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オーストリアの山岳地帯、Malta川にある堤高200mのアーチダム。 オーストリア最大の水力発電であるMalta川総合水力発電の一環として建設された。目的は主として水力発電。1973年に工事に着手、1977年に完成。 通常のアーチダムは、V字型の谷に建設されるが、これはU字型の谷に建設されているために、堤頂長626mとアーチダムとしては堤頂長が長い。 完成して湛水開始後、クラックが生じているのが発見され、堤体支持のためのバットレスを付加するなどの対策が講じられた。その結果、完全運用が可能になっている。 |
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テーマページ |
ダムインタビュー(81) 堀 和夫さんに聞く 「問題があれば一人でしまいこまずに,記録を共有してお互いに相談し合う社会になってほしい」
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国/河川 |
Austria[オーストリア]/Malta
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完成年 |
1977
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ダムタイプ | アーチ
| 機能 | H
| 堤高/堤頂長/堤体積 | 200m/626m/1580千m3 | 貯水池容量 | 205百万m3 | ダム所有者 | Osterreichische Draukraftwerke AG
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【注】
データは、「WORLD REGISTER OF DAMS 2003」を基礎として、「Water Power & Dam Construction Yearbook 2003」、これら書物の新しい年版、雑誌の記事、ネット上の情報などを元に修正・補充して作成したものですが、資料によって情報内容が異なることがしばしばあり、正確性には限界があります。なお、ダムタイプについては、日本の型式分類の概念と必ずしも一致しない点がありますので、注意が必要です。
機能の略号は次の通り。 C : Compensation F : Flood/River controll G : GroundWater recharge H : Hydro power I : Irrigation M : Multi-puroose N : Navigation O : Other P : Pollution controll R : Recreation T : Transfer TA : Tailings W : Water supply
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ダムインタビュー(81) 堀 和夫さんに聞く 「問題があれば一人でしまいこまずに,記録を共有してお互いに相談し合う社会になってほしい」
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ダムの広報は
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中野: 今は洪水調節で,ダムが連携して頑張っていることが,SNSで発信され一般の人にも判って貰える機会が増えてきて,認識されてきた時代になりなりましたが,昔,ダムは大変な逆風の時代もありました。
堀: つい10年前までは,ダムに対しては非常に冷たい風が吹いていましたね。でも,ダムは本当に必要なもので,大事にしていかなくてはいけないと思います。海外の例ですが,私はボルダーダムに十数年前見学に行ったことがあります。あそこは本当にすばらしい,立派なコンクリートを打ってます。それを誇らしげに説明する人がいて,年齢からみたら,当時従事した人ではない,もっと若い人ですが,さも自分がそこにいたように臨場感あふれる解説をしていました。ちゃんと受け継がれているという意味では良いことだと思いました。今の方々はよく研究してやっています。ただダムのデータについては困ったら公開すべきだと考えますね。ニュージーランドにクライドダムというのがあります。インターネットのウィキペディアからとった情報ですが,私が行った時,ちょうど工事中だったのです。現場で彼らが誇らしげに言っていたのは,ここは大きな断層があるということ。日本とニュージーランドはよく似ていまして地震もよく起きるのです。
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中野: ダムの下に断層があるのですね。それは大きな問題ですね。
堀: ダムサイト側に中央構造線のような断層があり,引きずられたダンスタンという断層があります。これがダムのど真ん中を横切っているのです。断層が2メーター,上下に動いた時にも大丈夫なように,ダムにスリップジョイントというのを造って工事をやっています。その資料が今,ウィキペディアで出てきましたので,情報公開が早いとびっくりしました。
中野: それを取り上げてウィキペディアに書いている人がいるんですね。
堀: ええ。こういうのが記録になっているのです。これからは,困ったことがあれば,世界中から情報を集めることが出来るという時代なのだというのがよく判りました。
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それから,ここはオーストリアで一番高いダム,ケルンブラインというダムですが,これも私は現場を見て来ました。ダムのここにクラックが入っています。剪断で出来たものです。岩盤が良過ぎてクラックが入ったと私は思うのですが,岩盤拘束が強過ぎてね。それで,満水していた状態から水位を下げて,4年ぐらいかかって継ぎ足しの補助ダムを造っているのです。これもデータを見れば出て来ます。
中野: なるほど情報から学ぶことも可能な時代ですね。
堀: ティートンダムの破壊のデータもちゃんとあります。いっぱいあり過ぎて,かえって心配なくらいです。これからダムについて,いろいろな問題が起こった時には,世界でこういう例がないのかを先ず探して,それから議論するというような時代だと言えます。データは豊富に揃っています。日本でも,50年前に,和知ダムのゲートが壊れる事故がありましたが,これも京都大学防災研究所の矢野勝正先生の報告書があります。今は,もう既に当時の時代の状況が手に取るように判るような時代なのです。詳細に判りますから逆にいうと恐ろしいくらいです。ぜひ,問題があれば一人でしまいこまずに,記録を共有してお互いに相談し合う社会になってほしいと思っています。
そういう意味では,日本ダム協会,あるいはダム技術センターの働き方は影響が大きいと思います。もちろん土木研究所もそうです。
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