[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]


9.有峰ダム(常願寺川)の建設

 常願寺川は、その源を立山連峰に発し、真川、称名川、和田川、小口川などの諸川を合わせ、富山平野を貫流して富山市近郊において富山湾に注ぐ、延長約50km、流域面積約 360km2の一級河川である。

 常願寺川有峰発電計画は、昭和11年9月富山電気局が着手したが、電力管理法に基づき日本発送電(株)に承継された。その後、日中、太平洋戦争のため基礎工事の一部を実施したのみで工事の中止に至った。

 この発電計画は、昭和26年5月北陸電力(株)の発足と同時に承継され、再度見直された。昭和30年9月に着手し、その主要基幹である有峰ダムは富山市有峰地点に昭和34年に完成。その諸元は、堤高 140m、堤頂長 500m、堤体積 156.8万m3、総貯水容量2億2200万m3、型式重力式コンクリートダム、事業費は175.67億円を要した。施工者は前田建設(株)である。この有峰ダムを含む発電工事記録として、北陸電力(株)編・発行『常願寺川有峰発電計画工事誌』(昭和39年)がある。

『常願寺川有峰発電計画工事誌』

堰堤工學』

 「工事誌」によると、有峰ダムには、和田川の水を貯水するほか、和田川の支川、足谷、東坂森谷および大谷より引水し、さらに真川からも真川上流と真川支川、岩井谷およびスゴ谷の水を引水するとともに、金木戸川引水、高原川引水により神通川水系の水を引水して貯水し、和田川第一発電所、和田川第二発電所、新中地山、小俣ダム、小俣の新設発電所と常願寺川第一発電所の増設により26万3600KWの発電を行い、渇水期には既設の真川、小見、亀谷、中地山、松ノ木、上滝および常願寺川第一の7発電所に補給して2万2900KWの出力増加を行い、また真川上流域からの引水の一部を利用して最大出力4000KWの折立発電所を新設し、これらの発電所により合計26万7600KWの発電力と年間8億KWh の電力量を得、あわせて下流常願寺川第二〜第七の6発電所、合計出力2万 700KWの開発を行った。このような常願寺川の総合的な水力開発は、昭和30年9月着手し、昭和35年12月に折立発電所運転開始を最後として全設備が完成している。

 なお、昭和11年5月内務省技師伊藤令二が有峰ダム建設工事に従事、退官後電源開発(株)に入社し、奥只見ダム、御母衣ダムの建設所長として大型ダムの建設にあたった。(藤井肇男著『土木人物事典』(アテネ書房・平成16年)。伊藤令二著堰堤工學』(アルス・昭和22年)には、重力堰堤の実例として有峰堰堤、水豊堰堤、三浦堰堤、小牧堰堤等を論じる。


[前ページ] [次ページ] [目次に戻る]
[テーマページ目次] [ダム便覧] [Home]