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《福岡導水》 
 福岡導水は、江川ダム、寺内ダム、合所ダム、筑後大堰で開発された、現在最大 2.164m3/Sを筑後大堰の湛水区域内筑後川右岸久留米市高野町地点から取水し、福岡都市圏8市12町に対し、途中佐賀県基山町で佐賀東部水道企業団の基山町分を分水し、福岡県大野城市の福岡地区水道企業団の牛頭浄水場まで 24.71Kmの導水路でもって供給している。この導水路は昭和58年4月に完工し、同年8月から福岡都市圏、昭和61年12月から基山町に対し、それぞれ暫定通水が開始された。

 さらに平成11年3月福岡導水事業の一環として、導水路の途中、筑紫野市山口地点に山口調整池(貯水池名 天拝湖)が竣工した。この調整池の諸元は堤高60m、堤頂長 326m、堤体積 106万m3、総貯水容量 400万m3、中央庶水ゾ−ン型ロックフィルダム、用地取得面積60.8ha、水没移転家屋26戸、ダム事業費 432億円、施工者は鹿島建設(株)、(株)間組、浅野工業(株)である。なお、調整池を含めた福岡導水事業の総事業費 754億円を要し、平成13年3月全事業は完成した。

 これらの建設記録について福岡導水建設所編・発行『福岡導水工事誌導水路編』(平成8年)、『福岡導水工事誌調整池編』(平成13年)の書があり、山口調整池建設の位置づけに関し、『調整池編』に次のように論じている。


山口調整池

「昭和53年の福岡大渇水を契機として福岡都市圏では様々な節水方法が講じられ節水型の都市社会が定着し、渇水に対する市民の関心も非常に高くなってきている。しかしながらライフラインとしての機能を果している筑後川からの導水が一時期でも停止されれば節水型社会であるとはいうものの、その影響はなお一層大きくなるものと予想される。福岡導水を取り巻く現状は 1)流域外取水により筑後川の下流利用者に影響を及ぼさないこと 2)筑後川は近年の異常気象により不安定な流況にあること 3)福岡都市圏の生命の水としての水道用水を一刻たりとも停止できないことなどから、行政の強い要請に応え福岡導水から安定的に導水するためには、筑後川からの取水制限・停止に見合う原水の補給が可能となる調整池の設置が必要不可欠であると判断された。」

 実際に、山口調整池の貯留は、筑後川からの取水量の範囲内で行われ、調整池から福岡都市圏の給水は、福岡導水の筑後川からの取水が筑後大堰下流における農業用水の淡水障害対策のため制限又は停止を受けるとき、もしくは福岡導水路のトラブル発生した場合に行うこと、となっている。これらの淡水取水障害及びトラブル復旧工事の期間がともに22日間要することから、計画取水水量(2m3/S)より貯水容量 400万m3が決定された。なお、調整池地点の兎ケ原川の流水は、貯留されず、直接下流へ流され、河川の環境に配慮されている。今日、異常気象により不安定な流況が生じることがあり、山口調整池からの福岡都市圏への水の供給は数回にわたって行われ、その役割を十分に果たしている。

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