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梅雨の森湖?
〜平成18年度「森と湖に親しむ旬間」
全国行事(長島ダム)に参加して〜

 毎年7月末の暑い時期に、全国のダムで「森と湖に親しむ旬間」にあわせて様々なイベントが開催される。
 その中で、「全国行事」というものがあって、毎年持ち回りで全国のどこかのダムで実施されている。内容は、記念式典とシンポジウム、そして各種のイベント。今年(平成18年)は、7月29日(土)と30日(日)、静岡県の長島ダム(大井川水系)で、「森と湖に親しむつどい2006・奥大井接阻湖フェスティバル」として開催された。

 (財)日本ダム協会は全国行事実行委員会のメンバー。毎年記念式典に出席することになっていて、今年も「森湖(もりみず)」で長島ダムに行って来ました。以下はその印象です。
梅雨明けはまだ、しかし

 気象庁から梅雨明けの発表がまだなかった。後に、30日に梅雨が明けたと見られるとの発表があったので、第1日目は梅雨の中の森湖となった。しかし、実際は、幸運と言うべきか、だいたい晴れと言っていいぐらいの天気で、例年通り厳しい暑さ。それでなければ森湖の感じが出ない。

 今年は、記念式典もノーネクタイ、ノー上着のクールビズが徹底されていたようで、静岡県知事をはじめ、参加者はみんな軽装。これはありがたかった。

記念式典が始まる前(9時40分頃)の長島ダム
このときは青空が見えた
 

記念式典であいさつする石川静岡県知事
みんな軽装
大井川といえば

 「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」といわれる大井川は、江戸時代には、江戸防衛のために架橋や渡船が禁じられ、しかも水量の多い大河川だったために、東海道の代表的難所とされた。今、大井川を見ると、川幅は広いが、水の流れはわずか。これは水力発電のために取水されているからで、その電力は、戦後の復興と経済発展に大きく貢献した。しかし一方で、川の水が減少してしまった。
 このため、流域では「水返せ運動」が起こった。大井川は「水返せ運動」発祥の地として知られ、その成果は全国に及んでいる。詳しくは、ダム便覧の「テーマページ」にある長谷部俊治「水利権とダム(5)−河川機能の維持−」をご覧ください。

川幅は広いが、水の流れはわずか
 

下流になると、水量も増える
長島ダムは高品質!

 記念式典やイベントは、長島ダムの近くの会場と、ダムの天端を中心に行われた。行ってみると、立派なダムで、デザインもいいし、周辺もよく整備されている。徹底して緑地が復元され、緑で修景されていて、周辺の法面コンクリートが露出するというような場所はほとんどないように見えた。

 立派ですねとある人に問うと、まだ余裕のある時代にできたからで、今のような財政が厳しい時代にはもうこんなダムは出来ないのでは、という趣旨の答えが返ってきた。
 質の高い社会資本の整備がだいじだと言われて久しい。財政も厳しいし、コスト縮減の努力も必要だが、ダムは長期間機能を発揮することになるし、地域との結びつきも大きい。まさに社会的な資産だ。長島ダムのように環境整備を重視した質の高いダムの建設がこれからも必要ではないか。そう強く感じました。

ダム左岸
法面の緑化がよくされている

ダム右岸
広い斜面が整備されて、サクラソウが植えられている
春には、一面ピンクになるらしい
ダム下流右岸側から左岸側を望む
左側にダムがあり、右下に減勢工が見える
中央の丘の上がメイン会場
 

ダム周辺でコンクリートが大きく露出しているところが1カ所あった
これは、道路の法面
すごい絵だった

 29日の午前中に記念式典がダム近くの会場であり、基本的には例年通りで、大きく変わったところはないように思えた。
 ただ、記念式典の際に、「森と湖のある風景画コンクール」の表彰式があったが、金賞の作品のひとつがすばらしかった。受賞した中学生?は、将来は画家になりたいと。選者の先生も、これなら画家になれると。


金賞・文部科学大臣奨励賞
「夕焼けに染まるダム湖」
平賀 未唯(14歳・福岡県)
自然を大切にしよう

 午後には、場所を変えてシンポジウムが川根本町文化会館であった。第1部が「子供フォーラム」、第2部が「パネルディスカッション」。
 子供フォーラムは、下流まで含めた大井川流域の6つの小学校の小学生が参加、学校単位の6グループが自分たちのテーマについて川や森で体験活動をして、それを発表した。いろいろあったが、結局「自然を大切にしよう」と言うことのようだ。最後に、「大井川流域未来宣言」があった。子供達みんなで考えたのだそうだ。その内容がよかったので、全文を掲載します。
 パネルディスカッションは、出席者も多彩、論点豊富でまとめることは困難だが、これもまた印象としては、「自然を大切にしよう」と言うことだろうか。そのために具体に何が出来るか、それは課題か・・・?

子供フォーラムの様子

子供フォーラムの様子

大井川流域未来宣言
これは、「大井川もりみず守り隊」隊長の山田辰美さん(富士常葉大学教授)が持っていたものを頂いたもので、宣言の原本?

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッション出席者
写真左から
(コーディネーター)
松田 輝雄(元NHKエグゼクティブアナウンサー)
(パネリスト)
沖 大幹(東京大学生産技術研究所助教授)
八木 洋行(環境民俗学者)
宮崎 緑(千葉商科大学教授)
みなみ らんぼう(シンガーソングライター)
久保田 勝(国土交通省河川局河川環境課長)
 
アプトライン乗り放題

 東海道方面から、鉄道で長島ダムに行くには、東海道本線の金谷から大井川鉄道で終点の千頭まで行き、ここで大井川鉄道井川線(南アルプスアプトライン )に乗り換えて、長島ダムで降りる。このアプトラインは、日本で唯一のアプト式列車に乗れる鉄道で、日本で最も小さく、スピードが遅い鉄道だそうだ。当日は、このアプトラインが全線無料開放され、乗り放題だった。すごく便利。

千頭から長島ダム方向に行くと、長島ダムの手前が急勾配で、この区間だけがアプト式の機関車を連結する
一番左が客車、その右がたぶん通常の機関車、その右の2両がアプト式の機関車で、連結中
乗客が連結を見物しているが、みんな長島ダムのイベントに行く人たち

線路の中央に、ギザギザのあるレールのようなものがある
ラックレールというらしい
しゃれた感じの長島ダム駅
 

長島ダム駅で降りて会場に向かう人々
にぎわって見えた

 会場は、朝のうちは客が少ない感じだったが、昼近くになると、だいぶ観客が増え、にぎわいが出てきた。会場の規模が比較的コンパクトに出来ていたし、バスや鉄道による足の確保がうまくいったのだろう。さらに、大井川は長島ダムから下流の海まで、相当な距離があるが、流域の一体感があるようで、下流から団体で来場すると言うこともかなりあったようだ。また、イベントを支えるスタッフの方も下流の応援がだいぶあったようだ。流域の一体感の下に、計画と実際がうまくかみ合ったように思える。

メイン会場のゲート

メイン会場
ステージでイベント

ダムの天端
イベント風景

シャトルバスも便利
 
地域の振興になれば

 地元の川根本町の杉山町長は、地域の振興に大変熱心な方で、工夫をしていろいろな振興策を実行しておられる。町長は、イベントの時に一時的に客が来るという一過性のものではなく、永続的に客が来るようなことにしたいという趣旨のことを強調しておられた。まさにその通りだと思います。イベント自体も、流域ぐるみ、地域ぐるみのどちらかというと手作り風の印象を受けました。このイベントが、今後の地域の振興に役立てばと願うものです。

 最後に、長期間準備をして、暑い中汗だくでがんばった現地のスタッフの皆様に感謝します。お疲れ様でした。

[関連ダム]  長島ダム
(2006年8月作成)
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