率です・・ダムが小さく、貯水池の容量が大きければ効率はよくなります)、国内4位であること・・等があり、貯水池の神龍湖は国定公園・帝釈峡の一部で観光地となっており、遊覧船が運行されています。

リニューアル工事の概要

さて、帝釈川ダムのリニューアル工事及び新帝釈川発電所の工事については、帝釈川ダムが建設から80年たっているので補強等をしたい、せっかく高さが60m以上のダムでありながら未利用落差が35.6mもあり、これを有効利用したいこと(水力発電を行う場合、同じ水の量なら落差が大きいほど発電出力を稼げる)。トンネル式洪水吐だけでは、大洪水の時、放流能力に不安があり、ダム本体にゲートを設置して、十分な放流能力を確保したい・・といったことがあったそうです。そして、既存の帝釈川発電所は帝釈川ダムと福桝川(ふくますがわ)取水ダム(堤高15m未満なので正確には堰です)からの水をあわせて発電していましたが、これを福桝川取水ダムからの水だけで発電するように規模を縮小して、既存の帝釈川発電所の横に新帝釈川発電所を建設することになりました。当然、導水路トンネル等も新設することになります。

既存の帝釈川発電所の出力は最大4400KWですが、新帝釈川発電所は最大1万1000KWの出力を得られるそうです。既存の発電所が縮小され2000KW程度になるものの、新・旧帝釈川発電所両方あわせると年間発電量は従来の1.5倍程度になるそうです。
工事前に、既存の堤体の調査が行われましたが、建設から80年たっていてもコンクリートの強度などに全く問題なく、既存の堤体の一部を掘削し大半は利用したうえで下流側にコンクリートを打ち増すことになったそうです。

景観・環境に配慮した工事

工事にあたっては、現場は国定公園内であり数々の制約があります。まず、現場へ通じる道路は拡幅が許可されず、車一台が通れるような道(幅3.5m)しか使えない。ダムの工事なら当然重機を入れたいのですが、この道路幅がネックになりました。現場では80トンクレーンを使っていますが、本来はもっと大きなものを使いたかったそうです・・でも、道路を通れるギリギリの大きさのクレーンがそれだったので、これを使うしかなかったそうです・・なお、カーブなどは仮設の足場で拡幅してありましたが、これらも、工事完了後は、工事前の状態に復元することになるそうです。
工事現場は仮設の足場で道路等が作られていたが、これも工事完了後には撤去され、景観への影響がないよう配慮しています。80トンクレーンでは堤体の最下部まで届かないので、古い堤体の上にも仮設の足場を作り、クレーンをそちらへ動かして作業したそうです。

工事は環境への影響を配慮しながらの工事で、現場付近の希少動植物は他の安全な場所へ移動しました。また、クマタカの生息が確認されたので、クマタカの繁殖期には掘削工事は原則として行わない・・機材も低騒音型のものを選び、防音シート等も使ったということです。そして、常に、そういった生物のモニタリングを行っているそうで、何かあれば専門家から意見を聞くようにしているとのことです。

ダムの工事は・・

現場が急峻な崖で囲まれているので工事も難しく・・ある意味、手作業の工事になっているそうです・・見学当日も工事は行われていましたが、重機は動いておらず手作業でした・・また、古い堤体を掘削してできた岩や土砂を運び出すのにはやはりダンプが使われていますが・・拡幅できなかった狭い道を通るそうです。そしてコンクリートを運ぶミキサー車も同じ道を通ります。

ダムの工事では、コンクリート製造設備を建設現場近くに作って、そこからコンクリートを供給するのですが、帝釈川ダムの改造工事の場合、既存のコンクリート製造設備を利用してコンクリートはそこからミキサー車で運ぶ方法がとられました。

さて質問

Q.
比較的出力が小さな水力発電所を改造する理由は?

A.既存の設備を有効利用するという考え方です。つまり未使用落差を使うことにより有効にダムを利用できます。また、放流能力をアップすることにより安全性が増し、以前より若干高い水位での運用が可能になります。

Q.新帝釈川発電所の年間発電量はどの程度になるのでしょうか?・・

A.従来の帝釈川発電所の年間発電量が2280万KWhで、新帝釈川発電所は3520万KWh程度になるものと考えています。

Q.今までで最大の放流量は?

A.昭和47年の水害の時で毎秒650立方m(トン)・・トンネル式洪水吐の最大放流能力・毎秒750立方m(トン)すれすれのレベルです。
トンネル式洪水吐は、放流能力以上の放流は事実上不可能です、だからぎりぎりでした。通常の放流設備なら水位が上がれば放流量も増えるので、能書きの放流能力より若干余裕があります。

Q.ダムといえば貯水池が砂ですぐに埋まるといった報道がありますが、帝釈川ダムの碓砂の状況はどうでしょうか?

A.砂はほとんど貯まっていません。もし、ある程度以上貯まれば浚渫等の対策を行うことになりますが、そこまで砂は貯まっていません。

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