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◇ 2. 熊本県のすがた

 熊本県は、九州地方のほぼ中央に位置し、人口は183万人を擁し、面積は7,405km2で、その内訳は森林62.7%、農用地17.3%、宅地4.8%、道路3.8%、水路・河川2.7%、その他8.7%となっている。

 熊本県の北東部には、世界的なカルデラをもつ阿蘇山、南部には九州山地が広がり、これらの山地を水源とする菊池川、白川、緑川、球磨川は、それぞれほぼ東から西へ向かって流れ、有明海と八代海に注ぎ、下流部には菊池、熊本、八代平野の各平野をつくりだしている。さらに八代海を挟んで天草諸島がつらなる。気候は内陸山地と海岸ではかなり違うが、全体的に温暖多雨で寒暑の差は大きい。

 熊本県の地域について、旺文社編・発行『日本の地理2九州地方』(平成2年)では、次のように四地域に分けている。

@ 熊本県北部
 福岡県境を東西に走る筑肥山地、菊池川沿いの菊鹿盆地と菊池平野、阿蘇山とその裾野を含む地域である。
 この地域は良質な肥後米の産地で、スイカ、メロン、野菜などの栽培が盛んで、県外に出荷されている。畜産は阿蘇山麓の肉牛、菊池地方の乳牛が伸びている。荒尾、長洲、玉名地方は有明海臨海工業地帯の新産業都市の指定を受け、大手の造船、アルミサッシ工場、電気器具工場などが進出。観光では、阿蘇一帯、菊池、山鹿、玉名などは温泉地に恵まれ、四季を通じて観光客を集めている。

A 熊本市とその周辺
 この地域は、白川、緑川の下流に広がる熊本平野を中心に、北東に肥後台地が続き、北西に金峰山がある。南西には低い山地からなる宇土半島からなる。県庁がある熊本市は県の政治、経済、文化の中心地である。熊本平野では水田開発が古くから行われ、肥後米の産地で、スイカ、メロン、野菜のハウス栽培が盛んである。とくに、スイカとメロンの生産量は全国第1位を占めている。これはスイカ等の大集団経営団地が完成したためであり、今や米の収穫量をはるかに上回っている。
 熊本市の工業は食品、金属、家具などの他、近年ではIC産業を含む機械工業やバイオ技術関連の化学工業等が発展している。その背景として、阿蘇山の地下水がいたるところで湧出し、豊富な水に恵まれていることが挙げられる。
 金峰山の山麓や宇土半島の山地ではミカンやブドウの栽培が多く、また、遠浅の有明海ではノリの養殖が盛んである。

B 熊本県南部
 この地域は、平家落人の伝説が残る五家荘や五木村など、険しい九州山地で占められ、球磨川沿いの谷や、人吉盆地と河口付近に開けた八代平野からなる。人吉盆地は周囲を山々で囲まれており、他地域との交流が困難であったが、林業と農業で栄え、独特な文化を創り出した。また八代平野はJR八代駅の西側の土地は、ほとんどが干拓地で開け、米とイグサの栽培が盛んで、とくにイグサは日本一のシェアを誇っている。
 八代市は、セメント、製紙、食品などの工場と石油、鉄鋼、木材などの最近の工業団地をあわせて八代臨海工業地帯を形成している。また芦北地方は夏みかんの産地で、夏みかんも全国一のシェアである。

C 天草諸島
 この地域は大矢野島、上島、下島を中心に大小120余りの島々からなる。近世では、キリスト教が伝えられ、キリシタン文化が多く残っている。
 昭和41年天草五橋が完成し、パールラインが開通、陸路で九州本土と結ばれ、離島の姿が一変した。農業は経営規模の小さい兼業農家で、一部には温暖な気候を利用した、野菜や花の促成栽培がみられ、漁業はタイ、ハマチ、クルマエビ、真珠などの養殖が盛んである。

◇ 3. 熊本県の河川

 熊本県内を流れる一級河川は、阿蘇の外輪山の渓流を集め、菊池渓谷を下り、有明海に注ぐ菊池川(流路延長71q、流域面積996km2)、阿蘇根子岳に源を発し、豊富な湧水を集めて南郷谷を流れ、阿蘇谷を下ってきた黒川と合流し、熊本市を流下し、有明海に注ぐ白川(流路延長74q、流域面積480km2)、熊本県のほぼ中央部を東西に横断して有明海に注ぐ緑川(流路延長76q、流域面積1,100km2)、九州山地を水源として、人吉盆地、八代平野を流れ八代海に注ぐ球磨川(流路延長115q、流域面積1,880km2)の四つの河川である。これらの河川が熊本県を代表する河川で、江戸初期に、加藤清正はこの四つの河川に対し、治水・利水事業をおこなったことは前述したとおりである。現在では、これらの河川は熊本県の農業、工業、商業の発展と密接に関わっており、まさしく熊本県の政治、経済、文化の基盤をなしている。

 その他の一級河川は筑後川、大野川、五ヶ瀬川、大淀川も流れており、併せると一級河川は8水系259河川で延長1,733qである。また、二級河川は、坪井川、永川など81水系148河川で、延長約640qである。合計では、89水系407河川、延長2,373qとなる。

 熊本県の海岸をみてみると、九州西海岸のほぼ中央部に位置しており、その延長は1,088qであり、大きく分ければ「有明海沿岸」、「八代海沿岸」、「天草沿岸」の三沿岸に区分される。

 有明海は閉鎖的水域を形成し、日本一干満の差が大きい。八代海も干満差が大きく、河川からの土砂による干潟が発達している。また、天草諸島は多くの島々で構成され、芦北地域とともにリアス式海岸が多い。


◇ 4. 熊本県の水害

 熊本県の最近10年間の年平均降水量は1,901.5oである。このように年間降雨量は比較的に多く、梅雨、台風時期には集中豪雨に見舞われ水害が起こる。また県土のほとんどが山地や丘陵が占める急峻な地理的特性をもっていることから、水害が発生しやすい。次のように熊本県の代表的な水害をあげてみた。

@ 6.26水害
 昭和28年6月26日午後に本格化した梅雨前線による大雨は、熊本測候所創設以来の記録的な豪雨となった。このため熊本県の中心部を流れる白川は大氾濫を起こし、熊本市街地をはじめ県内に大きな被害を及ぼした。

A 天草上島大水害
 昭和47年7月3日から6日にかけて、不安定な状態であった大気は県内各地に集中豪雨をもたらした。特に天草上島の被害は深刻で、土石流や崖崩れにより道路やライフラインが寸断され、孤立化する程の被害を受けた。

B 7.2水害
 平成2年6月28日から降り始めた梅雨前線がもたらした大雨は、7月2日にピークとなり阿蘇乙姫で時間雨量67oを記録し、県北部を中心に多くの河川氾濫や土石流、崖崩れを引き起こした。

C 台風18号(平成11年)災害
 平成11年9月24日午前6時ごろ、熊本県に上陸した台風18号により、不知火町松合地区を高潮が襲い大きな被害をもたらした。県内にもまた被害が発生した。

D 県南集中豪雨災害
 平成15年7月18日から20日にかけて、梅雨前線による大雨は局地的な集中豪雨となり、水俣市深川地区で時間雨量91oを記録、大規模な土石流が発生し、甚大な被害を及ぼした。


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