[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]


「水特法」制定後

 水没戸数が多いダムは事態が深刻である。ダム事業により地元に与えるマイナス影響が大きい場合は、個人補償公共補償だけでは水没者の生活再建は出来ない。昭和30年代後半に入って、水没戸数が200戸を大幅に越えたのは御所ダム(440戸)、八ツ場ダム(340戸)、宮ケ瀬ダム(300戸)、手取川ダム(330戸)、大滝ダム(399戸)、苫田ダム(460戸)、川辺川ダム(403戸)等である。


これらのダム建設が具体化する段階で、ダム事業者が行う損失補償を中心に、水没住民の生活再建、水源地域の生活基盤の整備、上下流の相互理解を深めるための施策など水源地域に対する抜本策を行う必要が生じてきた。同時に、ダム建設に伴う影響緩和のために水源地域の自治体は、通常の規模を越えた社会基盤整備を行わなければならず、@一連の事業に対する国の補助率の特例(かさ上げ)の制度化、A水源地域の自治体の行う基盤整備事業に対する下流受益者の負担導入が、ダム事業の円滑な推進のために不可欠となってきた。

 こうした深刻な状況を考慮して、昭和48年水源地域対策特別措置法(「水特法」)が制定されたのである。同法はダムまたは湖沼水位調節施設によって、著しい影響を受ける地域の生産機能や生活環境への影響を緩和するための多様な対策を講じることによって地元住民の生活の安定と福祉の向上を図り、ダム等の建設促進を目指すことを目的としている。画期的な法律といってよく、平成6年にはダム貯水池の水質汚濁防止が追加された。

 「水特法」の適用対象となるダムの水没規模は、水没戸数20戸以上、または水没農地面積20ヘクタール以上(北海道は60ヘクタール以上)。指定を受けた際には、都道府県知事は水源地域整備計画案を作成し、内閣総理大臣が決定する方式となっている。同法が施行されて以来、平成11年度末までに指定されたダム等は94ダムと1湖に上る。同法に基づいて地域整備計画の対象となった主なダムを上げてみる。@御所ダム(旧建設省、所在地岩手県、水没戸数440戸)、A手取川ダム(旧建設省・電源開発(株)・石川県、所在地石川県、水没戸数330戸、B浅瀬石川ダム(旧建設省、所在地青森県、水没戸数201戸)、C宮ケ瀬ダム(旧建設省、所在地神奈川県、水没戸数300戸)、D大滝ダム(旧建設省、所在地奈良県、水没戸数399戸)。平成10年度に実施された整備事業の内容を見てみる。事業関連公共施設としての道路(50%)、土地改良(11%)、治水事業(6%)の割合が計67%。残る林道、スポーツ・レクレーション施設、下水道、簡易水道がいずれも5%である。生活保障を核として手厚い補償が行われるようになった。


[前ページ] [次ページ] [目次に戻る]
[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]