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16.東金ダム(真亀川)の建設

 利根川からの導水計画が千葉県や関係省庁によって昭和40年から開始されていた。とくに導水ルートについては、農林省国営事業によって昭和40年度に完成した両総用水の一部を共用することが合理的、経済的であったことからこのルートが決定され、昭和46年5月房総導水導水建設事業に着手した。

 この房総導水路事業は、利根川本川の佐原市粉名口地先から両総用水取水期間はそのかんがい用水と合わせて最大17.5m3/Sを、その他の期間は最大約13.3m3/Sを取水し、両総用水施設の一部を共用して栗山川に注水し、横芝町地先の横芝揚水機場により、栗山から再取水して房総導水路(延長35.3q)により東金ダム、長柄ダムに送水し、両ダムにて貯留し、千葉県、千葉市、房総臨海地区、九十九里沿岸地域に都市用水4.9m3/Sを供給する。さらに南房総導水路(延長31.7q)を経て南房総地域に都市用水3.5m3/Sを、合計8.4m3/Sを供給する。

 なお、計画水量8.4m3/Sの水源内訳は、東金ダム、長柄ダムによる新規開発1.8m3/Sと、利根川上流ダム群等の6.6m3/Sとなっている。

 前述してきたように、東金ダム(ときがね湖)は房総導水路建設事業の基幹施設として、真亀川の千葉県東金市大字松之郷地先に平成7年に完成した。

 真亀川は東金市松之郷の平田・北栗生を上流端とし、十文字川を併合し、山武郡九十九里町の真亀橋付近で太平洋に流出する流路延長15.4qの二級河川である。

 この東金ダムの建設記録について、水資源開発公団房総導水路建設所編・発行「東金ダム工事誌」(平成7年)がある。


「東金ダム工事誌」

(撮影:だい)
 この書により、ダムの目的、諸元、特徴について追ってみたい。

 東金ダムの目的は、長柄ダムと併せて1.8m3/Sを新規開発し、千葉県の都市用水を供給する。ダムの諸元は、堤高28.3m、堤頂長248m、堤体積46.3万m3、総貯水容量230万m3、有効貯水容量220万m3、型式は傾斜遮水ゾーンフィルダムである。起業者は水資源開発公団、施工者は日本国土開発・戸田建設共同企業体である。なお、補償関係は、土地取得面積47.5ha、公共補償として、山武郡市広域上水道施設補償、電気、ガス施設移転補償であった。

 東金ダムの建設経過、特徴について、塚原貞夫房総導水路建設所長は「工事誌」のなかで次のように述べている。

「このダムは有効貯水量2 200千m3のゾーン型フィルダムで利水専用のダムである。当ダムの自己流域は皆無に近いことから利根川の余剰水を取水・導水して幹線導水東金分水工に隣接した東金揚水機場からポンプアップした水のみを貯留し、利根川に余剰水が無い場合に貯留された水を供給することになっている。
東金ダムは、昭和51年7月に一度着手したが、オイルショックに起因する社会情勢の変化から水需要についても変化が生じ、昭和53年12月に一時休止せざるを得なくなった。これとは別に米国ティートンダムの決壊事故(昭和51年発生)を教訓として、ダムの安全性の再検討が行われ、設計の考え方が改訂された。
 第二期工事ともいえる再開工事では、平成元年3月に着手し、順調な進歩をみせ、盛立時の基礎掘削後平成3年7月にはダム本体の盛立を開始、10月には洪水吐に着手した。平成5年8月、本堤、ブランケットを含む全ての盛立が完了、洪水吐、取水施設等の付帯施設の建設も進み、平成6年1月にダム本体は完成した。」<

 昭和53年12月に東金ダム建設が一時休止したこととは思いもよらなかった。後述する長柄ダム建設も同様に一時休止しているが、ダムにはそれぞれの歴史を秘めている。

 いまでは、東金ダムの周辺は里山の風景をかもし出し、バックウォーターのあたりは新しい住宅が立ち並び、湖面を一周できる道路はよく整備されており、植物観察、バードウォッチングなど地域の人々の散歩コースとなっている。


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