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18.千葉県ダムのまとめ

 以上、千葉県のダムは明治以降平成19年にかけて53基の建設がみられるが、次のようにまとめてみた。

(1)ダム築造年区分は、明治期1基(1.8%)、大正期2基(3.8%)、昭和初期9基(17%)、昭和中期9基(17%)、昭和後期23基(43.4%)、平成期9基(17%)で、特に昭和後期の昭和41年〜63年にかけての高度経済成長期に多くの建設がみられる。

(2)ダムの型式は、アース式38基(71.8%)、重力式コンクリートダム13基(24.6%)、ロックフィルダム1基(1.8%)、フローティングゲートダム1基(1.8%)である。
アース式は井堤上(明治21年完成)、重力式コンクリートダムは鋸山ダム(昭和37年完成)、ロックフィルダムは元名ダム(昭和55年完成)、フローティングゲートダムは利根川河口堰(昭和46年完成)が各々最初である。

(3)ダムの用途別では農業用ダム27基(51%)、水道専用ダム17基(32.1%)、工業用専用ダム3基(5.6%)、多目的ダム6基(11.3%)で発電用ダムは見受けられない。また、治水は多目的ダムのなかに見受けられる。農業用ダムが大半を占めるが昭和中期以降は経済発展に伴って都市用水を供給するダムが築造されてきた。
このことは千葉県の発展は農業の生産を図りつつ、工業化を促進してきたことがよく分かる。
農業用ダムは井堤上(明治21年完成)、水道専用ダムは白石ダム(昭和33年完成)、工業用専用ダムは山倉ダム(昭和39年完成)、多目的ダムは利根川河口堰(昭和46年完成)が各々最初である。

(4)ダム堤高別では、
      7m〜30m 42基(79.3%)
      31m〜50m 10基(18.9%)
      51m〜60m 1基( 1.8%)
である。
 ベスト3は、
  @ 長柄ダム 52.0m
  A 片倉ダム 42.7m
  B 保台ダム 41.0m
 中小河川、地形上から、ほとんどのダムは堤高30m以下であり、ダムの周囲には住宅が隣接し、千葉県は里山ダムが多数となっている。

(5)ダム総貯水容量別では
 50万m3以下28基(52.8%)、51万m3〜100万m35基(9.5%)、101万m3〜500万m313基(24.5%)、501万m3〜1 000万m34基(7.6%)、1 000万m3〜2 000万m32基(3.8%)、2 001万m3以上1基(1.8%)である。
 ベスト3は、
  @ 利根川河口堰 9 000万m3
  A 亀山ダム   1 475万m3
  B 高瀬ダム   1 430万m3
である。

(6)ダムの起業者は土地改良区18基(33.9%)、千葉県17基(32.1%)、市町・水道企業団15基(28.3%)、水資源機構3基(5.7%)となっている。
 国直轄のダムは見受けられないが、千葉県と市町がほとんどのダムを築造してきたことがわかる。
とくに、高度経済成長後期において全国的に珍しいことであるが水道用水の供給の目的をもって、小向ダム(昭和50年完成・朝水道企業団)、東ダム(51年・いすみ市)、御宿ダム(52年・御宿町)、作名ダム(52年・館山市)、元名ダム(55年・鋸南町)、小久保ダム(56年・富津市)など、市と町が起業者となり、水道専用ダム造りが行われたことは特筆することである。

(7)千葉県内の河川はいずれも小河川であることから、ダムが築造されても自流に乏しく山倉ダムは豊水時、非かんがい期に養老川の水をポンプアップにより貯留し、また、郡ダムは湊川から導水して小糸川に注水している。河川の水を合理的に融通し合ったダム造りとなっている。

(8)東金ダム、長柄ダムに流入する河川もほとんど自流は皆無に等しく、利根川の余剰水を導水、貯留し、都市用水に供給しており、ダムが調整池の役割を担っている。

(9)千葉県内の水利用は、地下水、県内の河川利根川水系からなり、バランスよく農業用水、水道用水、工業用水に供給されているが、利根川水系からの水利用は62.5%を占めており、その水源は利根川上流ダム群等他県に大きく依存している。

(10)ダムではないが印旛沼施設の水利用は千葉県内に対し、農業用水、水道用水、工業用水に利用されている。また、洪水時には印旛沼排水機場及び大和田排水機場の稼働によって排水され、水害を防ぎ多目的ダムとしての効能を発揮し、千葉県における重要な施設となっている。

(11)ダムは堆砂と水質の問題はアキレス腱であるが、千葉県内のダムの水質は印旛沼を含めてよくなく、今後とも水質の改善が課題であろう。


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