訪ねた人:阿部 繁 (ダムマイスター 01-027 Dam master)
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船明ダムは天竜川のダムの中では最下流に建設されたダムです。堤高が低くて下流側から見えるのはゲートとゲート支柱だけで、ダムというよりも堰に近い印象を受けますが実は立派なダムです。私がダムに興味を持ち始めた当初からしばしば訪れるダムでしたが他のダムにはない数多くの特徴を備えたダムです。管理所を取材する機会に恵まれたため、船明ダムならではの特徴を紹介します。
今回取材したのは電源開発株式会社天竜事務所。新東名高速道路の浜松浜北インターチェンジから近い場所にあります。今回取材する船明ダム、秋葉ダムを管理している事務所になります。発電制御は中西地域制御所(愛知県春日井市)で行いますが、放流操作等はここからダムに赴いて行います。
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今回、取材に応じてくださった佐藤所長代理(右)と杉本所長代理(左)。船明ダムが竣工されたのは今から約40年も前のことで、当時の様子については古い資料を基に答えていただきました。また現在のダムの管理や運用についてもご説明いただきました。
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船明ダムの高さは24.5m。ダムは通常、基礎岩盤の上に作られますが船明ダムは川底を岩盤が出るまで掘り進めるよりも、右岸の山を削ったほうが岩盤を出しやすかったために山を削ってそこにダムを据えています。左岸側にあるグラウンドはかつての川を埋めたものです。左岸側の護岸部には遮水壁が伸びており粘土グラウト工法による止水処理もされています。
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船明ダムの解説図。船明発電所は右岸側にあり、発電所から放流されてすぐ用水の取水口があります。用水は浜松方面(画像左側)と磐田方面(画像右側)に分岐されますが磐田方面へはダムの中(厳密にいうと基礎コンクリートの外側)にパイプを通して川を横断します。用水の取水口は低い位置にあり、発電停止でゲートから代替放流が行われていても取水できるようになっています。
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右岸側には取水設備があります。取水口スクリーンの手前に網場がありますが、網場を超えてスクリーンに流木がかかることもあるそうです。スクリーンに引っかかった流木等は作業員が除塵機により取り除きます。
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取水設備の横には魚道も設置されています。魚道の半分以上は暗渠になっており暗い部分ではナトリウム灯が設置されて遡上の効果を高めています。また現在でも定期的に遡上数を確認し、魚道による遡上効果があることが確認されています。
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船明発電所の発電機。低落差大流量に適したカプラン水車です。発電機は1台で最大認可出力は32,000kWになります。
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左岸上流側。船明ダムの左岸端から護岸沿いに山とぶつかるところまで約400mもの長さがあります。この範囲の地中にはカーテングラウチングによる止水処理もされています。この粘土系グラウト工事により電源開発は昭和52年に土木学会技術賞を受賞しています。
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さらに上流までいくと天竜ボート場があります。ここは全国高等学校選抜ボート大会が毎年開催されることからボートの聖地とも呼ばれています。ボートができるのも船明ダムと上流の秋葉ダムの運用において安定した水位となるよう配慮されているためです。ダムの管理運用も地域の要望を取り入れながら実施されています。
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取材当日は左岸側3門の洪水吐きゲートから放流していました。現在船明ダムでは下流の洗掘対策工事が行われていますが、左岸側の工事が終了し、現在は右岸側の工事を実施しているためゲート放流は左岸側から行っています。
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左岸側の下流部。水面から見えている消波ブロックは今回の洗掘対策工事で設置されたものです。水面下にも巨大なコンクリートブロックが設置されています。竣工当初から洗掘の傾向があったようで、本格的な恒久対策がされることでダムがより長く安全に使えるようになります。
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写真は2003年春のもので、船明ダムは十数年に一度、水を抜くこともあります。上流側に角落としもないため、ゲート等の大規模な補修は写真のように水位を下げて行うことになります。
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銘菓「ふなぎらダム」はダム下流の天竜地区にある遠州菓子処 むらせやで売られています。創業当初から銘菓として売られていたそうで、天竜川の伏流水を使用して作られています。バターやはちみつの風味が豊かで甘さを抑えた洋菓子です。ネット注文も可能です。
写真提供:遠州菓子処 むらせや 〒431-3314 静岡県浜松市天竜区二俣町二俣340-1 TEL :053-925-2348 0120-172348 FAX:053-925-5339
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船明ダムは夜間は保安上の理由でライトアップされています。特に冬は空気が澄んでいて美しい船明ダムの夜景をみることができます。
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また春先には左岸側一帯に桜が植えられており、至るところで桜を楽しむことができます。
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天竜川最下流のダムである船明ダムは数多くの課題を通じて土木技術を高め、今でも安全に運用するための工事を行っています。また地域の人々は船明ダムと共に暮らし、天竜川の恵みを享受していることを現地取材を通して感じました。この記事をお読みになった方に一人でも多く、船明ダムを作られた方々や現在も維持管理、工事に奮闘される職員さんの水に対する思いが伝われば幸いです。
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