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18. 千曲川のダムのまとめ

 以上、千曲川のダムについて概観してきたが、次のようにまとめてみた。

堤高15m以上のダムは、明治期〜平成17年にかけて45基が建設された。

・ダムの総貯水容量をみてみると、 200万m3以下26基(57.8%)、 201万m3〜2000万m315基(33.4%)、2001万m3〜 13000万m3 4基( 8.8%)に区分できるが、 200万m3以下の小規模ダムが大半を占める。このことから地域住民の生活に密着したダム造りの一面を持っている。

・ダムの用途別では、治水防災1基、水力発電13基、農業用水16基、多目的ダム15基となっている。多目的ダムのなかに、水力発電用として5基が含まれている。このように長野県は有数な水力発電県である。

・ダム事業者別では、国土交通省1基、東京電力・13基、土地改良区14基、長野県18基となっており、近年長野県施行のダムが多くなっている。

・梓川、犀川におけるダムは、昭和初期から多くの水力発電用のダムが築造されてきた。とくに昭和41年〜61年にかけて、高瀬ダム等6つのハイダムが建設され、ダム技術の向上をもたらた。これらのダムは主に関東地方に電力エネルギーの安定供給に大いに寄与している。

・犀川の水内ダムは、昭和17年2月発電を開始したが、昭和20年10月犀川沿岸に水害がおこった。この水害の一つの要因が水内ダムの築造とゲート操作にあったとして、信州新町は、東京電力(株)との災害補償の交渉が続いた。その経過を、信州新町編『水内ダム交渉史』(水内ダム総合調査会・昭和55年)にみることができる。


『水内ダム交渉史』
・長野県における水系別最大理論水力の割合は、梓川、犀川64.7%、木曽川16.2%、天竜川11.9%、千曲川 4.0%、その他 3.2%となっている。(『ながの県勢要覧 平成16年度版』)このことは、前述のように、梓川、犀川が、千曲川の2倍の流量にあることも一つの要因である。

・ダムの堆砂率は、天竜川のダムと比較すると、梓川、犀川、千曲川のダムは大変低い。平成15年12月現在、奈川渡ダム(昭和44年竣工) 9.3%、高瀬ダム(53年竣工)20.7%、奈良井ダム(57年竣工)3.6%に過ぎない。(「電力土木」2004・313 )

・多目的ダムの建設は、昭和43年の菅平ダム(神川)が初めてであるが、治水を含めた多目的ダムは、昭和44年裾花ダム(裾花川)の完成からである。

・平成13年2月、田中康夫長野県知事は「脱ダム宣言」を行った。この宣言によって、長野県のダム造りに大きな影響を及ぼしている。


 おわりに、千曲川の水環境に係わる書をいくつか揚げる。

・建設省長野工事事務所編・発行『千曲川治水誌(既往編)』(昭和32年)
・    同         『千曲川治水誌(工事編)』(昭和33年)
・建設省千曲川工事事務所編・発行『千曲川・犀川三十年のあゆみ(昭和23年〜54年)』(昭和55年)
・    同          『信濃の巨流千曲川』(平成6年)
・    同          『千曲川・犀川の自然』(平成14年)
・    同          『千曲川の今昔』(平成13年)
・    同          『信濃の青龍犀川』(平成6年)
・小布施町編・発行『千曲川の風土と小布施』(平成11年)
・中野市千曲川水系治水史編纂委員会編・発行『中野市千曲川水系治水史』(平成6年)
・篠ノ井公民館東福寺分館編・発行『千曲川の瀬直しに見る村人の暮らし』(平成6年)
・上田市博物館編・発行『千曲川の魚』(昭和50年)
・栗田貞多男写真・立松和平・文『千曲川』(グラフィック社・平成2年)
・長野県立歴史館編・発行『千曲川歴史散歩』(平成12年)
・銀河書房編・発行『千曲川・犀川の本』(平成5年)
・千曲川・犀川治水史研究会編『千曲川石にきざまれた願い』(信濃毎日新聞社・平成17年)
・上田小県近現代史研究会編・発行『千曲川のほとりを歩く』(平成13年)
・加藤省吾・作詩、瀬下健二・作曲『千曲川』(音楽之友社・平成2年)
・長野県教育委員会編・発行『千曲川(歴史の道調査報告書31)』(平成4年)
・    同       『犀川(歴史の道調査報告書32)』(平成4年)
・高田充也・文、池田勝子・絵『犀川の民話』(郷土出版社・平成8年)
・市川建夫・文『梓・犀川・姫川』(信濃路・昭和49年)同 『千曲川・信濃川』(信濃路・昭和50年)
・田中欣一編『水よ語れ−日本百名水・姫川源流』(銀河書房・平成元年)
・湯本軍一監修『水とむら−夜間瀬川水系・中野市、山ノ内地区の用水』(北信ローカル社・昭和62年)
・信濃毎日新聞社編・発行『信州の湖沼』(昭和48年)
・窪田文明著『信州の湖紀行』(郷土出版社・平成9年)
・長野県生活環境部編・発行『信州水自慢 121ガイドブック』(平成5年)
・信濃毎日新聞社編・発行『寛保2年の千曲川大洪水戌の満水を歩く』(平成13年)
・普門寺赤津川災害史編集委員会編・発行『普門寺赤津川災害史(昭和47年7月10日)』(昭和52年)
・長野県須坂市編・発行『昭和56年8月23日15号台風激甚災害の記録』(昭和57年)
・木島水害記録誌編集委員会編・発行『昭和57年9月13日来襲18号台風激甚災害の記録』(昭和60年)
・飯山市立木島小学校編・発行『台風18号(S57.9.13)の水害作文集』(昭和58年)
・飯山市立常盤小学校編・発行『ときわ平は海に−58・10号台風水害作文集』(昭和59年)
・長野県土木部編・発行『平成7年長野県北部梅雨前線豪雨災害の記録』(平成7年)
・   同      『平成7年7月長野県北部梅雨前線豪雨災害復旧の記録』(平成10年)
・長野県大町建設事務所編・発行『激災を乗り越えて−平成7年7月11日梅雨前線豪雨災害復興の記録』(平成10年)
・北小谷豪雨災害記録誌編集委員会編・発行『7・11北小谷豪雨災害記録誌』(平成8年)
・長野県豊野町編・発行『平成7年7・11梅雨前線豪雨災害の記録』(平成8年)
・長野県小谷村編・発行『小谷村梅雨前線豪雨災害の記録−平成7年7月11日』(平成9年)
・長野県編・発行『長野県の災害と気象 (昭和20年〜39年) 』(昭和40年)
・   同   『長野県の災害と気象 (昭和40年〜45年) 』(昭和46年)
・長野県危機管理室編・発行『長野県の災害と気象』(平成14年)
・長野地方気象台監修『千曲川・犀川の気象』(北陸建設弘済会長野支所・平成14年)
・建設省松本砂防工事事務所編・発行『高瀬川砂防半世紀を越えて』(平成12年)
・福澤兵七編『梓川農業水利沿革史(前編)』(梓川農業水利期成同盟会・昭和3年)
・長野県経済部耕地課編・発行『善光寺平農業水利改良事業沿革史』(昭和13年)
・霜田巌著『鐘鋳堰の話』(鐘鋳堰組合・昭和57年)
・矢ケ崎賢治著『長野県水利耕地開発功勲録』(長野県耕地協会・昭和20年)
・農林省関東農政局編『長野県における農業水利の展開と農業発展』(昭和45年)
・長野県土地改良史編集委員会編『長野県土地改良史 (第1巻〜第3巻) 』(長野県土地改良事業団体連合会・平成11年)
・埴科郡土地改良区編・発行『埴科郡土地改良区三十年史』(昭和58年)
・長池あゆみ委員会編『長野県上田市長池水利組合のあゆみ』(長池水利組合・平成9年)
・長野県松本建設事務所編・発行『拾ケ堰工事誌』(平成7年)
・北野進著『安曇野と拾ケ堰』(企画出版安曇野・平成5年)
・武石村教育委員会編・発行『武石村の水と開発』(昭和57年)
・四ケ郷用水組合編・発行『四ケ郷用水誌』(昭和58年)
・中野市八ケ郷土地改良区編・発行『中野八ケ郷水利史』(昭和58年)
・豊科市教育委員会編・発行『命の水−安曇平の水利史豊科編』(昭和58年)
・浅科村教育委員会編・発行『五郎兵衛用水』(昭和62年)
・小穴芳美著『安曇野開発史の研究』(信毎書籍出版センター・平成2年)
・川中島土地改良区・発行『水よ!よみがえれ』(平成2年)
・窪田英夫著『巌流 千曲川を育む水環境』(信毎書籍出版センター・平成9年)
・桜井善雄編『千曲川中流域植物観察のてびき』(北陸建設弘済会長野支所・平成14年)
・長野県生活環境部編・発行『第2次長野県水環境保全総合計画』(平成10年)
・佐々木清司・尾崎行也著『地域の河川をみつめる』(産川水系を守る会・平成12年)
・歴史教育協議会須坂支部編『須坂地方の鉱毒水(自然編)』(銀河書房・昭和55年)
・   同        『須坂地方の鉱毒水(歴史編)』(銀河書房・昭和55年)
・   同        『須坂地方の鉱毒水(社会編)』(銀河書房・昭和56年)
・長野県土木部編・発行『信州の橋』(平成8年)
・龍鳳書房編『寺尾の渡し今昔−思い出の川中島橋』(川中島建設・・平成8年)
・上田創造館編『心をむすぶ橋−上小地方の橋梁 100選』(上田市地域振興事業団・平成11年)
・近代水道 100年記念誌編集委員会編『長野県「水道のあゆみ」』(長野県水道協議会・昭和62年)
・長野県企業局編・発行『県営水道30年のあゆみ』(平成7年)
・松本市水道七十年史編集委員会編『松本市水道七十年史』(松本市水道局・平成5年)
・長野県土木部下水道課編・発行『長野県下水道50年のあゆみ』(平成10年)
・角憲和編著『揺れる脱ダム宣言』(岳風書房・平成13年)
・銀河書房新社編・発行『田中康夫の脱ダム宣言を読む』(平成13年)


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