15. 天竜川のダムのまとめ
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以上、天竜川のダムについて、概観してきた。天竜川流域は南アルプス、中央アルプス、中央構造線など、地形、地質上絶えずダナミックな活動を続けている。天竜川もまた日々変化し、多量の土砂を排出流下させる。すでに述べてきたが、天竜川のダムについて次のように纏めてみた。
・ダムの建設により、家屋移転者及び工事の殉職者(外国の人を含む)の方々を忘れてはならない。 ・ダムは、洪水の減災を図り、水力発電をはじめ、水道用水、農業用水の供給により、地域の経済発展と生活向上に寄与してきた。しかし、一部のダムでは洪水を生じさせた。 ・ダムは、多量の土砂排出のため堆砂率が高く、ダム機能の効果を脅かしている。一方ダム湖末端部及び上流では河床が上昇し、逆に下流では河床が低下し河川構造物に影響を及ぼしている。 ・ダムの管理は、天竜川の多量土砂排出のため、その堆砂除去方法に苦難を強いられ、堆砂採取が行われている。佐久間ダムでは浚渫船により土砂採取を続けている。 ・ダム再開発事業として、美和ダム、松川ダムは排砂バイパストンネル等がほぼ完成し、また小渋ダムにおいては排砂バイパストンネルが進められている。 ・伊那谷下流地帯から天竜川本川は、全国有数の水力発電用ダムとして階段状に造られ、泰阜ダムから下流秋葉ダムの間、ほとんどダム湖に変化した。 ・ダム開発によって、土砂の供給が止まり、天竜川河口域の中田島砂丘を含め侵食が進み、この地域の災害も危惧される。早急に、叡知を結集して、自然再生事業による公共事業を新たにおこすべきである。 ・脱ダム宣言後、長野県の河川整備について、長野県治水・利水ダム等検討委員会の答申が重要視されてきた。
このようにみてくると、天竜川のダムにおいては堆砂対策が最大の課題であることがよくわかる。改めて排砂バイパストンネルの効果が注目されてくる。また河川環境の悪化については自然再生事業をおこすべきである。
おわりに、天竜川の水環境に係わる書をいくつか掲げる。
・石川純一郎著『天竜川ーその風土と文化』(静岡新聞社・昭和55年) ・西野綾子編『天竜川ーくらしの中を流れる川』(ひくまの出版・昭和55年) ・磐田市史編さん委員会編・発行『天竜川流域の暮らしと文化(上・下巻)』(平成元年) ・市川健夫著『天竜川』(信濃路・昭和49年) ・中日新聞社編・発行『天竜川』(昭和50年) ・武田太郎著『天竜川(写真集)』(風書房・昭和48年) ・今村良夫・今村真直編『天龍峡ー歴史と叙情』(信濃路・昭和54年) ・神谷昌志著『天竜川と秋葉街道』(明文出版社・昭和62年) ・天竜川上流工事事務所編・発行『天竜川のあの頃(写真集)』(平成13年) ・天竜舟下り(株)編・発行『天竜川舟下り10年史』(昭和53年) ・豊田町郷土を研究する会編『天竜川池田の渡船』(豊田町教育委員会・昭和51年) ・長野県教育委員会編・発行『天竜川ー歴史の道調査報告書(30)』(昭和32年) ・浜松史跡調査顕彰会編・発行『天龍川船越渡船資料』(昭和59年) ・日下部新一著『天竜川交通史』(伊那史学会・昭和54年) ・天竜川上流工事事務所編『天竜川上流域地質図』(中部建設協会・昭和59年) ・ 同 『天竜川上流地質解説図』(中部建設協会・昭和59年) ・松島信幸 他著『伊那谷構造盆地の活断層と南アルプスの中央構造線』(断層研究資料センター・平成5年) ・松島信幸 他著『伊那谷の造地形史』(飯田市美術博物館・平成7年) ・川路中学校編・発行『水害作文集』(昭和32年) ・川路小学校編・発行『川路地区水害記録』(昭和43年) ・上川路史学会編・発行『悪夢の一夜』(昭和54年) ・昭和36年災害20周年記念行事実行委員会出版部編『語り継ぐ災害の記録』(南信州新聞社・昭和56年) ・碓田栄一編『濁流の子・(復刻版)』(平成3年) ・松島信幸 他著『36災害30周年ー伊那谷の土石流と満水』(飯田市美術博物館・平成3年) ・代田豊太郎・牧内武司編『川路村水防史』(川路村水害予防組合・昭和11年) ・飯田市治水対策部編『天竜川と生きるー天竜川上流部・川路・龍江・竜丘地区治水対策事業完成記念誌』(飯田市・平成14年) ・天竜川上流工事事務所編『天竜川上流工事事務所30年のあゆみ』(中部建設協会・昭和55年) ・ 同 『空から見た天竜川』(平成4年) ・ 同 『語りつぐ天竜川』(第1巻〜59巻) (昭和61年〜平成17年) ・浜松工事事務所編・発行『天流川ー治水と利水』(昭和57年) ・小渋川土地改良区編・発行『農魂通水ー竜東一貫水路竣工記念集』(昭和55年) ・朝日土地改良区編・発行『東天竜 300年史』(平成3年) ・春富土地改良区編・発行『春富土地改良区史』(平成6年) ・浅川清栄執筆『諏訪の農業用水と坂本養川』(中央企画・平成10年) ・宮下慶正著『御子柴艶三郎ー横井の清水開削』(岳風書房・平成11年) ・中部電力飯田支部広報課編・発行『伊那谷電気の夜明けー電灯がともって90年を記念して』(平成2年) ・長野県企業局編・発行『県営発電の灯をともして30年』(昭和63年) ・飯田市編・発行『飯田市上水道史』(昭和56年) ・保屋野初子著『長野の「脱ダム」,なぜ?』(築地書館・平成13年) ・日本弁護士連合会公害対策・環境保全委員会編『脱ダムの世紀』(とりい書房・平成14年) ・藤原 信著『なぜダムはいらないか』(緑風出版・平成15年) ・開発問題研究所編・発行『ダムが埋没する』(昭和52年) ・天竜川ダム統合管理事務所編・発行『天竜川水系におけるダムの堆砂と排砂』(昭和54年)
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