水環境への影響とその解決策B:水温・水質汚濁問題
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ダム式発電所は、ダム湖底部取水による方流水温低下をはじめ水路式発電所では長い管路によって導水するため水温が上昇せず冷水のまま送水される。その結果、水田には水稲の生育に適した水温の用水が流れ込まず、また中・下流の漁業への被害につながる。発電施設のもたらす冷水温被害は既に戦前から問題となっていた。貯水池における施設での対応としては、昭和28年(1953)頃より水位に追従する取水ゲートや複数の取水口などにより、表層付近の温水を選択的に取水可能な表面取水設備が設置されるようになった。
大井川水系井川ダム(中部電力(株)、32年竣工)が代表例のひとつである。農水省、静岡県知事、大井川土地改良区、中部電力の4者間で調整を行い、井川ダムの放流水は約43キロメートルの水路トンネルを流下し、直接大井川農業水利事業の用水路へ導水されることになった。その結果、大井川本川から取水する場合に比べて、灌漑水温が低下し水稲の発育を阻害して、稲作の収穫が減少することが懸念された。農水省、静岡県、学識経験者、中部電力で構成される「大井川川水水温対策調査会」での検討の結果、井川ダムの取水口を底部固定方式から10メートル程度の表面取水方式に変更することによって、水温低下の回復が推定されるとの結論を得て、その方式が実施された。45年頃には、濁水・富栄養化対策もあって、選択取水設備が導入された。この装置は、貯水池の表層、中層、底層の任意の層から取水が可能な設備である。
洪水により濁水化した貯水池から取水・放流する場合、中・下流の生物生息環境や景観はもとより、下流のアユ漁業や水道の取水・上水道施設に少なからざる被害をもたらす。濁水の長期化対策は濁質の発生・流送、貯留の過程から@発生源対策。早明浦ダム(水資源機構)が代表例である。A河川内対策。旭ダム(関西電力(株))、上大須ダム(中部電力(株))が代表例である。B貯水池内対策。ここでも早明浦ダムが知られる。以上3つに大別される。
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