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1章 〜ダムに出かけてみよう〜


現在、日本には大小合わせて2500を超えるダムが設置されています。そして、ひとつひとつのダムはその用途や規模、建設場所の地形さらには予算などによって様々な形式に分類され、非常にバラエティーに富んだ外観を見ることができます。ところが、この「土木建築界屈指の巨大建造物」を、たとえば城や社寺のように鑑賞の対象とすることは、今まであまり行なわれてこなかったように思います。また、一般的には「ダム」と言うと貯水池を連想させることが多く、その貯水池を造り出している堤体そのものにスポットがあたることは、観光地化された一部の有名ダムを除いてほとんどなかったと言えるでしょう。

しかし、実際にダムに出かけてよく観察すると、堤の大小を問わず、様々な興味深いポイントを発見することができます。このように、いろいろなダムを見てまわることを「ダムめぐり」と呼び、近ごろ密かなブームの下地が作られつつあります。

そこで、初心者向けに「ダムめぐり」とはどういうことか、そしてその楽しさ、また簡単にできるダムめぐりの方法(ダムの見つけかた)を解説しようと思います。基本的には自分の経験をもとにしたり、事実に基づいた内容を書いていますが、話の進行上、未確認の情報や創作された部分も紛れ込んでいます。そのあたりは寛容に受け止めていただければありがたいです。

1.ダムめぐりとは

「ダムめぐり」という言葉は、ダム好きの人々がいつの間にか勝手に使い出したものとされています。その言葉の通り、ダムを観ることを目的とした小旅行のことを言います。ほとんどは日帰りですが、数日かけて各地をまわるような場合もあります。また、人によってはご当地のグルメや温泉などをオプションにつけて楽しむこともあるようです。しかし、どの場合であっても、その最たる目的は「ダムを観ること」にほかなりません。よって「旅行の途中にダムに寄る」、「デートのキメとしてダムに来た」などの場合は、いかに詳しくダムについて調べようと「ダムめぐり」とは認定されません。

2.ダムめぐりの魅力

では、ダムめぐりの楽しさとはいったい何でしょうか?人間が造りだした巨大な建造物の迫力、周りの自然との対比、いろいろあると思いますが、ダムを「めぐる」ことの理由は1つです。それは「同じ形のダムがふたつとしてない」ことに尽きます。ダムにはその建設地点の地形や地盤の強度に合わせた様々な形式があり、また目的すなわち必要な貯水量によって規模もいろいろ、下流へ水を流すための放流設備にも様々な種類があります。それらの要素が組み合わさることで、それぞれが日本で、いや世界でたったひとつしかないダムを形成しているのです。詳しい見どころの解説は後回しにするとして、ここではその事実だけを頭に留めておいてください。

3.ダムの見つけかた

さあ、あなたはダムが見たくなってきました!ちょうど明日は休み、天気も良いようです。それでは初めてのダムめぐりに出かけることにしましょう。・・・と、ここであなたは気付くのです。

「ダムはどこにあるんだろう?」

まずは目的地を決めないことには出発できません。とりあえず手持ちの地図を開いてみます。

3-1.地図から探す


まずは地図を見てダムを探しましょう
特にどこのダムを見るか決めていない場合、地図を開いてダムを探すのがもっとも手っ取り早い方法です。自宅周辺のページを見ながら、大きな湖と「ダム」という表記を見つけましょう。地図に載っているようなダムならある程度の大きさはありますし、それが国道や県道の近くにあるならクルマでたどり着くことも難しくないはず。同じページでほかにもダムを見つけてしまったので、大まかなルートも決まりました。これならグルメや温泉のオプションも簡単に追加できますね。
ちなみに、最近では地図の代わりにカーナビを使ってダムを探し、自動的にルート作成までしてしまうという方法も確立されつつあるようです。大昔の人が地形図とコンパスを頼りに行なっていたダムめぐりも、ついにデジタル時代に突入したわけです。

3-2.ダム年鑑、ダム便覧で探す


左:ダム年鑑


右:ダム便覧
都道府県別や名前でダムを検索したい、詳しい所在地を知りたい、地図に載っていないダムも探したい、などのわがままな要望をかなえるのに最適なツールが、(財)日本ダム協会※1が作成している「ダム年鑑」と「ダム便覧」です。「ダム年鑑」は日本のダムに関するデータなら全て載っていると言っても過言ではない書籍で、詳しい所在地をはじめ、形式やスペックはもちろん、設計、施工業者、部品の納入業者など、一般人にはまったく必要のない情報までが高密度に掲載されており、一時は「ダム好きのバイブル」とまで形容されました。もっともそんなユーザーは想定されていないため非常に高価で、またB5サイズながら厚さが約10cm、重量約3kgというヘビーなものです。一時代前までは、これとカメラやレンズ、それに地図を入れた重たい鞄を肩から下げ、三脚を持って一般車通行止の場所にある小さなアースダムを目指して炎天下数キロ歩く、といった、ある種苦行とも呼べるようなダムめぐりを行なっている人が何人もいました。
この先人たちの苦労を一気に解消してしまったのが「ダム便覧」です。これはダム協会のホームページ内に作られた「デジタルダム年鑑」とも呼べるもので、位置情報やスペック、トピックスといったダムめぐりに必要な情報だけに特化し、様々なジャンルで検索もできる非常に便利なサイトです。「ダム便覧」の登場によって、肩から重い鞄を下げた古いスタイルのダム探訪者たちは、デジカメとノートパソコンという軽い装備に駆逐されるかたちとなり、今では一部のマニアを除いてほとんど姿を消しました。
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※1(財)日本ダム協会…ダムや堰などに関する調査、研究を行い、ダム施工技術の向上を図るとともに、 ダム等の建設を促進し、国土の保全と国民経済の発展に寄与することを目的として設立された団体。ダム工事管理技術者の資格試験なども行なっている。しかし、我々ダムファンにとってその実体は未だ謎のままである。

3-3.出かけてから探す

せっかちなあなたは、家で何も調べずに、気がついたらもうダムめぐりに出かけてしまっていました。地図もダム年鑑も持ってきていません。しかも普段から「迷うこともドライブのうち」と豪語するあなたの車には、カーナビなどという気の利いた装備はありません。さてどうやってダムを探したらよいでしょうか。
…と、そこまで短絡的でないにせよ、たまたま旅行や出張に行った先でダムが見たくなったら、知らない土地で地図もなしにダムを見つけることはできるのでしょうか?
これは初心者にはたいへん難しい問題ですが、不可能ではありません。大抵の場合ダムは山間部にありますから、とりあえず車を山の方角に向けて走らせてみます。

川沿いの道を走っていると、見なれない看板が出てきました。


川沿いの道にこんな看板がありました
うっかりすると見過ごしがちな看板ですが、実はこれさえ見つければダムを見つけたも同然なのです。よく見ると「ダム放流による増水に注意」と書かれています。また「この先○キロメートルのところに××ダムがあり...」という記載も見えます。つまり、上流にダムのある河川には大抵この看板が設置されており、この看板のある川を遡れば自動的にダムにたどり着いてしまう、という寸法です。また、例えばあなたが上流に大きなダムのある川沿いの道を走っていて、この看板を見つけたとします。そのダムまであとどのくらいかと思って見てみると、ダムの名前が目的のダムと違っていることがあります。そうです、大きなダムの下流には地図に載っていない小さなダムが存在していたのです。私はこのパターンで予定外のダムを見つけたことが数回あります。
逆に言えば、しばらく走ってもこの看板が見つからない河川は、ダム好きから見れば「ハズレ」な物件なわけですから、深追いせずすぐに別の河川に乗り換えるのが賢明でしょう。

また、ダムに続く道をよく観察すると、普通の道とはどこか違う、「ダムに続く道」特有のポイントを見つけることができます。以下の写真はとあるダムに続く道ですが、単なる山道とは違うポイントが分かるでしょうか?


単なる山道にしか見えないが…?
上の写真では分かりにくいかも知れませんが「ダムに続く道」のポイント、それは、「へんぴな山道なのに妙に広い(場所がある)」というところです。言葉で表すととても微妙な感じですが、実際に走ってみると分かります。特に小さな川に小規模なダムがある場合。クルマ1台通れるかどうかというような道かと思うと、突然極端に広いカーブが出てきたりする。その後も定期的に出てくる極端に広い離合場所を通り過ぎ、しばらく走るとダムが見えてきます。これは、ダム建設時にたくさんのダンプカーがこの道を行き来していた名残りと言えるでしょう。公共工事の名のもとに、細い山道を無理矢理拡幅しているのです。ほかにも、法面が固められているところが多かったり、舗装がコンクリートだったり、妙に轍が大きかったりといったポイントがいくつかあり、実際「ちょっとクサい」と思った道を進むとダムが出てくることがあります(ただし、ダムではなく採石場や産廃処理場に迷い込むこともあるので注意が必要)。

そのほか、「高圧送電線をたどる」とか、「水力発電所から遡る」、「遠くに見える大きな人工法面を目指す」などといった方法でダムを見つけることもできます。



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