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利根川河口堰は次の目的をもって築造された。
(1)河川の流れの正常様な機能の維持を図る。
(2)塩水を押し出すのに必要であった水50m3/Sが堰によって30m3/Sとなり、20m3/Sの新規利水を開発し、次のように水道用水、工業用水を供給する。 水道用水として、東京都14.01m3/S、千葉県3.48m3/S、銚子市0.12m3/S、埼玉県1.15m3/Sの供給を可能とする。 工業用水として千葉県に対し、1.24m3/Sを供給する。
(3)堰の貯留で生み出した水で、農業用水として千葉県に対し、4.99m3/Sを供給する。
(4)黒部川水門において平常時に利根川の下流部の塩害を防御するとともに洪水時には黒部川の洪水を防止する。
この河口堰の型式は可動堰、堤長834m(可動部分465m、固定部分369m)、門扉型式はローラーゲート、門数9門、高さは7mである。一方、黒部川水門の型式は水門扉、堤長55m、門扉ローラ・ゲート、門数2門、高さ9mである。
起業者は水資源開発公団、施工者は熊谷組で事業費125.2億円を要した。 主なる補償関係は土地取得面積4.2ha、捨土補償、土砂採取補償、鉱業権補償、それに漁業補償であった。 畑谷正實水資源開発公団理事は、この河口堰の施工特徴について「工事誌」のなかで次のように述べている。
「本工事は利根川を締め切るという往昔においては識者の問において想像もしえなかった工事であり、それだけにその成否は各界より注目されていたのである。したがって、無事竣工の今日、建設所職員の本工事に対する熱意と研究の成果は高く評価されるだろう。工事の計画、施工にあたって特筆すべきは低水路の仮締め切りにわが国最高のセル工法を採用したことである。その他新しい河川工法が随所に用いられていることである。 一例を挙げると、左岸低水護岸には仮締め切りに鋼管矢板を用い、後に水中切断して、そのまま基礎として利用する工法、護床工には特殊コンクリート十字ブロックを用い、粗度を徐々に変える減勢工法、閘門については水位の調節を閘門扉の下流潜流により行い、捲上速度を2段変速として航行のスピードアップを図ったこと、ケーソン内を陸上より観察できるテレビの開発等、その他多くの例が見られる。これらはすべて職員の考察したもの、あるいはアイディアを生かしたもので、いずれも好成果をもたらしていると同時に工期の短縮、工費の節減に寄与しているものが数多い。」
この利根川河口堰の水管理は、取水を目的とした一般の堰が行う水位を確保するための「低水位制御」のほか利根川下流部の感潮域や塩分の遡上域でも利水取水を可能にし、かつ水産資源の確保の面からも「塩分濃度制御」を行っている。河口堰の制御装置はコンピューターシステムで、水位、塩分濃度、ゲート開度等の諸データーを集め、中央処理装置に渡し、ここで記録し、ゲート操作の判断、流量計算等を行い、このデーターを入出力制御装置に返送され、必要に応じゲート制御を行うようになっている。
河口堰は昭和46年から管理業務が開始されたが、20年を経て、金属疲労による故障、回転部分の磨耗、水密ゴムの劣化による取替修理及び塗装工事が必要となってきた。これらの修理等については、長時間に亘りゲートを引き上げねばならなくなった。一時的に主ゲートの代替機能を持たせるための予備ゲートを設置することとなった。
予備ゲート工事記録について、水資源開発公団利根川河口堰管理所編・発行「利根川河口堰工事誌(予備ゲート編)」(平成5年)がある。予備ゲートの諸元は型式シェル構造鋼製フローティングゲート、純経間45.0m×扉高6.6m、1門(制水ゲート・調節ゲート用兼用)設置位置は本川ゲート下流側、両面3方ゴム水密方式となっている。
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