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2.阪神淡路大震災と布引ダム

【兵庫県南部地震】

 1995年1月17日午前5時46分、兵庫県南部地震が阪神地区を襲った。震央は布引ダムからおよそ20kmという至近距離であった。完成から95年後に布引ダムは大地震を経験した。

【布引ダム調査研究会】

 地震によるダムへの影響を検討するために、布引ダム調査研究会を設置した。
 地震の影響について以下の報告を得た。
@ 提体下流面では地震前からにじむ程度の漏水がみられていたが、地震後新たな漏水が発生した。
A 布引ダムの提頂中央部に地震計を設置していたが、リミッターの設定が40galであったため、振り切れて最大値は記録されていない。周辺状況などからダム基岩部での地震加速度は150〜200galと推定された。
B 地震時には渇水状況にあり水位は常時満水位から5.6m低下していた。この時に200galの地震力が作用したとして安定計算を行なったが、転倒・滑動・圧壊に対する安全性は満足していた。
C 震災時に満水位であった場合のダムの安全について検討したところ、k=0.15の地震に対しては踵部に引張応力が発生する結果となった。
D 提体の恒久的補強策としては、提体上流側にフィレットを増築する案が最適である。

 この結果を受けて、漏水の増加は、提体と基礎岩盤からの漏水の増加と判断し、提体内に亀裂の進行が考えられた。このため、提体の一体化と遮水機能改善を目的とする災害復旧工事として、グラウト工事と基礎岩盤の亀裂を通る漏水の防止のためのカーテングラウトを平成7年10月〜平成9年3月まで施工した。

 引き続き布引ダム調査研究会において以下の事項について検討を行なった。
@ 安定性が確保できるフィレットの規模
A フィレットコンクリート打設時の温度応力
B 現提体とフィレットの一体化
C フィレットの表面処理による景観保全
D 建設当初の部材を再使用した管理橋再生
 これらの検討結果に基づき、提体補強方法の検討・実施設計を行い、補強工事を実施した。


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