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尾口第一ダムは、石川県の手取川に北陸電力が所有する尾口発電所の取水ダムで、堤高28.4m、堤頂長42.2m、洪水吐ゲート(ラジアルゲート4門)を有する発電用ダムであり、洪水吐ゲートが約70年を経過し取替えの必要が生じたことから、平成20年6月より「ゲートレス化」の改修工事が実施された。そのあらましはすでに「尾口第一ダム改修工事」として紹介しているが、改修に当たり特に環境対策に力を入れているので、それを紹介する。 なお、基礎資料として、北陸電力株式会社 中島 奈緒美、佐藤工業株式会社 前田 佳昭「尾口第一ダム改修工事について −ハイダムのゲートレス化−」(第70回ダム施工技術講習会)の講演資料を使用した。
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■全体の方針
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工事箇所は白山国立公園の第2種特別地域内であり、イヌワシやクマタカといった希少猛禽類が生息していることから、工事期間の設定、景観、植生に配慮するとともに、コンクリート塊の有効利用を図った。
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■工事期間の設定
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工事期間の設定に当たっては、ダム周辺に生息する稀少猛禽類であるイヌワシへの影響、特に繁殖期における影響に配慮した。 ダム改修計画に関して環境省や石川県に事前に相談したところ、「イヌワシが営巣する12月から幼鳥が巣立ちする6月初旬までは、巣の近くで大きな音が発生したり、近くで大きな動き回るもの(大型重機など)があると幼鳥の生育に影響を及ぼす可能性があるため、その期間はなるべくダム改修工事を控えたほうが良い。しかし、5月初旬には雛も大きくなっていること、そしてゴールデンウィーク近くになるとダム周辺の林道の除雪も完了し一般車両の通行量も多くなってくるので、ダム改修工事による影響は相対的に小さくなることから、大きな音の発生を伴う可能性の高いダム改修本体工事は5月からの着手であれば特に問題はない」との指導があったので、本体工事の期間を原則5月から11月とした。 なお本体工事以外の除雪・準備工事や付帯工事等については、大きな騒音の発生を伴わないことから上記期間以外に行うこととしたが、その場合においても、その都度環境省と石川県に確認を得た上で工事を実施した。
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■景観への配慮
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環境省と協議を行った結果、「新たに打設するコンクリートの表面を、周辺環境と馴染ませるため、周辺より視認できる範囲は着色(黒色) コンクリートの使用および流水が越流するダム越流部などを除くコンクリート表面の擬岩化を行うよう」指導を受けた。これを受けて、黒色顔料(セメント重量比3%程度)を添加した新設コンクリートの打設と化粧型枠使用によるコンクリート表面の擬岩化など、景観に配慮した内容を設計に盛り込んだ。 また、当初は「特殊鋼板とレール」といった鋼材で考えていた排砂路の保護工を、景観への配慮から花崗岩による石張りに変更した。
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■植生への配慮
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植生への配慮として、工事に伴う立木の伐採や土地の形状変更を最小限に留める工事計画の策定に努めた。また、工事完了後の復旧に関しても、法面等は種子吹付けせずにムシロにて自然に繁殖させる待ち受け型の緑化を採用することで、現状の植生への影響を最小限とするよう環境負荷低減に配慮した。
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■コンクリート塊の有効利用
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ダム改修工事に伴い発生する既設ダム取壊しコンクリート約3,000m3については、環境への負荷の低減を図るため産業廃棄物として場外搬出せず、現地で再生砕石化し、できる限り北陸電力敷地内で有効利用した。 具体には、自走式破砕機(ガラパゴス)により粒度調整を行いながら道路用砕石JIS5001相当の再生砕石とすることとし、石川県環境部に相談し指導を受けながら再生砕石化を実施した。
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[関連ダム]
尾口第1ダム(再)
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(2012年3月作成)
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